「第四十九話」最適解
(アリーシャ視点です)
グリシャのいきなりすぎる暴露に、私はなんて返せばいいか分からなかった。いやそりゃあ、なんか普通の人よりも重いなぁとは思っていたし、なんなら魔法も使わないであんだけ動けるってことは魔物の類なのかなぁとは思ってたけど……いやぁ、流石にあんだけやって人間じゃないっていうのはなんというか、分かりきったことだし。
「見れば分かると思うけど、俺の身体って鉄で出来てるんだよ」
「うん」
「だから血も流れてないし、痛みとかそういうのもねぇんだ」
「ふーん」
「だから俺は人間でも生き物でもなくて、その……おい、聞いてんのか?」
やばい、バレた。
「いやぁその……ね? だって、初めて会ったときからもうなんとなく分かってたし」
「は、はぁ? じゃあなんだよ、俺が人間じゃないって分かってた上で、あの時助けたってのか!?」
「え、助けないほうがよかった感じ?」
「……そういうわけじゃ、ねぇけど」
何が言いたいのかさっぱりわからない。怒っているわけではなさそうだし、かといって声は滅茶苦茶荒らげてるし……そういうお年頃なんだろうか? まぁ私にだって、自分でも分からないけど客観的に見て面倒くさくなってしまうことはある。
グリシャは口をもごもごしながら、小さく言った。
「怖くねぇのかよ、俺が」
「なんで?」
「だって、人間じゃないんだぞ? お前ら人間とは違うんだぞ?」
その様子はなんともまぁコンプレックス全開の言い方である。ここでどストレートに本音を言えば、もしかしたらグリシャは傷つくかもしれない……人間のあるあるをなんとなく頭に思い浮かべながら、私はお茶を強引に濁すことにした。
「そんなことよりっ! 身体は大丈夫なの?」
「それなら大丈夫だ、問題ない。俺は魔力さえあれば自動で身体が治るようになってるんだ、時間はかかるけどな」
「へぇ……錬金術みたいな感じ?」
「んー、まぁ俺はよく知らない……っていうか、まだ俺の質問に答えてねぇじゃねぇか」
しつこい。思っていたよりもしつこい。
グリシャの真剣な眼差しを見る限り、どうやら再びお茶を濁すことはできなさそうだ。寧ろやったらぶん殴られる可能性だってある。私は諦めて、自分の正直な気持ちを話すことにした。
「怖くないよ、全然」
なんで? そう聞かれる前に、答える。
「だって、私のほうが強いもん」
当然であり、最適解の解答を。




