「第五十六話」青い輝き
(グリシャ視点です)
四方八方から襲いかかる魔法攻撃は、止まない雨……いいや、もはや暴風雨や竜巻の如き荒々しさを彷彿とさせた。威力を増し続け、今も尚俺の身体を蝕み続けるそれらは、仮にも人の形をした存在へ向ける代物ではなかった。
ある時は火の玉。玉と言っても大きなもので、俺の身の丈ほどはある火球であり、当たれば撃墜は免れない。
ある時は雷の矢。轟音を轟かせながら、俺の機械の体を焼こうと迫ってくる。
ある時は風の刃。不可視のそれは、間合いに入るまでその存在を明かさない……確実に殺すための、暗殺の一撃。
どれもこれも、一つ一つは弱い。
だが、あまりにも多勢に無勢だった。
避けて、避け続けて。一度に避ける攻撃の数はどんどん増えていく。最早どこに身を捩れば良いのか、どこに飛べば良いのか……正解の幅は狭まるばかりで、打開策なんて夢のまた夢だった。
(くそっ、このままじゃ……!)
撃墜。空中から地上に落とされでもしたら、まず人数差の暴力に押し潰される。魔法騎士が一人いるだけでも苦戦を強いられるのに、あんな大群の中に放り込まれれば……考えるだけで、ゾッとした。
一か八か、やるしか無い。
「──っぁッ!」
半ば無理矢理魔力を吹き散らし、周囲に簡易的な魔力の壁を作り出す。一瞬動きが鈍ったその隙に、俺は一気に遠く離れた位置に移動した。
そう、このままではまたすぐに攻撃が来るだろう。時間にして5秒程度……当然、それでどうにかできるほどこの国の精鋭たちは甘くない。──だからこそ、無理矢理どうにかするのだ。
後の隙は考えない。この一撃で、地上の射撃部隊を一掃する! 魔力をありったけ集めて練り上げ叩き上げ……俺は合体した両掌の照準を、地上に向けた。
(絶対に、暴発させない!)
俺ならできる、俺ならできる。あのお転婆娘から学んだ勇気を、前に進む覚悟を見習え! ──お前は、あの輝きを支えるためにここにいるんだ!
「うぉぉぁあああああああ!!」
獲物を同じ位置に捉えた全ての魔法使いは、瞬く間に魔法を送り込んでくる。──真正面から放たれる、数百数千もの魔法攻撃。それすらも消し飛ばす、消し飛ばしてみせるという決意……それは胸に青い光として灯り、やがて莫大な魔力砲撃として放たれた。




