「不明」~始まりの物語~(序章) ep3
咲楽はシロ女王が乗っていた白馬に乗りながら、城に向かってゆっくりと進んでいた。さっきの姿を見たばかりの咲楽には複雑な感情が芽生えていた。前世では勉強以外何もやってきていない人生を送ってきた為、彼女の姿を見るたびに自分の劣等感が鮮明に繰り返し見えてしまう。咲楽は「やはり、女王というのもあるだけで、なんでも出来るんだろうなあ…」とシロ女王に対して心の中でなんとなく思っていた。
シロ女王は「そういえば、君の名前を聞いていなかったなあ、名は何というのだ」と普段の女王としての口調に戻っていた。咲楽は「私は咲楽と言います、ちょうどあなたの城に向かっていたのですが、途中で盗賊にあってしまって…」と苦笑いした表情で言ったが、咲楽は未だに混乱な気持ちが僅かに残っていた。
シロ女王はさっきの出来事を振り返りながら「確かに、盗賊にあってしまったのは不運な出来事だったかもしれないが、何よりも君の命が助かって良かったと思っているよ」。シロ女王は続けてある質問を咲楽に向かって言い放った「しかし、何故私の城に向かっていたのだ、さっきの場所の反対方向にリゼル村があったはずなのに、君はなぜその村に行かないのだ?」と単純な疑問を咲楽に質問した。咲楽は「え?…反対側に村があったのですか?」と驚いてしまったが、咲楽はそれでも村より城の方が暮らしに困らないと考えてしまい、むしろそのまま城に向かってほしいと願っていた。咲楽は城での生活に憧れており、ついに念願の暮らしが出来ると嬉しそうにしていた。だが、シロ女王は「あんたが、それでも私の城に向かいたいのか質問しただけなのに…」と若干がっかりとした表情になっていた。「私としては、リゼル村はこの国で唯一、お気に入りの村でね、あの村は法律の範囲内で高度な自治をしている村でもあるんだ」と自慢めいた声で紹介していたが、どこか羨ましそうな感情も見て取れていた。シロ女王は咲楽に向けて真剣な表情で「君が城での生活をどのように想像しているのか分からないが、一つ言えるのは貴族社会における束縛を知った以上リゼル村の自由に憧れてしまう」と経験者から発する言葉の重荷に咲楽は「どういうことですか?私はまだそのようなことを経験してないもので…」と見たくもない現実に目を背けようとしたが、シロ女王は続けて「咲楽よ、これが私からの警告でもあり、一番知ってほしいことなのだ」と咲楽の態度に我慢をしつつ、それでも現状を伝えようとしていた。
そんな、重たい現実の話をしていたらいつのまにか城の近くに着いていた。シロ女王は門番に軽い会釈をすることなく、城の内部に入っていたのだ。