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  第9章  【ゲート奪還】

短編小説「序章編」から「魔界編」が続きます。

主人公ミズキが女性に転生する前のお話です。

併せて読んで頂きますと、より物語を深く楽しめるかと思います。

宜しくお願い致します。

 あれから城に戻ると、こっぴどく説教された。

そして嫌がらせの様に、山の様に積み上げられた書状をこなして政務を行なった。

実質的な外出禁止の軟禁状態である。

ロードもビゼルも処罰され、軟禁されていると聞いた。


皇帝である私が何故なにゆえに処罰されなければならないのか?

憤慨して頭に来た。

確かに処罰はされていないが、ロードとビゼルが軟禁され、私も事実上の軟禁状態だ。

皇帝を罰する事は出来ない。

だから処罰しないで処罰すると言う、何とも巧妙で嫌らしいやり方だ。


こんな事を考えられるのはルシエラに違いない、と思いながらもルシエラとも色々な意味で仲が良いから、本気で怒れない。

私を心配しての事なのは、戻った時の取り乱し方が尋常じゃなかったから分かる。

まぁ私は、ルシエラの彼女みたいなものだしね。

心配されても仕方ない。

正直、私は弱いしね。


「ふぅ、目も肩も腕も疲れたよ」


「マッサージしましょう」

と侍女が心配そうに声を掛けて来た。


ベッドにうつ伏せに寝ると、侍女2人は肩、背中、右腕、左腕、右太腿ふとももから脹脛ふくらはぎにかけて、次に左太腿ふとももから脹脛ふくらはぎにと、順番にほぐしてくれた。


「あー気持ちいい。ありがとう。だいぶ楽になったよ」


「陛下に喜んで頂いて光栄です」


「ねぇ、お腹空かない?」


かしこまりました。何かお持ちして参ります」


「あー、違う違う。悟飯は出せるから、一緒に食べようか?テーブルの上を片付けてもらえる?」


「はい、かしこまりました」


テキパキと侍女2人で要領良く片付けていく。

空いたテーブルに、生活魔法で料理を出した。

上菜シァンツァィ

何でこの呪文は中国語なのか謎だが、目の前に一瞬で料理が並べられた。


「はぁ〜美味しそうな香り」

私がテーブルに着いても侍女の2人は立ったままだ。


「さぁさぁ、座って一緒に食べよう?」


「とんでもございません。陛下と同じテーブルで食べるなど、不敬罪で罰せられてしまいます」


「あははは、何言ってるの?私が1人で食べるのが嫌だから一緒に食べたいのよ。私が良いって言ってるんだから、良いんだよ」

侍女2人は少し迷っていたが、顔を見合わせて、嬉しそうに微笑んだ。


「種類が食べたくてシェアしようと思ったんだから、遠慮しないでね?」


テーブルには、お寿司、お刺身、おでん、筑前煮、餃子、麻婆豆腐、炒飯チャーハン、豚骨ラーメン、唐揚げ、じゃがバター、お吸い物、茶碗蒸し、炊き込みご飯など所狭しと並んでいた。


侍女2人が何を最初におはしを付けるか見ていると、お刺身を取ろうとした。

「この、お醤油にワサビを溶かすか、直接ワサビを乗せて食べるんだよ」と教えてあげた。

2人が美味しそうに食べているのを見て、満足した。


少しの量を取皿に入れて食べた。

久しぶりの日本食、中華料理も混ざってるけども、懐かしくも美味しい料理で自然と笑顔になる。


「豚骨ラーメンって、カロリー高過ぎて(太っちゃう)罪悪感を感じるんだけど、食べたくなるのよねー」

濃厚でこってりあぶらぎとぎとラーメンだ。

細麺が出汁によく絡んで、美味し過ぎるぅぅぅ。


3人で食事を楽しんでいると、ロードとフレイアが入って来た。

「美味しそうな匂いねぇ?」


「何で侍女が一緒に食事をっている?死にたいか?」

ロードににらまれて椅子から降りてひざまずいた。

可哀想に震えている。


「まぁまぁ、私が一緒に食事しようって、誘ったんだからゆるしてよ。それに何で一緒に食べちゃいけないの?」


「身分が違い過ぎます」


「身分?そんな物…」

と言い掛けた時、ロードが剣を抜きかけたので、侍女を殺すつもりか?と思ってあせって立ち上がり、侍女をかばう様に両手を広げて、侍女を背にした。


「ところで何しに来たの?」


「陛下と一緒に食事しようと思って、誘いに来たのよぉ」


「じゃあ、ロードも落ち着いて、席に着いてよ」 

私は侍女2人に、目配せをして「ごめんねぇ」と謝って、重箱に料理が入ったのを魔法で出して手渡した。


「さっきの料理が入ってるから2人で食べて」と言って、部屋から出した。

ロードは侍女をにらんでいる。

怖い。


「ロード、そんな怖い顔してないで、さぁ座って」

不機嫌そうに座ったが、すぐに落ち着いて料理を食べ始めた。


「これは何て言う食べ物だ?」

ロードも食べ始めると、美味しくて自然とみがこぼれていた。


別に私が作った料理ではないけれども、美味しいと言われると嬉しいし、鼻が高い。

食欲の後は性欲で、ロードに押し倒されると、「私はそろそろ失礼するよぉ。美味しい料理、ありがとうねぇ」と言い残してフレイアが部屋から出て行った。



早朝から沐浴して汗を流す。

生活魔法を使えば、お風呂に入った様に身体が綺麗になり、服も新品を着れる。

でもそれでは味気ないので、普通にお風呂に入ったり、服を着替える。

侍女が着替えを手伝い、朝餉あさげ(朝食)を食べて、朝礼の為に向かう。

侍女2人は入口で待機し、私が退朝して来るのを、その場でじっと待っている。

大変だよねぇ。

終わるまで座って本でも読みながら待ってたら?って言った事もあったけど、不敬罪で処刑されると泣いて拒まれたので、もう言うのは止めた。

優しさのつもりが、かえって迷惑になっては本末転倒だ。


朝礼では、商人が値を不当につり上げた為に民が困ってるだとか、地方で族衆同士の小競り合いがあったとか、領地に残ってる魔王の讒言ざんげんだとか、政務で山ほど見飽きた案件を進言して来るので、いい加減に頭に来た。


「もう良い。いい加減に本題に入ろう。ゲート奪還はどうなっている?」

怒気を含ませて言い放つと、重い空気が漂った。


「そ、それは…。この政務の終わりが見えないと…」

汗を拭きながら言い訳をした。


「一体いつ終わると言うのだ?政務に終わりなど来るものか!優先順位を履き違えるなよ!ゲートの奪還こそが最優先だ。その為だけに全ての政務も軍事も意味がある」

イライラが増して、怒鳴り気味に返した。


「陛下、既に兵糧・武器・兵の鍛錬及び配置も完了致しております」


「流石、ルシエラ。でも大魔王10人と互角と聞いたが、兵士の鍛錬が必要か?神界に行くにしても、此方こちらのゲートを確保して、私が地上でゲートを開かなければ意味が無いだろう?」


「はい、ですので100万の兵で消耗させたのち、大魔王10人と陛下で戦って倒します」


「待て、それは100万の兵を犠牲にして、疲れた所を我ら11人がかりで襲うと言う事か?」


「左様で御座います」


「馬鹿な!何て下策を進言する?」

思わず声を荒げて怒鳴った。


「恐れながら陛下、他の者は下策とは思っておりません」


「何故だ?」


「それほどまでに桁が違うからで御座います」


 開いた口がふさがらなくなったが、皆を見回しても誰も反論しようとしない。

あのいつも強気なビゼルでさえも。


「それほど強いの?」


「それほど強いのです」

ルシエラと押し問答の様に質問と疑問をやり取りし続けていたが、ロードが間から口を挟んだ。


「かつて私は精鋭を引き連れてゲートを確保しに行きました。すると、かの者が門番の様に陣取っており、行手をはばみました。その為、交戦しましたが、私1人を残して全滅しました」


「全滅…?」


「気がつくと1人生き残った私は、傷の手当てまでされていました。女は殺さん!と。私が女であったから、生かされたのです。屈辱でした」

握りしめた拳と唇をブルブルと震わせた。


「俺も同じくゲートを奪いに行った。しかしとてもかなわず逃げ出した。配下は皆、俺を逃す為に死んだ」

ビゼルは思い出したのか、天を仰ぐ様にして目を閉じた。


「分かった。でも、そんな奴が相手なら100万いても無駄死にするだけだろう?兵は周囲を取り囲まらせ、私達11人で戦おう」


「ところで、そいつの名前は分かるのか?」


「いえ、誰にも名乗っていないので、誰も知りません」


「なるほど。では近日中に攻めるので準備を怠るな!」


散会となった。

外で待っていた侍女を伴って後宮へと向かう。


(そんな化け物がいるんだ…。仲間になったら心強いんだけどな…)考えても答えは出ないので、戦って会ってから臨機応変に対応しようと思い、考えるのを止めた。



5日後、遂にゲート奪還の兵を起こした。

ゲートの場所は深い森を越え、砂漠を抜けるとオアシスの様な草原が見えて来る。

その奥に花々が咲き誇る一角があった。

魔法陣の様な物が描かれていて、宙に浮くドアの様な物が見える。

その下に鎧武者がいる。

こいつが皆の言う者なのだろうか?


鎧武者の男は、私達の接近に気付いて槍の様な武器を構えた。

放たれた殺気が、重たい空気として身体にのしかかっているみたいで、呼吸すら苦しい。

凄まじい圧力プレッシャーだ。

「かはぁっ。はぁ、はぁ…」

呼吸すら出来なくなるほどで、私は足が震えて1歩も進めなくなった。

鳥肌が立ち、全身の毛穴から汗が吹き出して来た。

10大魔王達は私を残して、鎧武者に詰め寄って行く。

情け無い。

心が恐怖に支配される。

例え私が100人いても、こいつには勝てない。

それを瞬時に悟った。


「私を覚えているか?あの時の借りを返しに来たぞ!」

戦闘の口火を切ったのはロードだった。


神速の剣撃を無数に繰り出すが、鎧武者はゆったりとした様な動作で軽く弾いて凌いでいる。

ビゼルが横から槍を繰り出して加勢し、ファルゴも二刀流で剣を振りかざして踊りかかった。

クラスタも背後から戦斧を振り回し、フレイア、ミューズ、ルシエラが呪文を唱えて攻撃する。


その全ての攻撃を息切れ一つせずに悠々と受け流し、さばき弾く。

カウンターを入れられたファルゴの両足は斬り落とされて地面に転がる。


「うがぁ」

痛みで顔を歪めながらトドメの一撃を辛うじてわす。

いや、ビゼルが鎧武者の一撃を受けてくれたお陰だ。


1人に対して取り囲んで攻撃出来るのは、せいぜい5、6人だ。

残りは後衛として支援したり、攻撃魔法を唱えたり、前衛と入れ替わって斬りかかる。


しかし鎧武者の男は、同時に斬りかかられても、悠然として軽く受け、さばき、身体にかすりもさせず、1人1人を確実に倒して行く。


「何なんだこれは…私の回復魔法ありきだ。一瞬でも気を抜いたり、回復が遅れれば、あっという間に全滅する」

10大魔王と互角だと聞いていたのに、とんでもない話だ。

絶望的な強さを目の当たりにして涙があふれて来る。


(もう逃げる事も出来ない。勝つか全滅かしかない)

ゲート奪還を強行した私のせいだ…。


ロードは何か必殺技を繰り出していたが、かわされて袈裟けさ斬りにされて倒れた。

すぐに回復呪文を唱えるが、効果がない。

傷が修復しない。

これは絶命した事を意味する。

死者には回復魔法の効果がないからだ。


すぐにロードを蘇生した。

莫大な魔力を消費して意識が飛びかける。

配下達が慌てて私に魔石を使い続けて回復する。

その間にアーシャは喉を突かれ、フィーロは頭から真っ二つにされて討ち取られていた。

彼らも急いで蘇生する。


魔界随一の怪力の持ち主であるハルバートが、渾身の力を込めて斬撃を繰り出す。

それまで片手でしのいでいた鎧武者が両手で受け、弾き返すとハルバートが吹き飛ばされた。

これは、魔界随一の怪力はハルバートでは無くなった事を意味していた。

皆、動揺したはずだが、それを顔に出す余裕は無い。


驚く事に鎧武者の男は、魔法陣の円(3歩の距離)から1歩も動いていないのだ。

とても信じられない光景だった。

大魔王だ。

この魔界を支配していた大魔王だ。

魔界最強の戦力10人が、たった1人を相手に蹴散らされている。


クラスタは左肩から右腰にかけて斬られて真っ二つになり、返す刃で首を落とされた。

ビゼルは右目を貫通して頭を貫かれた後、胴切りにされて絶命した。

初めこそ拮抗してるかに見えたが、ここに来て完全に押され出した。


回復させ、蘇生させる。

その繰り返しだ。

絶望的とも思える時間だけが過ぎていく。

もう誰の目にも明らかだった。

勝てない…。

私の魔力が尽き、魔石で回復出来なくなった時が終わる時だ。


ふいにロードの言葉を思い出した。

(万が一、戦況が膠着こうちゃくしたり、押されていた場合、私が相対すれば戦闘は終わると…)


ふらふらと吸い寄せられる様に鎧武者の下へ向かった。

ロード以外の9人はギョッとして私を止めようとしたが、ロードがそれを制止した。


近づくと胸が高鳴るのが分かった。

恐怖や緊張で心拍が上がるのとは違う。

自然と涙がほおつたう。

私は彼を知っている気がする。


鎧武者も私に気付いて近寄って来た。

会是你吗フゥェイスゥーニーマ?(まさか、お前なのか?)」


我是ウォースゥー(私よ)…阿籍ア・ジー…」

自分の意思とは思えず、勝手に口を突いて出た言葉だった。

自分自身でも戸惑い、まるで自分が自分でない様だった。


小虞シャオ・ユー…」

彼に抱きしめられると、私は涙が止まらなくなった。


ニー(あなた)…」

私も強く抱きしめ返す。


2人の様子を見て10大魔王達は顔を見合わしてロードを見た。

「やはりそうか…」


「一体これはどう言う事だ?」

ハルバートがロードに質問する。


「人間は神格を貯めると死後、神となる事は知っているだろう?だがそれと引き換えに生前の全ての記憶を失う。あいつは神になれたのに、記憶を失う事を拒んで、記憶を残す事を選んだ。あいつの正体は人類最強の男、項籍だ。そして陛下はあいつの妻、虞美人だ。何世代前の前世か知らないがね?」


「何だって?それなら最初から陛下が、あいつの前に出ていれば、戦わずに済んだんじゃ無いのか?」


「それは違うな。あのタイミングだからこそ、勝利を確信したからこそ、心にゆとりを持った。あのタイミングだったからこそ、陛下を認識する余裕が出来たのだ」


「何にせよ、苦労したがゲートは確保出来た」

何故なら項羽は恐らく、いつの日かゲートを開けて虞美人の生まれ変わりを探しに行く為に、占拠していたのだろうから。


「項羽よ、どうする?今後は陛下に従うのか?」

ロードが剣を収めながら尋ねた。


「待って、私の夫なのよ?皇帝の椅子は阿籍ア・ジーに」


「それはダメだ!」


「何でよ?」


「我らが忠誠を誓っているのは、ミズキ、お前なんだよ。お前でなければダメだ。今お前が皇帝の座を降りたら、再び魔界はバラバラになる」


私が反論を言い掛けた時、項羽が口を開いた。

「俺がいつ皇帝になりたいと言った?小虞シャオ・ユー、俺はお前の側にいられれば良い。俺は後悔した。お前が足手纏あしでまといになりたくないと、自ら命を絶ったあの時。俺は最愛の妻でさえ守れない男だったのだと…。もう2度とお前を失いたくない。俺が権力を、力を求め無ければ、お前を失う事は無かったのだ」


「ならば陛下に忠誠を誓うと言うのだな?それならば、行動で示せ!」

ロードが項羽に鋭い眼光を向けながら言った。


阿籍ア・ジーは私に拝礼を取った。

すぐに拝礼を止めさせ、起こして立たせた。


「さぁ、戻ろう。私達のお城へ」

阿籍ア・ジーは私をお姫様抱っこして、かかえ上げた。


中国ではカップルや夫婦は、親しみを込めて愛称で呼び合う。

歳下の妻に対しては、名前や苗字の前に小を付けて呼ぶ。

年上の夫に対して名前の前にラォを付けるのが普通なので、本来なら老籍ラォ・ジーと呼ぶべき所を、虞姫は阿籍ア・ジーと呼んだ。

これは籍ちゃんと言う感じの呼び方であり、より親しみを込めた呼び方をした事になる。

なので、ラブラブな関係だと分かる。

何故なら本来、名前の前に阿を付けるのは、園児とか小学校低学年の男の子に対して◯◯ちゃん、と名付けて呼ぶのが一般的だからだ。

歳上の男性に対して、それを言うのは失礼であり、それが許されていると言う事は、それだけ関係が深い事を意味する。


また、項羽の場合、姓は項、名は籍、あざなは羽だが、名は親しい間柄か、親、兄、先生、上司など目上の者でしか呼ばないのが習わしだ。

そして、目下の者は名を呼ばず、あざなを付けて呼ぶ。

つまり項羽と呼ぶのは、項籍に対して敬意を表している事になる。


司馬遷の書いた「史記」において、本紀ほんぎは皇帝について書かれている所であり、漢を建国した高祖劉邦が本紀に書かれているのは分かるが、その敵であった項羽は本来であれば伝記に書かれるべきなのに、本紀に書かれている。

これは司馬遷が項羽に敬意を表して、皇帝の様に扱ったと言う事なのである。

その為、敬意を表された項籍は、名を呼ばれず、項羽と記されている。

この為、項籍ではなく、項羽と言う名前の方が有名な理由だ。


負傷した10大魔王を回復させると、ゲートを守らせる為の兵を残して城に戻った。

5年にも渡る長かった魔界での生活も終わりが近づいている。

私が地上に戻り、ゲートを開く日が。


城に戻ると皆んなが気をつかって、夫婦水入らずで2人きりで過ごさせてくれた。

阿籍ア・ジーに激しく求められ、突かれる度に押し殺せない喘ぎ声がこぼれた。

たくみ張玉ヂャン・ユゥしか男を知らないが、阿籍ア・ジーは私の膣内なかの奥深くまで届く。

ただそれだけで意識が飛ぶほどの快感が全身を刺激する。

「あぁ、またイクっ…」

阿籍ア・ジー痙攣けいれんする様に精を膣内なかに吐き出すと、6回目の絶頂に支配され、意識が飛んだ。


「あぁ、気持ち良い…愛してる、阿籍ア・ジー


「俺も愛してる、小虞シャオ・ユー…朝まで抱くぞ」



肩を揺さぶられる気がして、薄っすらと目を覚ました。

「おい、朝礼じゃないのか?」


「えっ?ごめん寝てた?気を失ってたのかな?もう朝?本当に朝までするなんて…身体中が筋肉痛だよ…」

自分に回復魔法をかけて治した。


支度をして部屋を出ると侍女が待っていた。

気をつかってくれたのね。

いつからいたんだろう?

まさか一晩中いたのかな?

喘ぎ声も聞かれてたんじゃないの?

恥ずかしい…。


地上に戻ったら、ゲートを開く前にたくみに会わないといけない。

お別れを告げる為に。

たくみの事を想うと胸が苦しく切なくなる。

裏切ってしまった。

いえ、違う。

私は夫がある身でたくみと付き合ったのだ。

私は阿籍ア・ジーも裏切ったのだ。

ずっと私だけを愛し続けてくれた阿籍ア・ジーの事をすっかり忘れて、他の男と付き合ってHしてたのだ。


阿籍ア・ジーは、およそ2270年も私を待ち続けていた。

そんなに長く私だけを愛していてくれた…。

取り返しのつかない事をしてしまった後悔で涙が止まらない。

急に泣き出した私を見て、侍女があたふたと狼狽うろたえた。

大丈夫だから、と安心させて歩き出した。


朝礼で私は残務と引き継ぎを終えたら地上に帰る事を伝えた。

阿籍ア・ジーと数日だったが、濃密な時間を過ごした。

たくみとの事を正直に話した。

申し訳なくて泣き出すと、優しく抱き寄せて頭を撫でられた。


地上に帰る日、盛大にお別れ会を開かれた。

またすぐに会うから良いよ、と断ったが押し切られた。

余り飲めないお酒を代わる代わる注がれ、途中から記憶にない。

身体状態異常無効は酔わないんじゃないのか?

雰囲気に酔ったのかな?


翌朝、皆んなが寝ているであろう時間に起き出して、魔界をおおう、ぶ厚い黒い雲を抜ける為に全力で飛んだ。

お別れの挨拶を受けると照れくさいから、こっそり抜け出したのだが、私と同じく遅くまで飲んでいたはずなのに、皆んな私より早く先回りして、見送る為に空で待機して待っていた。


もう泣かないつもりだったのに、気持ちが嬉しくて、涙が流れるのを止められなかった。

手を振って、ぶ厚く広がる雲に飛び込んだ。

雲を抜け、影の世界に入り地上に出た。

懐かしい陽の光。

私が魔界にいたのは5年ほどだ。

こっちでは、一体どのくらいの月日が経ったのだろうか?


たくみの部屋に入って確認すると、1日と少し、およそ30時間しか経っていなかった。

と、言う事は魔界の1日は、こっちの1分くらいかな?

たくみはまだ帰って来ていないようだ。

取り敢えずシャワーを浴びてくつろいでいると、眠くなって来てソファーで目を閉じると、深い眠りに落ちた。


いつも読んで頂きまして、ありがとうございます。

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