「第二十五話」目覚め
(今回は前回と違い視点変更がされています、ご了承ください)
肌を刺すその感覚は、ひどく懐かしいもののように思えた。寝て起きたようなあっという間の感覚の中に、どこか待ちわびたような、久しぶりに友人に会ったかのようなホッとする自分がいるのも確かだった。
「……寒い」
そうだ、寒い。ようやく思い出した、この体の動きが鈍くなるような感覚の名は……『寒い』だ。──だが、その新鮮味に嬉しさを感じることはなかった。どうやら自分は、とんでもなく寒いのが苦手らしい。
というか、服を何も着ていなかった。素っ裸の状態ならそりゃあ震えるほど寒いに決まっている。何か着るものはないだろうか、とにかく暖を取れるもの……しかしどれだけ探しても、そこにあるのは氷、氷、氷の壁ばかりである。
俺は怖くなった。もしもこのまま寒かったらどうなるのだろう、このまま震えが止まらなかったらどうなるのだろう? このままじゃいけないということが、何となく分かる。とにかく何か、何か。──求めていたものは、向こう側からやってきた。
「め、目覚めた……!?」
それは光だった。木の棒の先端で燃え盛るそれは、黄色や白……オレンジ色もある、光だった。
あれを手に入れれば、この震えもどうにかなる。根拠のない確信のもとに、俺は立ち上がった。
「寄越せ」
「ひぃっ!」
怯えきったそれは、俺の方に光を灯した棒を投げてくれた。俺はそれを空中で掴み取る……するとそれの周りから、なんとも言えない安心感が伝わってきた。寒さを溶かしていくそれは……ああ、これはそうだ。『暖かい』というやつだ。
だが、まだ寒い。
「おい」
「は、はいっ!」
「お前が着ているそれ、寄越せ」
「……はいっ」
寒さでブルブル震えるあれには申し訳ないが、俺はもっと寒い。テキパキと服を脱ぎ捨てるやいなや、それは走って逃げていった。俺はそれの背中をぼんやりと見届けた後に、脱ぎ捨てられた服に袖を通す。──ああ、いい。体全体が、とても暖かい。
と、その心地良さに感動していると、棒の先の光……ああ、炎と呼ばれているものが、消えていた。俺は名残惜しさを堪えきれずに、その棒を持っていくことにした。暖かくはないが、握っているとなんだか落ち着く。
さて、まずは外に出なければいけない。まぁ風の音を聞く限りすぐそこだろうが、まぁ……一刻も早く外に出たい。ここはなんというか、居心地が悪い。それで外に出たら俺は仕事をしなければならない、そのために俺は起こされて……それで……あれ、なんだっけ?
「俺、何すれば良いんだっけ」
ボリボリと頭を掻く。考えても考えても、答えは出てこない。──いいや、それどころか。
「俺、誰だっけ……」
そう言えば、自分が何者なのかが分からない。
困った、立場が分からないとそれに伴う主義主張が得られない。目的がなければ、人は動けないというのに……これでは仕事もクソもないではないか。
「……まぁ、いいか」
取り敢えず外に出るか。
そんな思考に至った自分を、客観的に適当なやつなんだと勝手に思った。




