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「第二十七話」変な人

 降りていけば行くほど、聳え立つ高い壁が見えてきた。高く、分厚く……目の前にある巨大な門は大きく開いており、多くの人が行ったり来たりしている。私はそんな門を見上げながら、呆然と立ち尽くしていた。


「でっかいなぁ……」


 下手をすれば、ゼファーと住んでいたあの家よりも大きいのではないだろうか? やけに滑らかな石で作られた壁も、木で作られた門も、こんなに大きいのに綺麗で整っていた。これだけの建造物があるのであれば、魔法以外の技術も相当なものだろう。──これならきっと、呪いを解く方法があるはず。


 深呼吸。

 吸って、吐いて……意を決して、門をくぐる。別にこれ自体に覚悟が必要なわけではないが、私にとっては全く未知の世界へ飛び込むようなものなのだ。何が起きても、何があったとしても……私は、必ず成し遂げなければならない。


(ゼファー、バン。私が絶対に、助けてあげるからね)


 そして私は、門の向こう側に広がる広大な国……そのほんの一部に圧倒された。煉瓦や石を積み上げて作られた家が広がる、彩り豊かな町並み。適度な自然が広がり、未知の両端には水路のようなものが見える。──まるで絵画のような、美しさだった。


「……あっ」


 ずっと道のど真ん中、しかも人の出入りが盛んな門の前に立ちっぱなしというのは流石に邪魔だと気づく。私はそそくさと道の端に移動し、壁に背中を預けた。やれやれ、私としたことが周りが見えていなかった。


「よぉ、姉ぇちゃん」

「……あれ、私?」


 声の方を見ると、隣に見知らぬ男が座り込んでいた。


「暇なら、話し相手になってくれよ。俺も暇なんだ」

「ええ……それって私じゃないと駄目? 他の人に頼んでよ」

「いいねぇ、程よく生意気で気に入った。──ほらよ」

「おっと?」


 放り投げられたそれを慌ててキャッチする。手の中に収まったそれは、見ると半透明な……ちょっとペトペトくっつく玉だった。


「これ何?」

「んぁ? 知らねぇのかお前。飴だよ、飴。舐めたら美味いぞ」


 美味い、ということは食べ物なのだろう、私はそれを口の中に放り込み、思いっきり噛む。──硬い! なんだこれ、甘いけど噛み砕けないぞ!?


「はっはっはっ、そいつは舌の上で舐め続けるんだ。噛んだり飲んだりするもんじゃねぇ」

「そういうの先に言ってくれないかなぁ!?」


 私の必死の訴えを、ふざけながらゲラゲラと笑う。その第一印象は、意外にも疲れていそうだな……という感じだった。

 ボサボサで肩まである黒髪、皺が刻み込まれた横顔……服装は明らかに暑そうだった。極度の寒がりか、それともこれしか服がないのだろうか? 


 なんにせよ、変な人だ。






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