「第十七話」責任
(今回は前話とは違い視点変更がされています、ご了承ください)
敗北。
油断により真の実力を発揮する前に、相手側の最大の一撃を顔面に受けた。その事実を受け入れる頃には……分身として作った身体は半壊していた。顔面が潰れ、視界もだんだんとぼやけてきた。もしも本体がこの一撃を受けていれば、流石に危なかっただろう。
だが、今はそれよりも。
(あの娘、僅かではあったが使っていたな)
間違いない、と。自分の中での確信を得る。そう、あれは紛れもなく虹の魔法……不完全で本来の力には遠く及ばなかったが、魔力の流れなどを読めばそうであることがよく分かる。──そして、奴が長年行方をくらませていた理由も、これではっきりとした。してしまった。
(あの野郎、酷いことをしてくれる。あの娘も可哀想に、だが……致し方あるまい)
もう、体が動かない。分身のストックはこれが最後……もう、自分が直接あの娘を殺しに行くことはできない。となればやはり、こうするしか手はない。他人に自分の背負った責任を負わせるのは大変心苦しいが、彼らならば信用できる。
「頼んだぞ、我が同胞たちよ……」
最後の力を振り絞り、ありったけの魔力を空へ放つ。それはあっという間にこの地下空間から逃れ、いずれ彼らが眠るその地に届くだろう……あとは、彼らがなんとかしてくれる。
「……」
消えゆく身体をぼんやりと見ながら、ふと思う。
何故こんな事になったのか、何故こんな事をしなければならなかったのか……同じ道だったはずなのに、いつから互いに別の方向に行ってしまっていたのか。私には、どうしても分からない。──だが、一つだけ言えるのは。
「お前の怒りが正しいとしても、これからお前が成そうとしていることは……何一つとして正しくない」
だから、止めてやる。
それが、仮にも同じ道を進んだ者としての責任だから。




