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  第2章  【再び魔界へ】

 目が覚めるとたくみは、まだ寝ていたので、起こさない様にベッドから離れてシャワーを浴びに行った。


「はぁ、それにしても凄い事を聞いちゃったな。やっぱり芸能界って怖い世界だわ。100人や200人だって、Hした人数。次元が違うわ。でも本当の話なのかな?まぁでも中国で、監督から枕するなら主演に抜擢すると言われて寝たり、ドラマに出演させてもらえる条件で寝た女優の暴露話とか騒がれてて、中国芸能界の闇とか言ってたのをネットニュースで見た事あるし、日本でも似た様な事があっても不思議じゃないよね?」


〝主様は真似しては駄目ですよ?〟


「うわっ!びっくりした、またガイド切り忘れてたわ」


〝あの話は売れていないアイドルや女優が、売れるキッカケ欲しさに行っていると言う話しです。名前も知られていない3流アイドルから、それなりに世間に名前を知られるアイドルになりたいと言う向上心で行われています。生活の為でもありますが、それでも世間ではあの様な行為をした彼女達を、ビッチと呼んでさげすんでいます〟


「うーん、でも何だかたくましいなって思ったよ。あそこまで開き直ってると、逆にカッコいいな。私には真似が出来ないけども」


〝真似なんてしなくて良いんですよ〟


「今日の事で何となく自分が分かったわ。私、嫉妬深くて独占欲が強い束縛タイプだったんだわ。たくみが他の女の子とイチャイチャしてるの見たら、ブチ切れそうになったんだもの。浮気されたら殺して自分も死のうとするメンヘラなんだわ私…。束縛するから、私もされる事によって愛を感じるの。だからたくみ以外の男に触れられると吐気はきけがする」


〝……〟


「あの女の子達、たくみと寝るつもりで取り合いしていたわ。許せない」


〝まぁまぁ、落ち着いて下さい、主様。それよりも大臣就任おめでとうございます!〟


「まだなってないわよ。OKしただけだわ。正式に就任するのは、まだ先ね。さてと2度寝するから、おやすみ」

ガイド機能をOFFにしてから寝巻きに着替えて、たくみにくっついて眠りについた。


夢を見た。

実はここ最近、ずっと同じ夢を見ている。

それは、とても暗い世界を宙に浮いて漂っていると、お城が見えて来る。

何故か吸い寄せられる様にお城へ向かって飛ぶ。

それをこばむかの様に、無数の魔物が襲って来る。

それらを撃退してお城に入ると、1人だけ圧倒的な魔力オーラを感じる者がいたがシルエットでよく見えない。

目をらして近づくと目が覚めるのだ。


「大丈夫か?うなされてたぞ」

たくみは既に起きていてシャツに着替えていた。


「うなされてた?大丈夫よ。それよりごめん、2度寝しちゃって、すぐに朝ごはん用意するから」

食卓の上に、「ごはん、目玉焼き、ウインナー、納豆、海苔、味噌汁」いわゆる朝食メニューを出して並べた。

生活魔法には、1度食べた事のある料理を再現して出せる魔法がある。

朝食を作る時間なんて必要ないのだ。


「ありがとう、瑞稀みずき。でも手料理が食べたいな」


「ごめんなさい、今度はちゃんと起きて作るから」

ギュッとハグをされて、おはようのキスをした。


朝食が終わって、たくみを仕事に送り出した。

私は大臣の就任式までは無職だから、家でのんびりと華流ファリュウドラマでも観るつもりだ。


その前にステイタスをオープンして自分のスキルをながめた。

つくづく凄いスキルだ。


ふと、今朝の夢が頭の中によみがえり、気になった。

(あの真っ暗な世界に見覚えがある。あのお城は何だったんだろう?呼ばれてる様な気がする)


「『自動音声ガイド』オープン!」

呪文を唱えてガイド機能を発動した。


〝お呼びでしょうか?主様〟


「真っ暗な世界に行った事はあるの?私?」


〝ございます〟


「どうやって行くか教えて」


かしこまりました。闇魔法の『影の部屋シャドウルーム』を唱えて入った影の世界の地面を抜けると第3異世界、つまり魔界に行けます〟


「なるほど、ありがとう」

私は『影の部屋シャドウルーム』を唱えて影の世界に入ってみた。


自分の影の中に、ずぶずぶと沈み込んで行く感じだ。

影の世界は薄暗いが、元の世界と全く同じ地形で、建物も同じだ。

闇魔法『影の部屋シャドウルーム』を唱えられる者なら誰でも来れる世界らしいけど、闇魔法はレアなので使える者も少なく、私が見る限り今は誰もいない。


Sランク以上の能力者は飛行スキルを持つ。

自分の力で飛べると言うのは快適だ。

魔法の中に『空中飛行』呪文や『空中浮遊』呪文もあるらしいけど、魔力が切れたら地上へ真っ逆さまだ。

スキルだとその心配が無いのは有り難い。


「あの地面か…。本当にぶつかっても大丈夫なのかな?ちょっと抵抗がある。怖いし」

影の世界の地面に着地すると、足で地面を踏んで感触を確かめてみる。


全然固かたいんだけど。本当にこの地面の底にもぐれるの?」


〝大丈夫です。地面を手でき分けてみて下さい〟

半信半疑でガイドに言われた通りにしてみると、例えるなら綿飴わたあめみたいな感触になった。


「本当にもぐれそう」

手でき分ける様にして厚い綿飴みたいな雲を抜けた。


「うわっ、真っ暗だわ」

ゾクっ!激しい悪寒おかんに襲われる。


「もの凄く嫌な感じがする。なるほど、ここが魔界か…」

何となく、昔ここに来た事がある気がして来た。


〝主様、『自動作成地図オートマッピング』を唱えてみて下さい〟

ガイドに勧められるまま呪文を唱えると、表示された地図が浮かび上がった。


〝この地図が出来ている場所は主様が以前、来られた事がある所です〟


「この赤い光が近づいてるのは何?」


〝それは敵意のあるモノは赤い光点で表されます〟


「えぇ!ヤバいじゃないの!」

全速力で飛んでその場から離れた。

だが、地図が出来ていない場所から無数の赤い光点が向かって来るのが見える。


「どうやって私の位置を把握してるの?」


〝分かりません〟


「匂いとか?人間の」


〝データ不足です〟


「待って、囲まれてる。誘導された?」

追い込みながら囲んで行く。

かなり知的生命体の仕業だ。

(こうなったら囲みで1番薄い場所を突破するしかない。それすらも計算のうちかも知れないけど…)


肉眼で見えるほどの距離まで近づいた。

昆虫や動物型の化け物、頭に羊の角が生えている人型もいた。

(あれが悪魔かな?)

それにしてもすさまじい数だ。

明らかに統率された軍隊だ。


先制攻撃を喰らわせてひるんだ所を突破するか?

無詠唱で呪文が唱えられても、この数は厳しい。

武器を出す魔法とかないのかな?


思案していると、敵陣から1人近づいて来る者がいた。

見た目は武装した女性の様だ。

一騎討ちでも申し込みに来たのか?と身構えた。


「この軍を率いる魔王バスター・ロード様の側近の1人、ショウ・ルゥイと申します。交戦の意思はございません」


「戦闘の意思が無くて何よりです」

相手の口調が丁寧だったので、丁寧に返した。


「我軍の城に招待せよとの魔王様のお言葉でございます」

有無を言わさずに城に案内される事となった。


(念の為に防御魔法をかけておくかな)

城門をくぐると肌の色が青い人や、頭に角が生えてる人、獣人と言うのだろうか?頭が虎の人など、明らかに人間では無い人達が長閑のどかに生活してるのが見えた。


「どうです?見た目が違うだけで、人間の暮らしと大して変わらないでしょう?」


「えぇ、意外でした。屋台の軒先に食料にされた人間が吊るされたりしてるのかと思ってました」


「あははは、面白い人間ひとですね。それなら今から自分が、料理される事になりますよ?まぁ、人間を食べる者もいますが昔の話で、今は誰も食べませんよ」


「良かった」(食べられるのかと思った…)


此方こちらです」

警戒厳重な門をいく通りも抜けて玉座の間に着いた。


中に入ると椅子から立ち上がり、此方こちらにゆっくりと歩いて来る人物(?)がいた。

私はその人を見て驚愕きょうがくした。

ここ最近ずっと夢で見ていたシルエットの人物だったからだ。

そう言えば、初めて来たはずなのに、このお城も見覚えがあって変な感じがしていた。


「ようこそ、魔王城へ。私の名前は魔王バスター・ロード。貴女は神崎かんざき瑞稀みずきですね?」

髪はストレートロングの金髪で、目は吸い込まれそうになるあおい瞳、身長は170㎝くらいだろうか?絶世の美女の称号を持つ私とも甲乙付けがたいほどの美女だ。


「魔王…様…?」

こんな可憐な美女が、怖いイメージしかない魔王とは。

しかし、見た目とは違って凄まじい魔力オーラを感じる。

100回戦っても100回とも負けるだろう。

冷や汗で全身がびっしょりと濡れている。


「そんなにかしこまらないで下さい。まずはお座りを」

目配せをすると侍女の様な人達が椅子を引いてくれたので、腰掛けた。


「実は40年ほど前、貴女がこの世界に現れた時に、監視の千里眼スキル持ちから、貴女のステイタスについて報告を受けまして」

一息を入れて、ティーカップに口を付けた。


「1度お会いしたいと思っておりました」


「何故でしょうか?」


「お分かりになりませんか?」


「全く分かりません」


「ふふふ、私のランクはSSSです。つまり貴女は人間でありながら魔王である私と同格の強さなのです。勿論、身体が人間である為、筋力22しか無い貴女に対して私は10万超え。恐らくデコピン1発で粉々になるでしょうね?」

ごくりと息を飲んで話の続きを聞く。

殺すつもりなら、とっくに殺していると遠回しに言っているのだろう。


「ですが、貴女は不死。悪魔どころか実は神々にも不死なんていないのですよ。意外に思うでしょうけど、神も死にます」

(神様も死ぬのかぁ…)


「毒や麻痺等も効かないので、状態異常にもならない。身体状態異常無効と不死の力があれば、頭を吹き飛ばしても次の瞬間には元通りになるでしょう」

(まぁ確かに…でも悪魔ならそんな能力なんて、皆んな持ってるかと思ったわ)


「つまり貴女を倒す事は出来ない」

(うーん、やっぱりチートだよね?)


「ここに呼んだ理由は、貴女に魔王を譲位したいのです」

(な、なんだって!?)


「現在魔界は10人の魔王が勢力争いをし、拮抗していますが、他に1人桁違いの強さの者もいます。風変わりで誰とも交わらず、国を持たず、それでも1人で10人の魔王を倒せるほど強い」

(そんな強い人がいるんだ、化け物だな…)


「しかし不死の貴女なら、魔界を統一出来る」


「統一してどうするの?」


「神々に復讐したいのです」

目に涙が浮かんでいた。

鬼の目に涙ならぬ、悪魔の目にも涙だな。


彼女の話では、元々は天界の神だったらしい。

父親は神々の剣術師範で剣帝と呼ばれ、天帝よりも強く、神々しく、まばゆい輝きを放っていたと。

しかしある日、身に覚えの無い罪を着せられ、父親の全ての称号を剥奪はくだつ、財産を没収された上、叛逆罪で処刑された。

家族であった母親とまだ赤子だった彼女は流刑され、魔界に流された。


母親は神であった事をひた隠し、流民にまぎれて幼い彼女を育てる為に身体を売って食いつないだ。

そんなドン底の生活の中でも母は、彼女といる時に笑顔を絶やした事は無かった。

母の愛に包まれて、貧しくとも彼女は辛いとか悲しいとか感じた事は1度も無かった…その日が来るまでは。


ある日、母が帰って来なかった。

何日待っても母は帰って来なかった。

彼女は母を探した、何日も。

そして見つけた。

目を疑った。

母は残飯と一緒に捨てられていたのだ。

震える手で母を抱きしめると、まだ息があった。

母をこんな目に遭わしたのは、この地方の有力魔族だった。

母の美しさに目をつけて、我が物にしようとしたが抵抗された為、生き絶えるまで母を犯したのだ。

ゴミの様に捨てられた母は、数日後に奇跡的に息を吹き返したが、文字通り虫の息だった。

彼女が母親の発見を1日でも遅れていれば、取ることは出来なかっただろう。

だが母の最期の言葉は、有力魔族に対してではなく、無実の罪で夫をおとしいれ、自分達を魔界にとした天帝を恨めと言いのこした。

そして彼女に最期の力を振り絞って、目に焼き付けていた彼女の父親である剣帝の剣技の全ての記憶を移した。

せめて剣の強さで、母を亡くした魔界で生きて行ける様にと。

その日から彼女は父親の名前を受け継ぎ、バスター・ロードと名乗った。

亡き母から受け継いだ父の剣技の修練を積んだ。

彼女もまた、母親似で美しく育った。

母の仇である有力魔族から側室にすると言われ、夜伽よとぎを命じられた。

その夜ロードは見事、母の仇を討った。

その領地を地盤に戦を重ねて領土を広げ、魔王の一角まで登り詰めたと言う。


「父と母を殺した天帝に復讐をしたい。その為なら、何でもする。魔界が統一されたら、全軍を率いて天界を攻め、父と母の仇を討つのが私の目的。その為だけに今、私は生きている」

私は話を聞いて涙が止まらなくなり、号泣していた。


「その話が本当なら味方になる。嘘だった時、私は敵になる」


私は新たな魔王として彼女が支配していた領地を受け継いだ。

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