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第03話 幼馴染のメイ

「えいっ!えいっ!」


太陽が昇り始めたばかりのうすら寒さの中「カンッ!カンッ!」と、木剣同士がぶつかる音が鳴り響く


「次いくよ!」


「うん!」


訓練場にて早朝から私はリーネと剣の稽古をしている


地獄のような超スパルタ教育メニューを組まれてから2年が経過し、私達は6歳になったのだが...


「ぐっ....!!」


私とは違いリーネには剣の才能があるようだ。

体幹が強いためブレがなく動きが華麗だ。何より一撃一撃が重い。


(そもそも身体の成長具合が全然違うし)


妹なのにもかかわらず、私よりも身長が10cmも高く、筋肉のつき方も一回り大きい...


「お姉さま、ほんきできていいよ」


決して悪気はないとは思うが、だめだ、煽りにしか聞こえない。


「いやいや、本気だよ。リーネはやっぱり強いな」


当然手加減などはしていない。お姉ちゃん本気だもん


「ううん。お姉さまのほうがすごい」


謙遜しつつもリーネは誇らしげだ。逞しい



「リリアちゃん。リーネちゃん」


朝の特訓を終えた双子姉妹の元に銀色の髪を揺らしながら少女が駆けてくる。

両手には大きな籠を抱えている。



「あ、メイ」

「いつもありがとう!」


幼馴染のメイ・ウィローブルックはいつものように朝食の入った籠をとりだした


「二人ともお疲れ様、今日はサンドイッチを持ってきたわよ」


メイは騎士団長の娘さんで、この訓練場にはよく来る。それに時々一緒に訓練したりもする。気が付けば仲良くなっていた。


私達よりも3つ年上ということもあり、優しくも少しお姉さん感もある。


「そういえばメイは来年で10歳だけど、アストリア学園にはいくの?」


アストリア学園とはアストリア王都にある学校で、10歳以上の剣術や魔術において優秀な人のみが入学を許されるエリート校のことだ。


「ええ、そのつもりよ。日々お父様から厳しい特訓を受けてるのもそのためだもの」


メイの父も学園を卒業し騎士団に入った。その後実力が認められ騎士団長にまでのぼりつめた。

恐らくメイもそんな強い父に憧れてるのかもしれない


「それよりリリアちゃん、サンドイッチ早く食べないとリーネちゃんが全部たべちゃいそうよ?」


「え?」


メイの言葉に籠をみると、さっきまで大量にあったサンドイッチが残り1つしかない


「もぐもぐ...おいしいおいしい!もっとたべる」


リーネがとても幸せそうな顔をしながら、口いっぱいにサンドイッチを頬張っている


「あ、リーネちゃんだめよ。最後の1つぐらいリリアちゃんにあげなさい」


リーネの伸ばしかけていた手が、ピタリと止まる


「いいよいいよ。リーネ、私の分も食べな」


「ほんと?お姉さまありがとう」といい残しリーネは結局全部食べてしまった


その一連のやり取りを見ていたメイは「ちょっと妹を甘やかしすぎなんじゃない」と言ってきたが

妹が可愛いんだから仕方がない



「あ、そうそう!」


メイが思い出したかのように手を叩く


「リリアちゃんって凄い魔法上手じゃない?私にも教えてくれないかしら?王立学園では剣だけでなく魔法も出来たほうが有利みたいだから覚えておきたいの」


「もちろんいいよ。えっと...どこから教えようかな」


私達姉妹はこの2年間で家にある魔法書のE級とD級の魔法は全てマスターした。母マリアンヌが魔法学校の元教授ということもあり、聞けば何でも教えてくれた。


「そもそも魔法ってどうやって使うの?」


「じゃあ簡単なやつを例に説明するね」


私は出来る限り分かりやすく説明する

自分が魔法についてわかっていることをまとめるとこうだ


魔法を発動するには大きく分けて3つの方法がある


1つ目が詠唱。

最初に現象や原理を理解しておく必要があるが、魔法をイメージし詠唱しながら魔力を放出する方法。

魔法書にはこの魔法を発動するのに必要な原理や現象について詳細に記載されている。

詠唱は魔法の最も一般的な発動方法


2つ目が魔法陣。

魔法陣に魔力を流すことで発動する方法。

魔法陣は簡単なものから複雑なものまであり、作成するのに時間がかかるため突発な戦闘よりもトラップ向き。

詠唱と違い、現象や原理を理解しなくても魔法陣を書いて魔力さえ流せれば誰でも使用可能


3つ目が魔導具。

特殊な素材に動力源となる魔石を埋め込み、魔法陣をプログラムする。魔力がなくても誰でも使用可能

この世界にもライトや水道、コンロみたいなものもあるが、全て魔導具だ。



「そうなんだ、魔法って色々あるのね。それで詠唱ってどうやるの?」


メイが目を輝かせ、興味津々に尋ねてくる


「そうだね。じゃあリーネ、手本を見せてあげて?」


「わかった。メイ、ちゃんと見ててね」


リーネはスッと指先を掲げ、息を静かに整える。指先にじわりと熱が宿るのを感じながら、ゆっくりと詠唱を始めた。


「火の精霊よ...火を灯せ!ファイヤ」


リーネが詠唱を終えた瞬間、指先に「ポッ」と軽い火花が飛び散り、次の瞬間「ボンッ!」と小さな火が灯る。

まるでロウソクの炎がふわりと揺れるように、指先で小さな光が揺らめいでいる。


「うわぁ...!リーネちゃん凄い!」


メイが感嘆の声をあげ、瞳を輝かせる。

リーネは少し得意げに微笑んで、指先の炎をそっと消した。



「詠唱するだけでできるなら簡単そうだし、私でもできそうね!炎の精霊よ、火を灯せ。ファイヤ!...あら?」


メイはリーネを真似するように詠唱をしたが、魔法が発動せず不思議な顔をしている


「あれ?おかしいわね。もう一度..!」


何度も試してみるが結果は変わらず、魔法が発動することはなかった


「どうしてなの?才能がないのかしら...」


「そんなことないよ。魔法は原理を理解しないといけないの。あと魔力も流さないと」


火の原理は簡単に説明すると、可燃物と酸素が燃える化学反応だ。そして燃えている現象をイメージする必要がある

魔力は体内にある魔素を血液のイメージで巡らせれば良いんだが、最初は難しいかもしれない


「メイ、手を貸して」


「うん」


私は差し出されたメイの手を優しく握る

そしてゆっくり魔力を流してあげる


「今メイの体内に魔力をゆっくり流しこんでるんだけどわかる?」


メイはゆっくり目を閉じ集中する


「あ...なんか不思議な感覚がするわ。これが魔力なのね」


「そうそう。それじゃあ、火をイメージしながらさっきの詠唱してみて」


メイは「うん」と頷き、リーネがやった時の真似をする。スッと指先を掲げ、息を静かに整える。

指先に火が灯るのをイメージしながら、ゆっくりと詠唱を始めた。


「火の精霊よ、火を灯せ。ファイヤ!」


メイが詠唱を終えた直後、指先から「ポッ」と火花が一瞬光った。


「今のみたわよね!?光ったよね!やったわ」


メイがとても嬉しそうに両手を上げて飛び跳ねる


「良かった!メイおめでとう」

「おめでとう」


私達も賞賛の言葉を贈る


「リリアちゃんとリーネちゃんのおかげよ!ありがとう」


「よし、メイには特別に私がまとめた魔法特訓メモを授けよう。毎日このメモの通りにやれば魔法はすぐ上達するよ。時間は有限だからね、1日も無駄にしちゃダメだよ」


この2年で魔法について分かったことや、分析したことを自分なりにまとめていた。どうやれば魔法が使えるか、最高効率で魔力や魔法が上達する方法等々記載している。

メイが若干引いたような顔をしている気がするが、恐らく気のせいだろう

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