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「第十二話」狩人の目

 テントの中に足を踏み入れると、妙な不快感を覚える。まるで自分よりも大きな動物の口の中に自ら入っていくような、そんな危機感を匂わせる。


 それを裏付けるかのように、テントの中を流れる魔力の流れは乱れていた。穏やかでも乱れてもいない、だが……私はこの目眩がするような魔力の流れを、痛いほど知っていた。


「……」

「……」


 互いに無言のままテントを進む。警戒は最大限に、全方位の魔力の流れを読み続ける……こんな場から得られる情報などたかが知れているだろうが、何もしないよりはマシだと思った。


 それにしても、そんなに大きくないはずなのにずいぶん歩くなぁ。──私がそんな事を思ったとほぼ同時に、男が立ち止まる。


 私は思わず身構えたが、すぐにただその場に立っているだけだということを理解する。おそるおそる、しかし油断も隙も見せないように尋ねる。


「……着いたの?」

「ああ、着いた」


 その瞬間、溢れ出る光に視界が奪われる。


(目眩まし……!)


 大勢を立て直そうとしてももう遅い。どこからともなく飛んできた縄が足に絡み、私は勢いよく宙を舞う……そして逆さまぶら下げられた私は、テントの全貌を見た。


 積み上げられ、並べられた檻。その中に閉じ込められた魔物、動物……果てには、同じ人間に含まれる種族。どれもこれも鎖に繋がれており、その自由が奪われていた。


「ひどい……!」


 バンの言葉が、私の頭をよぎる。魔物ならまだしも、同じ人間をあんな檻の中に閉じ込めるだなんて……絶対に許せない。怒りに身を任せ、私は魔力を込めた。


 ──響く。

 足音。それが鳴り響く度に、周囲の魔力が揺らぎ……そして、ねじれる。


(強い)


 瞬時に、そう思った。

 その風貌、立ちふるまい……それはまるで暴力を体現したような存在ではあったものの、ここまで突き詰めてしまえばある意味の美しさを感じた。──弱肉強食。弱い存在を引き裂き喰らった事により研ぎ澄まされた、狩人の目であった。


「こんにちは、ゼファーの置き土産」


 しなやかに整った身体の女性。白く長い髪に、白いローブ、美しい装飾の施された白い杖。

 真っ白なその容姿とは裏腹に、ぶら下がる私を恐ろしい眼力で睨みつけていた。──それはまるで、獲物を逃すまいとする猛獣のように。


「私はマーリン。かつて君の師匠に殺された、世界を救う『はずだった』魔法使いだ」


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