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「第五十話」一か八かの大勝負

(グリシャ視点です)

「……なんだよ、それ」


 ふざけた解答だ。

 でも、なんだかホッとする答えでもある。


「そりゃあ、いつでもどうとでもできるから……ってことか? 一回、俺に負けたくせに?」

「あれはノーカン! あの時バンもいたし、私はお腹がペコペコだったからなのです! 腹が減っては戦はできぬのだよ〜」


 ふざけているようにも見えるアリーシャ。しかし、彼女は真面目に話しているのだろう。薄っすらと見える手の汗が、直前の彼女の緊張やらなんやらを物語っている。こんな俺のために、会話の内容を吟味してくれていたのだろうか?


「ちょっと、笑ってないで聞いてよ!」

「いや、今までそんなふうに言ってくれるやついなかったからさ。おかしくって」


 彼女にはこの意味がわからないだろう。だが、それでいい。そもそもあんな状況でしか味わうことのない背筋の寒気など、彼女には一生縁遠いものなのだから。──そんなことよりも、俺には聞かなければならないことがある。


「……なぁ」

「うん? ようやく私のほうが強いってことを認めたのかな?」

「気づいてるだろ、お前も」


 アリーシャの笑みが、苦虫を噛んだかのように歪む。ああ、やはり彼女も気づいていたのだろう……この王国全土に広がる巨大で強固な結界が広がりつつあることに、即ち俺達が閉じ込められつつあることに。


「この感じだと、やったのは多分シェバルってやつだ。どうしてかは知らねぇけど、どうしてもお前を逃したくないらしい」

「うーん、どうしよっか」


 絶体絶命なはずなのに、それでもアリーシャは笑っていた。何がそんなに面白いんだろう? それでも何となく俺も笑ってみる。まぁ、特に意味はない。


「外は魔法騎士共がうろちょろしてる。悠長にあの結界をどうにかしてる暇はねぇ……多少のリスクを抱えてでも、確実に外に出れる方法を探すしかない」


 無論、そんな事ができる方法は唯一つ。他に選択肢はない。

 加えてその方法はあまりにも現実味が無さすぎる。最も確実ではあるが、現実という机の上に出してみると、その無理難題さがよく分かるような、乱暴な方法。


「じゃあ、あいつを見つけてぶっ飛ばせばいいじゃん」

「……ははっ」


 既に修復された身体。起き上がり、俺はゆっくりと立ち上がる。


「乗った」


 無謀で、無策で、それでいて一か八かの大勝負が始まった。


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