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  第7章  【魔王を超えし者】

 ぼーっと、城から見える景色を眺めていた。

「すぅぅ、はぁぁ…」

吐き出した息が、白い綿雲わたぐもの様に昇って行く。

地上の人の世界にいた時はまだ4月で、多少肌寒く感じても、息が白くなるほどではない。

魔界に来た頃は、まとわりつく様な冷気を感じたが、今は真冬の様な寒さだ。


「陛下、風邪をひかれますので、どうぞ中へお入り下さい」

侍女の1人が心配そうな顔をして、うながした。

私はうなずくと、もう1人の侍女が左側に回り、腕をそっと支える。

私が歩き出すと、付かず離れずの距離を保ちながら後を追う。


「陛下、入朝ー!」

全員がひざまずき、私が着席すると同時に全員が拝礼を行なった。

壇上の席から皆を見下ろすと、まだ緊張で震えて来るのだが、それを隠している。


少し前まで、ただの人間だった。

今や初の魔界統一者として、人間が恐れる悪魔達の皇帝として君臨している。

私も始皇帝と名乗るべきかしら?などと、ふざけた事を考えていた。


私の位置から3段下がった所に魔王ルシエラがいる。

主に彼女が皆に話をしてくれているので助かる。

私は性格的にMCとか苦手だから、私主体で話をしたくなかった。

私は主に報告や提案を聞き、それに対して同意や反対意見を述べたり、考えが浮かばないと彼女の助言を求めた。

その場合ほとんどが、保留とされ、よく吟味ぎんみした上で指示を出す、と言う返答になった。

ルシエラが全部返答出来たはずなのに、即答せずに保留として、あくまでも私からの返答と言う形を取る事によって、私の顔も立ててくれている。


朝礼が終わり、解散となった。

「陛下、退朝ー!」

全員が拝謁はいえつして私を見送る。

何だか照れ恥ずかしいのだが、君臣の別をハッキリしておかないとダメだと言われた。


午後からも山の様に積み上げられた書状に目を通した。

すぐに案が浮かぶものからこなして数を減らす。

優先順位の高い案件は早く回答したいのだが、どうすれば良いのか案が浮かばないものも多く、全てルシエラに回した。


ようやく少しメドが付くと、既に夜だった。

「これは、疲れるわ」

侍女に命じて先に入浴を済ませてから食事をった。

ロードが目配せして部屋に誘って来た。

(ロードに癒してもらおう…たくみ、これは浮気じゃないからね)


「1番の難題が残っている」

ロードが私を見つめながら口付けをする。

久しぶりにロードと文字通りベッドの中で、裸のお付き合いを楽しんでいた。

そう言えばクラスタも、ロードに誘われて3人でそう言う仲になってしまってからは、以前の様に対抗意識をき出して来なくなった。


「お姉様をられた気がしてたのよ」

時々ロード不在で、クラスタと2人で行為を楽しむ事もあるので、色々な意味で仲良くなった。


ただ何度も言うけど、私はレズでは無い。

まぁ、女性も男性と同じ様に性欲はあるし、私の中では、1人でするか、手伝ってもらい手伝うかの違いかな?と言う感覚だ。

それで、殺されそうになった味方クラスタ懇意こんいになれるなら良しとしよう、と考えた。


「1番の難題って?」

私がたずねると、表情がけわしくなった。


「ミズキが地上でゲートを開いても、我々がゲートをくぐる為に必要な場所があるのだが、そこをある者が占拠しているんだ。前にも話したが、そいつの強さは尋常ではない。魔王10人がかりでも倒せないかも知れない。此方こちら窮地きゅうちおちいったり、互角で膠着こうちゃく状態が続く様であれば、ミズキにそいつと相対あいたいして欲しい。恐らくそれで、争いは終わる」


「何で私が相対あいたいしたら終わるの?」


「確信が無いから今はまだ言えない」


「分かったわ、ロードを信じる。まぁ、斬りかかられても私は死なないしね」

あははは、と2人で大笑いした。


でも出来る事なら戦いたくない相手だ。

魔王10人と戦っても互角って、どんな化け物だよ。

思わず溜息ためいきが出る。


「あぁ…うっ、くっう…」

ロードのう様な舌が、下半身の敏感な部分を集中的に攻めて来る。


「あぁ、ダメっ」

指を入れたり抜いたりをリズムよく繰り返しながら時折、膣内なかき回して来る。


「あっ、い、いくっ…はぁ、はぁ、はぁ…」

両足の指先が痙攣けいれんするほど伸びた後、硬直こうちょくして脱力する。


「良かったか?ミズキ」

ロードが舌を絡めて来たので、ボーッとしながら私もそれに応えて舌を絡めながら背に腕を回した。


たくみに随分と会ってないな。地上の時間の流れがゆるやかだから、戻っても数時間しか経ってないんだろうな?)


「ミズキ、顔が良いだけなら、いくらでも男がいるが、しなくても大丈夫か?」

思わず顔を赤らめて否定した。


「ダメだよ。私には結婚を約束した彼氏がいるんだから…」

張玉ヂャン・ユゥに無理矢理抱かれた記憶が蘇り、涙がこぼれた)


「どうした?泣くほど恋しいのか?」


「違う。無理矢理とは言え、けがされて、彼を裏切ってしまったのが悲しいのよ」


「まだ忘れられないのか…」

私の胸を強く吸って来たので、ロードの頭を強く抱きしめた。



魔界こちら側のゲートを守っている者を倒しに行く前に、闇の皇帝としてやる事は山積みだ。

まずは内政からだ。

10人の魔王達は大魔王として、魔界を10分割して統治させ、各領地ごとに2〜3人の新たに昇格させた魔王を配置した。

10大魔王達に領地は与えているが、中央で役職に就かせて中央集権国家とした。

唐の時代にいた節度使の様に、中央から離れた所で軍事力を高めて、謀反を起こそうと考える者が現れるかも知れない。

国境を脅かす者も無い為、中央以外で軍事力を強化させる意味も無い。

それに、私は10大魔王よりも弱く、元神々でも無ければ魔族でも無い、ただの人間だから謀反の口実にされるかも知れない。


ルシエラを宰相兼軍師にして、頭脳的な事のほとんどを任せた。

権力を集中させてしまった事に対して、彼女が野心を隠し持っていたらどうする?と毎日の様に讒言ざんげんを受けたが、笑って返す事にした。


実はルシエラが配下になった当初から、身体の関係になっていた。

私はレズでは無いのだけど、物静かで陽だまりの様に穏やかな笑顔、色白で薄い水色の眼に栗色の髪が美しくて、魅了無効なはずの私もかれてしまった。

ロードも体温が低いが、ルシエラは更に低く、ヒンヤリと冷たい身体は火照った私の身体と抱き合うと気持ち良くて癒される。

着痩きやせタイプなのか、脱ぐと胸が私より大きくてうらやましい。

彼女は私だけが特別で、ロード達には指1本触れさせようとしなかった。


野心家のビゼルには権限をあまり与えたくは無かったが、それが不満となって不協和音を奏でられても困るし、三国志の魏延もこんな感じで、孔明も持て余して苦労したのかな?とか思ったりした。

ビゼルの態度や言葉の端々に、「たかが人間風情が」と、私を見下している気がする。

こう言う相手はうとんんじるのではなく、むしろ逆に目を掛けているていで接した方が利口だ。


結局、ビゼルを太師たいしに祭り上げる事にした。

太師とは、未来の皇帝となる私の子を教える先生と言う役職で、将来の皇帝の先生だから宰相よりも官位は上だから、ルシエラよりも官位は上だけど、実権の無い名誉職の上に、私にはまだ子供がいないから、完全に名ばかりの役職と言う事だ。

勿論これだけでは不満を抑えられないので、北軍の統括とした。

戦の時には先鋒を任される事になる大任だ。


そして大した用事が無くても話し掛ける様に努めて、仲は良いよアピールしていると、曲解きょっかいされて、私がビゼルの事を好きだと思われたらしく、最近は執拗しつようにデートに誘われる。

何度か誘いに乗ってあげたが、「その気にさせておいて!」とブチ切れられないかな?と、心配している。

しかし、人間を虫ケラの様に思ってたビゼルの事だ。

多分、私の事なんて好きでも何でも無いだろう。

恐らく、私と婚姻を結んで生まれて来た子供の摂政として権力を握るつもりかも知れない。

まぁ取り敢えず、暫くは裏切る心配は無いし、それに今の所は、私に指1本触れて来ないので、それも良いかと思ってる。


ハルバートには東軍の統括を任せ、クラスタには西軍の統括を、中軍には私がいるからロードを中軍の統括にし、アーシャとフィーロ、フレイアの3人は後軍とした。

ミューズは諜報の長として影から支えてもらい、ファルゴには廷尉(刑罰と司法の長官)として法の番人となってもらった。

その他にも色々と細部まで調整したのが大変だった。

内政が整ったら、いよいよゲートの確保に向かう。

いつも読んで頂きまして、ありがとうございます。

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