「不明」~始まりの物語~(序章)
この作品に出てくる人物や出来事等などは、フィクションとしてお楽しみください。
「やば!遅刻するじゃん!?」朝から慌ただしい叫び声が響く部屋で、咲楽は急いで大学に行く準備を始める。彼女は今年で成人を迎えたばかりの大学生だ。いつもは、余裕をもって起きるはずが、今日に限って寝坊をしてしまった。彼女は朝食を食べることなく、家を勢いよく飛び出した。普段から寝坊をしない彼女が、こんなにも慌ただしい様子を見せるのは初めてのことだった。大学に向かう途中に、信号を渡らなきゃいけない道路に遭遇してしまった。いつもならこんなはずにはならないが、彼女のその焦りが変化をもたらす。咲楽は間に合いたいの一心で、赤信号を無視して全速力で勢いよく道路に飛びだした。すると、咲楽が横断している途中に、トラックが侵入してきた。運転手は急いでブレーキをかけたが間に合わなかった。咲楽の目線はトラックの方を向けて、その一瞬の死を確信した。咲楽の体は飛ぶことなく、トラックの下敷きに巻き込まれてしまった。運転手は急いで、トラックの下を確認したが、咲楽の姿が見渡らなかった。運転手は実際に彼女を轢いていたことを何ども確認したが、一向に彼女の姿が見渡らなかった。
一方、咲楽は自身の過ちを悔やみながら今までの思い出に浸っていた。彼女は、あの世に着実に向かっていくのを感じながら、ひたすら自身の人生を振り返っていた。そこには、ただ平和に暮らしていれば満足していた姿があった。彼女は物事に無関心で、ただ単に平和を求めていた。そのつけが、これからあの世で償っていくだろうと、適当に考えていた。すると、一つの光が咲楽の顔を照らしていた。咲楽は目を閉じたまま「あー、もうすぐあの世なんだなあ…」と諦めの境地に達していた。咲楽は眩しそうに、その光のもとに、ゆっくりと近づいっていた。そして、ついにあの世が来た!・・・かと思いきや。