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「第三十七話」譲れないもの

(アリーシャ視点です)

 鼓膜を揺らす轟音、大地を震わせる衝撃の波。近くの建物にしがみつきながら、私は周囲の警戒に集中していた。


 追手側の攻撃ではない。もしそうであるならば、今頃混乱に乗じて私達を捕まえに来るはず。そもそも、周囲の魔力の流れから察するに、ここから近くにはそんな芸当ができるような実力者は感じ取れないのだが。──となると私は、馬鹿げた結論を出さなければならない。


(ずっと離れた場所からの余波。しかも、私達を狙ったものじゃなくて、別のなにかを目的にした……)


 考察は深まる。段々と収まっていく揺れや空の光に反比例するかのように、着々と推理は進んでいく。


 赤い雷と、蒼白い光。


 一見、同じなにかにより発生したかのように見えるそれは、私のような魔法使いにとっては全く違うものとして理解することができる。


 あの赤い雷からははち切れそうなほどの魔力が詰め込まれており、圧縮されていた。恐らくあれを放ったのは相当な練度の魔法使いだろう。ゼファーが指先一つでできる芸当は、全ての魔法使いにとっては一生を通して誇ることができる代物……らしい。正直、その気になれば天変地異を引き起こせるあの人を見てきた私には、どれぐらいが凄くてどれぐらいがしょぼいのかがよくわからないのだ。


 とにかく、だ。

 そんな絶大な一撃は、もう一つの強烈な一撃によって相殺されている。魔法ではない、なにか別の力……そこまで考えて、私は不意に背筋が凍っていくのを感じた。


 あの動く家の中での、グリシャとの会話。

 いいやそれ以前に、彼と戦った時に見せられたあの力……あの光は、そうだ。あの時彼の胸に灯った光も、青白かった!


「なんだ、今のは……」

「──行かなきゃ」

「は? おい、おい! 待て!」


 男の静止を振り払い、私は路地裏から壁を駆け上って屋根に飛び乗る。すぐさま魔力の流れを探る……どこだ、どこだ。ここだ!


「何やってるんだ、早く屋根から降りろ! 捕まるぞ!」

「……行かなきゃいけないの」

「どこにだよ!?」


 ゼファーやバンを助けたい。

 そのためには、彼から話を聞かなければいけない。──だけど。


「友達を、助けに!」


 私には、すぐ近くにいる友達を見捨ててまで、家族を救うことなんてできなかった。


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