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「第三十四話」三十七通りの必勝法

(前回と視点は変わりません)

 激突の直前、俺はまず目の前の敵を確実に殺すための方法を演算していた。──三十七。どんな状況、生命体が相手だとしても対応又は分岐変更を可能とする戦法の数。避けようが受けようが、力技で弾かれようが……どう足掻いても確実に殺しきれるであろう必勝。


 三十七通りの必勝法のうち一つ、全方位への最大火力攻撃。

 両腕の形状を変化、周囲の魔力を吸引……収束、練り上げる。アリーシャから学習した魔力練度に近い付近まで錬成する。実態がどんなものであるかは定かではないが、これが成功すればそれは即ち……虹の魔法と同等の威力の魔法攻撃が可能ということである。


「吹き飛べ!」


 放たれる魔力砲撃。少量の魔力は体内の機関で増幅され、通常の十倍の威力を保ったまま放たれる。まず人間には防げない。加えてつい先程まで予備動作の一つもなかったあの男は、反応もできないまま消し炭になる。──はずだった。


「覇ッ!」


 轟音、放たれた魔力の中で煌めく銀の輝き。それが魔力を乗せた斬撃であること、それらが全て……ものの一瞬で放った魔力砲撃を霧散させたことに、俺はしばらく理解が追いついていなかった。


「……くそっ!」


 再演算。今の防御だけで、ありとあらゆる必勝法が無に帰した。

 想定外、あまりにも想定外! あの男、もはや人間ではないレベルの身体能力だ! 加えて魔力の武装に関しても強い、あれでは部分的だが……アリーシャの虹の魔法を上回っているじゃないか!


「さて、初撃にしては派手なことをしてくれたところ申し訳ないのだが……」


 舞い上がる砂埃の奥に、それは変わらず立っている。銀の剣と鎧を構えながら、その身にはっきりと見えるほど練り上げられた魔力が流れ漂っている……それはまるで雷のごとく。しかし赤く、銀色に輝いていた。


「今度は、こちらから往かせてもらうぞ。──参る」


 重く、鋭い声。

 立つはずのない鳥肌が立ち、俺の思考回路には「逃げる」という推奨選択肢が幾つも浮かんでくる。彼らは寄ってたかって俺に告げていた。──こいつには、勝てない。と。


「……クソッタレ!」


 だが俺は、それでも逃げることができなかった。

 数少ない俺の、人間としての部分が……その行動の先にあるものをひどく恐れていたからである。


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