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「第三十八話」自問自答

(グリシャ視点です)

 瓦礫、瓦礫、瓦礫の山。

 粉砕された文明だったものの成れの果ての中で、動けない自分の身体を必死に動かそうと、醜く足搔いている。腕は半壊、片足は砕け、頭部の一部は破損して剥き出しになっている。──当然、動くわけがない。


 やはり、制御ができなかった。

 機体の調整は完璧だった、どこにも問題はなかった。なのに制御に失敗し、俺はあの騎士が放った赤い雷ではなく、俺が放った一撃の反動によって壊れた。


(倒せた、のか……?)


 直撃だったはずだ。赤い雷を正面から打ち消し、奴の全身を包むような形で。

 どんなに身体を鍛えようと、どんなに魔力操作が上手かろうと、人間である限り越えられない壁というものは存在する。壁の向こう側であるその領域でなければ、あの一撃は絶対に防げない。かろうじて稼働している脳内演算も、目標の排除が完了したことを告げていた。


 だが、俺はそうは思わない。

 いいや事実、今も尚俺の目の前にそれは立っていた。


「……居合わせた騎士が、私で本当に良かった」


 無傷ではなかった。額から血を垂れ流し、半壊した鎧からは鍛え上げられた肉体が露出している。だが、小さな山一つ軽々吹き飛ばすような一撃を受け、五体満足でいるこの男はやはり異常だ。──いいや、それ以上に。


(こいつ、街への被害を最小限にしやがった)


 どこまでも、正義の味方なんだなと感服した。臆せず、逃げず……それどころか自分以外の存在を守るために剣を振るう。芯があり、誰にだって誇れる清き心が成せることだった。


「私以外の騎士であれば、良くて相打ち……それでもここら一帯は吹き飛んでいただろう。しかし私もまだまだ未熟だ、これだけ被害が出てしまっては、民への課税は増す一方になってしまう」

「……」

「そして『からくり』よ、お前を殺す前に聞きたいことがある。──貴様の名は、なんだ?」


 名前。

 名前、か。


「……ねぇよ、そんなの」

「そうか、残念だ」


 掲げられた剣の輝きを見上げながら、俺は思う。既に終わった存在の模倣品である自分は、果たしてその存在と同じと言えるのだろうか?


 それとも別の存在なのだろうか? 当然後者なのだろうが、造物主は前者を望んだ。だがそうであるのであれば、同じ存在が二つ在ることになってしまう。かといって別の存在だと、俺は俺として作られた目的そのものを失う。


 完全に終わる前に、自問自答する。

 俺は、誰だ?








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