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「第三十三話」魔法騎士とからくり

(視点変更があります)

 太陽の位置が、西の方へと進んでいく。一体どれだけの時間が経ったのだろうか、疲れることなどないはずの鉄の身体が、なんだかいつもより重く感じた。


「……どこ行ったんだよ、あの野郎」


 心配とかそういう感情はとうの昔に枯れ果てた。今の俺を突き動かすのは、電力とその他諸々……それ以上に、あのおてんば娘への怒りである。待てと言ったのに突っ走っていくし、ちょっと見てくるって言ったくせに全然戻ってこないし、おかげでこっちは心がヘトヘトだし。


 なんか、考えれば考えるほどムカついてきたぞ。


 そう言えば、あいつ俺の家の屋根ぶっ壊したよな? 謝ってもらっていないじゃないか! 友達を助けるためとかそういう理由でほだされた俺も俺だけど、それはそれこれはこれだろ! なんでナチュラルに許してたんだ俺!? 気づけよ! バグにしてもタチが悪い!


 ……とまぁ、怒りに任せて色々頭の中のチャットでぶちまけてみたが、視界が悪口やらなんやらで埋め尽くされるばかりで特にスッキリはしなかった。冷静になった俺は全てのコメントを削除し、今一度現実に目を向ける。


「……はぁ」


 そう、まずは深呼吸だ。

 機械の俺がこんなに感情をあらわにしてどうするんだ。そう、冷静に……あくまで人間臭くないように、俺は振る舞わなければならない。だからあのおてんば娘に対してはグーパンと膝蹴り一発で済まさなければならない。そう、あくまで効率的な範囲で。


「よし、切り替えて探すか!」

「ちょっと、そこの君」


 勢いよく一歩を踏み出そうとして、後ろ髪を引っ張られるようななんとも言えない不快感が喉元にせり上がる。いや別に相手も自分も悪くないんだが、タイミングになんとも言えない絶妙な悪さがあって……うん、取り敢えず話を聞こう。


「なんですか?」


 振り返ると、そこには武装した男が立っていた。肩まで伸びた白髪、全身を包む輝かしくも使い込まれた鎧。はっきりとした赤を放つマントは、本人の存在感をより際立たせていた。


(ヴァルトス王国の魔法騎士、あんまり関わりたくなかったんだけどな)


 かといってここで適当な対応をするわけにもいかない。取り敢えず、話を聞こう。


「実は人を探していてね、この男に心当たりはあるか?」

「……無いですね、こいつがどうかしたんですか?」

「そうだな、まぁ平たく言えば犯罪者だ。ご協力ありがとう」


 ひどく不満そうな顔で笑っている。どうやら他の人間にも聞いて、同じことを言われたのだろう。まぁなんにせよ、これでようやくあの馬鹿を探しに行ける。


「──まぁ、そう上手くはいかねぇよな」


 その場にしゃがみ込み、低い姿勢で拳を叩き込む。動作が一瞬でも遅れていれば、俺は今頃あの剣に両断されていただろう……急速にその流れを変えつつある魔力が、その一撃の恐ろしさを物語っていた。


「騎士が不意打ちとか、いいのか?」


 吹っ飛んだ騎士は、無傷のまま再び立ち上がる。手には輝く純白の剣、その周囲には目を疑いたくなるほどの魔力が流れ漂っていた。


「お前という脅威を粛清できるのであれば、釣り合うものだと思っているよ」


 参ったな、こりゃあ筋金入りの騎士。殴ろうが抉ろうが立ち上がるタイプだ。


「……そうかい」


 正直戦闘は避けられないとは思ってたが、こんな早い段階でぶつかることになるとは。──こうなってしまえば、仕方がない。


「んじゃ、俺もちょっと捨てるわ」

「『からくり』の貴様が捨てるものなど、たかが知れている。──ヴァルトス王国魔法騎士、『赫銀のヴァルク』。参る!」


 出力最大。

 文字通り、出し惜しみ無しの殴り合いが始まった。


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