7 もみじとアミ
もみじはお腹が空いたようだ。日本から持って来たチョコレートを食べた。
「猿は遠くから見ているから猿なのね。もう嫌いになっちゃった。モンチーに会いたい」
そう言うと、また黙々と食べ始めた。僕も甘いチョコレートを口に含んだ。
「……」
「ねえ、お話したいんだけど聞いてくれる?」
僕は頷いた。僕はシートを倒し、頭の後ろに手を組んだ。星々が無駄に綺麗だ。誰も見上げていないというのに。
「私は山形のとある市で生まれ育ったんだけど、これはそこの小さな町で起きた小学生の頃のお話なんだ。ある夏の日だった。蒸し暑くてとても風が無い日。とても風が無い日ってあるでしょ。びっくりするくらい無風。風速ゼロキロメートル。ちょうど夏祭りの日だったの。町の人たちが集まって、町の中心部で出店を開くの。どこにでもあるお祭りだよ。チョコバナナとかりんご飴とか不思議な食べ物を売るお店が軒を連ねる。最後には提灯をたくさんぶら下げたやぐらを組んで、よいよいって皆で踊るの。私思うんだけどさ、文化人類学的に日本人って馬鹿になって騒いでいいのがお祭りの日だけだったんじゃないかって。だから火遊びしたり人を投げ飛ばしたりするお祭りが多いと思うの。
私ね、その年のお祭りの日はスイミングのお稽古があったんだ。午前中はお祭りに行けなくて、夕方ごろ会場に着いた。近所の人には何人かすれ違ったんだけど、友達と合流するのに苦労して大通りの端に私は腰掛けていた。たぶん焼きそばを食べていたと思う。キャベツとニンジンともやしと豚肉が入った焼きそば。紅しょうがと割り箸を添えて。あの、プラスチックの透明なトレーに……あれ、どうでもいいかな。でも私はある意味重要だと思うの。透明なケースに茶色い焼きそばがぎっしり詰まっていて、ぱかって開ける前から中身が見えているはずなのに、開けると美味しそうで嬉しくて、紅ショウガの部分だけ赤くて――わかった。
それでね、私は通りを何とはなしに眺めた。そこでちょっと変なことが起きた。スーツを着た背の高い男の人と、くるぶし丈のスカートを履いた女の人が二人で小さなお神輿を抱えて、店と店の間の隅に置いたの。どこが変かと言えば、まずスーツを着た男の人は私の町にいないはずだったのね。だって、田舎だから。スーツを着るのなんて公務員くらいなものだもん。よその町のオフィスで働く人だって、家から出て車に乗って行って、車で帰ってくる。スーツで出歩く男の人なんか絶対にいないはずなの。
ましてやお祭りの日なんだよ。法被こそ着れ、どうして仕立ての良いスーツなんか着ないといけないんだろうって思った。そして彼らがお神輿を運んで来たことも不思議。神社から借りてきたのかしらと思ったけど、別に神社の名前が書いてあるわけじゃないの。ノーマルな個性の無い木製のお神輿。これからそういう催し物があって、市役所の人が置いて行ったんだ。それが暫定的な結論。
私が焼きそばを半分食べちゃったときに、お神輿の近くに高校生くらいの五人の男子が集まって来た。一人は私の友達のお兄さんだったと思う。だとしたら二駅隣の県立高校――あそこは男子校かしら。まあそれでね、五人組はふざけてお神輿を担いだの。わっしょい、わっしょいって笑いながら、冗談交じりな感じで。怒られるだろ、やめろよって言いながら楽しそうに何度か担いで、やがて飽きちゃったみたいにどこかに行ったの。
するとそれを見ていた消防団のおじさんたちが、その人たちはもちろん法被を着ていたんだけど近寄って来たの。何だこの神輿は、知らねえよ、有田さん担げるか、なら嶋田さんそっち持ってみてくださいよ。消防団の人たちは力比べみたいにわっしょい、わっしょいって担いだ。それで中央の方まで回って行ったの。そうしたら次第に他の人たちも楽しくなってきたみたいで、老若男女、本当に老若男女みんなが集まってわっしょい、わっしょいって盛り上がり始めたんだ。
私は面白くなって笑っちゃった。皆で笑ってお神輿担いでふらふら歩き回っているんだもん。そんなのって無いでしょ、アフリカにも。しばらく凱旋したら、お神輿は地面に置かれたのね。で、誰が片付けるんだって話になって、誰も名乗り出なくて、仕方なく消防団の人が端に寄せたの。で、お神輿は忘れ去られたみたいに佇んでいた。お神輿自身はあまり楽しそうじゃなかったね。
私は友達に見つけてもらって、無事合流できた。サキって子が私が座っているのを発見した。サキは、もう一人約束していたユカコが近所の公園にいるって教えてくれた。夜に花火があるから、高い所で見るために移動するんだって言うの。私たちの町は山に囲まれているからそういう場所はいくつか思い当たるのね。歩いて公園まで向かうと、そこに二人いたの。私は誰だろうと思った。でもよく見たら、一人は小さい子供なの。ユカコはその女児と遊んでいた。私たちが近寄ると、その子は走り寄って来るの。
「こんばんは! もみじお姉ちゃん。会いたかった」
私の知らない子だった。でもその子は私の名前を知っている。そのとき思い出したの。ユカコには妹がいる。だから妹なんだろうって。その子は私に抱き付いた。
「あはは、やめなよ。アミ」
ユカコが追い掛けて来てその子の手を引く。この子はアミっていう名前なのね。私はアミちゃん元気だね、って抱き締めてあげた。ユカコはきっとこの子と遊んで待っていたんだと思う。アミのスニーカーは泥んこだった。
公園にはパンダの乗り物が置いてあった。熊みたいな尖った鼻先をしたパンダなんだけど、バネ仕掛けで上に乗って揺られる遊具。たぶん業者の人は生でパンダを見たことが無い人なんだけど、華があるわけ。ブランコと鉄棒と砂場よりは。でも不思議とパンダで遊ぶ小さい子供はあまり見かけなかった。何でだろう? 恐らく白黒だけどパンダの骨格じゃないことは、子供でもわかる。気味悪がっていたんだと思う。アミも全く眼中に無いみたいにしていた。でもそのパンダは白い光の電灯の下にあったな。くりっとした目付きで。
それからサキとユカコと私で、坂を上った所にある神社の境内で花火を見ようって話になった。そこなら遮蔽物も無いし、すぐおうちに帰れる。私はアミに懐かれていたから手を繋いで、四人で神社の方に散歩した。夜の散歩って好きでしょう? お手軽な非日常感だと思うの。当日は出払っている家も多いし、空き家も点在しているからライトが電柱に沿って等間隔にあったのを覚えている。不思議と、暗くても光量は不足していないのよ。アフリカの空と同じ。星の明るさで遠くまで見渡せる。必要最小限の光が田舎にはあるの。町の外れじゃなければの話だけれど。
なんだかね、子供の頃の夜道はもう体験できないのよ。わかるかしら。りんりん、じーみたいに虫が鳴いていて、どこかの家のラジオかテレビの音が遠くにモザイクがかって聴こえていて、線香と何かの青っぽい香りがして、空にコウモリやカナブンみたいな黒いものが飛んでいる。独特な田舎の空気っていうかね、ちょっとあれは都会じゃ味わったことが無いな。何だか、昔の人が不思議な体験をしたり、ざわざわした気分になるのにも簡単に共感できるんだ。田舎の夜道、特に日本の夏――を歩かないで死んで行く人にはわからないだろうけどね。
私は時折そんなことを考えながら、ぼんやりして歩いていたと思う。その間、サキとユカコは勝手にずっと喋っていたみたい。アミは私の手をじっと握っていたけれど。
「――まあ誘わなくても、親のことで転校するみたいだし」
「そうね。東京か。でも悪いかな……」
アミは退屈そうだったから、私は持っていたグミをあげたの。案の定アミは喜んで「お姉ちゃん、仲良ししてくれてありがとう」って言った。子供だからこんなこと言うのもあれだけど、無邪気な笑顔を浮かべる。私はこういう子を見ると――あ、何でもない。私にはできない笑顔。私の顔はたぶん自然と子供らしい笑い方をするようにはできてないんだと思う。思うに、人の一生の七割は遺伝で決まる。
神社まではさして遠くなかった。神社の本殿は長い階段を上がった所にある。ふもとに着いたときに花火が始まった。私たちは間に合わないって笑いながら、階段を駆け上がった。石段は冷たくて固い。花火がどおんって鳴っているのにびくともしないでしょ。私ははっきり振動を感じるよ。音は波動だから、心臓に音が響くのが伝わる。コップの水も揺れる。
でも石ばかりで出来た神社は感じないし、共振しない。階段を上がり切って鳥居の下に座った。境内には誰もいないから、石段に座ったり、アミが寝そべったりして花火を眺めた。花火ってきちんと考えたことある? よく考えたら、爆発する大玉を打ち上げるってすごいと思わない? 緑や赤の光が私たちの顔の上に届いて、音が心臓に響く。馬鹿になって騒ぐ中では、最も刺激的なコミュニケーションだと思う。
花火が終わっても、ぼうっとしていたんだけど、アミは元気だったの。サキの髪の毛をいじったり、意味も無くジャンプしたりね。私たちはまだ時間があったからお参りに行くことにした。手水を済ませて境内を歩くとね、初めて風を感じた。その日初めて風が吹いたの。初めて――それも涼しい風が。
社務所には人の明かりが点いていたけど、他は概して暗かった。辛うじて本殿には照明が焚いてある。こんな時間に参拝する人なんかいないでしょうけど、人間何を抱えているかわからないからね。こんな夜にお参りする変わった人も、まあいるんでしょう。私はその神社の狛犬が好きだった。だけど、どうしてもどっちが阿で吽だったか思い出せないの。記憶にもやもやが被せられたみたいに。
ちょうどお小遣いを貰っていたから、お賽銭には困らなかった。私はアミに五円玉を渡してあげた。お金を持ち歩いていないみたいだったから。渡すと喜んで、本当はもっと渡してみたかった。四人で並んで箱の中に小銭を投げ入れる。がらがらと鈴みたいな紐を揺らす。二礼二拍手一礼する。不思議と、私たちはそれを知っているわよね。親や学校にはっきり教わったわけでもなく。見よう見まねってことだと思うけど、身体感覚としての宗教観って言うのかしら。きっと日本人はそういうものだけ受け継いでいると思わない?
お参りを済ませてから、ユカコが神社の奥まで見て来ないって提案するの。私は嫌がったんだけどね、アミもサキも私を連れて行くの。私は虫も肝試しも大っ嫌い。仕方なく神社の裏の杉林を歩いて行った。山深い場所ではあるんだけどさ、そこの林は管理してあるの。神社の古い倉があって、中にお神輿がある。夕方に私が見たお神輿より大きくて立派なの。本物はこういう感じだって感心した。じゃあスーツの男が運んだお神輿は何だったんだろう?
林の中は、すごく静か。虫の声以外は無いの、無い。足元には枯葉みたいなふかふかしたものが敷き詰められている。足音を吸収するためだと思う。たとえ私たちでも、喋り声以外で音を立てることは禁じられていた。だから、話し続けるしかないの。黙ったらアウト。私たちはたぶんいなくなる。消えるんじゃない。いなくなる。徐々に私たちはそれがわかってきたのよ。喋らないといけない。それを知っている。宗教的肌感覚としてわかっているってね。暗黙の了解ってやつ。
アミは好奇心旺盛に虫を探したり、枝を拾ったりしていたんだけど、私たちはそれどころじゃなくなってきた。なぜか誰も言い出せないの。もう引き返そうって言えないの。誰かが言うだろうと思って躊躇っているうちに、深い所へずんずん入って行くわけ。まずい、帰れなくなる。私は焦ってやたら汗をかいてきた。ブラジャーを着け始める前の年だったから、たぶん乳首が浮き立っていたと思う。このままじゃ私いなくなっちゃう。
私はどうにか座り込んだ。皆の足がやっと止まった。
「もう帰りたいよお」
「お姉ちゃん、怖がりだね。アミは全然怖くないよ」
アミは私の顔を覗き込んだ。私は泣くまいと思って唇を結んでいた。
「もみじはびびりだからなー。もっと奥まで行っても良かったんだけど」
サキがそんなことを言い出すの。私は「帰りたい」って呟いた。
「しょうがないね。じゃあ帰りましょうか」
ユカコが私を立たせようとして手を差し伸べた。私は愕然とした。
「花火……」
花火が上がっていた。夜空にまだ花火が上がっていたの。サキもユカコもそれに気付いて呆気に取られた。だって、音が聞こえないんだもの。きちんと光っているのに、音が全く聞こえてこない。そこで思い当たるの。ここは「外からの音は届かないし、中から音を届けることもできない」。遮断されているんだって。
すると杉林の葉がざわざわと音を立て始めたの。でもね、風は吹いていない。杉の葉の上だけがざわざわ揺れている。でも私たちに風は届かない。どうしてこういうことが起こってしまったのか、子供の私は瞬時に考え付かなかった。納得する答えにたどり着けずにただ混乱した。
「帰ろう、早く帰らないと」
私は唇を青くしてがくがく震えていた。夏なのに寒かった。こんな状況なのにアミは能天気だった。アミが背中に飛び付いて言うの。おんぶしてよ、もう遊ばないのって。
「お姉ちゃん、まだ帰らないでよ」
「いい、アミ。私たちはこんな場所で遊んだらいけないの。帰りましょう。続きはおうちでね」
ユカコもサキも帰りたいとは言わなかった。怖がっているくせに。
「じゃ、妹ちゃんのことおぶってあげなよ。もみじ」
「ねえ、ユカコ。自分の妹を人に押し付けないの。私じゃおうちまで送っていけないでしょう?」
ユカコは顔をしかめた。私は訳がわからなかった。アミを背中から下ろした。
「アミちゃんは私の妹じゃないけど。もみじの妹じゃないの」
もちろん違う。私は、アミを知らないよと答えた。妹なんかいない。親戚にもこんな子供はいない。冗談もいい加減にしてよ。
「ねえ待って。もみじの妹だと思っていた。でもサキの妹はもっと小さかったよね?」
「……うん。え、どういうこと? もみじも知らないの? お姉ちゃんって呼ばれていたじゃない」
だから私は知らないってば。ねえ、ねえ本気で言っているの? アミを連れていたのはユカコじゃない。
「それは……公園に行ったらいたのよ、アミが。お姉ちゃんって近寄ってくるから、サキかもみじの知り合いだと思って」
「じゃ、じゃあ誰なのよ」
サキが唇を震わせてアミを指差した。私が見たとき、アミは私の膝の辺りに視線を固定してじいっと立ち尽くしていた。ざわざわざわざわ、りー、りー、しーん。
「ね、ねえアミ? 名字は言えるかな。住所はわかるの?」
アミは膝を穴が開くほど見つめていた。何があるの、そんなところ何も無い。
「わ、わた――ひっく!」
アミが喋ろうとするとしゃっくりが出た。大きくて、横隔膜がめくれ上がるみたいなしゃっくり。林のずっと向こうまで一直線に響くような音。
「アミちゃーん。もしかして○○小学校の子かなー?」
ユカコが訊くとしばらく硬直してからまた答えようとする。
「わた――ひっく!」
もう一度しゃっくりが出た。
「ここは危ないからとにかく帰ろうか。町の皆に訊けばわかるよね」
サキが笑いかけると、アミはばっと顔を上げた。
「わた――ひっく。よる、ひっく、ちょうど――ひっく、こん、――ひっく、が――ひっく、ら――ひっく、ひっく、ひっく、なん、ひっく、ひっく、ひっく、ちゅ、ひっく、ひっく、ひっく、ひっく、ひっく、ひっく、ひっく、ひっく、――ひっく!」
「ぎゃ!」
私たちは一目散に逃げ出した。得体の知れないものを勘違いで連れ回していたんだ! いや違う。何か悪いものに片棒を担がされた。知らない誰かに山へ引きずり込まれたんだ! とにかく恐ろしかった。振り返ることなく神社まで走って逃げた。初めて後ろを向いたけど、アミはいなかった。
私たちはお祭りの会場に戻った。運営のテントで「アミ」って名前の女の子が迷子で捜索されていないか尋ねたの。でも迷子なんか一人も出ていないって言うの。なんだか腰が抜けちゃったようで、広場に戻っても三人とも何もできなくなっちゃった。
だけどね、気付いたことがある。やぐらの上から下からよいよいって音頭が聞こえてくる。辺りはやっぱり騒がしい。これが聞こえないはずがない。いつから私たちは外の音を認識するのをやめていたのか。そう言えば、私は焼きそばのごみをどこに捨てたんだろう。あのスーツの人が持って来たお神輿は、どこに消えたんだろう……?
アミのことは結局、家族にも話さなかった。新学期になって学校に行っても、修学旅行の夜にもその話はできなかった。暗黙の了解っていうのかしら。三人の中であれは無かったことにしよう――あるいは嘘で幻だったんだねって決めつけることにしたんだと思う。とにかくこれを口外するのはカレンくんが最初だし、他に証言してくれる人はあの二人しかいない。あの二人も覚えているのかどうか。でも、あれは本当にあったの。私たちはいま一歩でいなくなっていたはずなんだよ。本当だよ。それからね、私がドアを開けると、たまにドアの向こうにアミが立っていることがあるの」
「は?」
「だからね、私がちょうど忘れた頃を見計らって、ドアを開けると向こう側にアミがじっと膝を見つめて立っているの。私はいつも『ぎゃ!』って叫んでドアを閉めちゃうからね、皆はどうしたんだって駆け付けるけど、開いたドアの向こうは空っぽなの。どうしても私は閉めちゃう。怖いとかそういうのじゃない。あと数秒見つめられたら消えるってはっきりわかるの。だからシャットダウンする感じ」
僕はもちろん恐怖を感じていた。同時に疑心暗鬼を生じていた。
「ジョークだろ。そんな見知らぬ女の子に憑りつかれて、ドアを開けるとたまに出没するなんて……そうだ。座敷わらしは幸福を運ぶ。お神輿みたいにね」
「茶化さないで! 本当に、忘れた頃にアミはやって来るの。また遊ぼうねって言おうとしてしゃっくりをするの。それで私はドアを閉めちゃうの。ぎゃって」
僕はもみじがここまで怖がっているのを嘘だと切り捨てるのは忍びなかった。やれやれわかった。そういうことにしておこう。リクライニングに寄り掛かって溜息を吐く。こういう夜もまた、乙なものだ。外の茂みでは若い猿たちが盛んに交尾をしている音が聞こえる。しゃっくりや、神社の裏の杉林。
――「ねえ、もみじさんは透視できるのに、どうして女の子がドアの向こうにいるのに気が付かないの?」
「……」
「あの」
「そんなのわかってるわよ! わかっていてもどうしようもならないからカレンくんに相談したんじゃない。どうしてあなたも何一つわかってくれないの! 大っ嫌い」――