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「第十八話」腹ペコの狂気

今回からアリーシャの一人称視点に戻ります

 そう、私は考えていた。


 かつてゼファーと喧嘩をしたとしても、私は一緒にご飯を食べれば仲直りできていた……そう、ご飯は全てを解決するのだ。同じ飯を、同じ机の上で食べれば、それまで違えていた意見や主張によるいざこざなど、食べ物とともに胃に流し込めるのである。──そう、本来なら今頃私達は、豪華な食事をしているはずだったのだ。


「まさか……あの街に……お店が無いとか……思わないじゃん……?」


 そう、まさかのまさか。

 あんだけ広い街なのに、飲食店どころか酒場ですら一軒もなかったのである。


「仕方ないですよ、最近雨が降って無くて色んな食べ物が不作なんです。あれじゃあ、どこも営業できません」

「ええ……?」


 これが外の世界の常識なのだろうか? 腹を空かせた旅人という存在の苦労がよーく想像できる……っていうか今現在進行系で味わっている、辛い。お腹と背中、おしりとおでこ……あとなんか足の裏とうなじがくっつきそうだ。しらんけど。


 ……いや、他人事で済ませられねぇぞこれ。


「も、もう限界! お腹すいた!」

「まだ歩き始めて三十分も経ってませんよ? せめてもう少し頑張りましょうよ」

「だって私何も食べてないんだよ!? 一日! まーるーいーちーにーち〜〜!!」


 とうとう私は不満を爆発させ、地面でどたばたと暴れまわる。いやよく考えてみろ、飯を食ってない状態で旅始めてから色々あって死にかけて、やっと一段落ついたかと思ったら次はごちそう探すために途方もなく歩く? いやいや、ふざけてるだろ。


「やってられるかー! 美味しいもの持ってこーい! 肉肉肉肉肉ぅ〜〜!」

「……アリーシャさん」

「お説教なら聞かないよ! 美味しいものが口の中に入るまで動かないから!」

「アリーシャさん! あれ!」


 怒鳴るような叫ぶような、そんなバンの声を聞いて思わずびっくりしてしまった。なんだなんだと恐る恐るバンが見る方に視線を向ける……だがそこには、予想なんてできないような異質な存在があった。


 巨体。

 そう、決して遠くはないすぐ近くに……今も尚行進を続ける巨体が在った。


「魔物とも違いますし、あれは……」

「……ん? あれ?」


 この鼻腔をくすぐる香り……やはり、そうだ!


「あそこからご飯の匂いがする!」

「え? そんなバカな……ってアリーシャさん!?」

「すみませーん! 食べ物分けてくださ〜い!」


 相手がデカかろうが関係ない。

 今の私は腹ペコなのだから。



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