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「第二十六話」ヴァルトス王国

(今回はいつも通りのアリーシャ視点です、ご了承ください)

 ずしぃん。今の今まで微動だにしなかった家が、大きく揺れる。その振動はいきなり来たということもあり、食事中の私を大きく驚かせた。危うく持っていたスープをぶちまけるところだった。


「グリシャ!?」

「止まっただけだよ、別になんともない」


 グリシャのなんてこと無い返事に安堵する。外をちらりと見ると、確かに家の動きが止まっていた。目的地に着いたのだろうか?


「着いたってこと?」

「ああ」


 出入り口の扉を開け、グリシャは外に出る。私は今も尚寝続けているバンの額をさすってから、急いでその後を追った。──しかし、そこは風がよく吹くただの平原だった。目的地と呼ぶにはあまりにも殺風景で、なんというか……期待していたものとは違った。


「……なんにもないけど」

「違う違う、反対側だよ」


 そう言ってグリシャは、巨大な動く家を隔てた反対側に歩いていく。私は若干疑いながらも、再度その後を追った。──見える景色が、様変わりした。草が生い茂った滑り台のような広大な地形、それをずっと下っていった先には、とても大きな街があった。くぼんだ地形の中に立派に構えた、賑わいのある国だった。


「俺も初めて来た時は、そんな顔してたなぁ」


 グリシャはそんな私を見ながら、楽しそうに言う。


「ヴァルトス王国。あそこは世界一の魔法発達国家として知られている」

「発達……? 強い魔法使いがいっぱいいるってこと?」

「んーまぁそうなんじゃねぇか? 豊かな国ほど、でっかい力を持ってるもんだし」


 それを聞いて、私は体中を巡る血が熱くなるのを感じた。発達した魔法、強い魔法使い……その中にはきっと、ゼファーやバンの呪いを解く方法があると、強い期待を抱くことが出来たからだ。


「まぁワクワクする気持ちは分かるが、取り敢えず準備を……」

「私、ちょっと見てくる!」

「は? えっ、待ておい!」


 グリシャの静止を振り払い、私は一気に滑り台のような坂を駆け下りた。待ってなんていられない、だってすぐそこに……すぐそこに求めていたものがあるのだから。


 待ち遠しい再開を何度も頭の中に思い浮かべながら、私は逆風に逆らっていった。



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