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セシル 過去<6>



 師は、宗主国の魔法研究所に所属しているアレックスと名乗った。セシルの考えた通り、危険な属性――空間属性というらしい――のため、宗主国の宗主、及び宗主国にある主神殿の上位神官にしか知らされていない属性なのだとか。アレックスの場合は、彼が宗主国の宰相の息子であったからか、5歳で登録を受けた際にすぐに宗主に連絡が入り、魔力が強いためとしてそのまま魔法研究所預かりとなった。属性についての詮索はなぜかなく、そのため両親とは今でも普通に行き来が出来ているという。父親が宰相職だったので、おそらく推測が付いていたのではないかと思っている、とアレックスは自らの身の上を話した。


 この属性は、10年から15年程度に一人しか現れないほどの希少属性で、且つ魔法として変換できる者も少ないのだそう。そして何より、宗主国以外ではセシルのように人間でない扱いをされ、その後すぐに病死?した例もあるのだと。


 アレックスの年は現在22歳。師になるには若くないかと聞いたところ、自分の14年前に現れた子供は、宗主国に近い小国でかなり魔力が弱い登録があり、そこの神官は魔力なしとあえて判定を出したそうだ。もともと弱い魔力しかないし、下手にあり得ない魔力が見つかったとされるより、魔力なしとの判定の方がその子供が幸せだろうから、と。そのためその子供のところにはアレックスの師は現れることはしなかった。どのみち魔法として発現されることが可能な魔力量ではなかったから。


 さらにその11年前に現れた子供は、宗主国から少し離れたどちらかというと排他的な国でそこそこの魔力持ち。で、異形扱いされてその数日後に病死したとか。おそらく神殿と親との話し合いの結果、存在をなかったことにされたのだろう。各神殿での登録情報は一方通行で主神殿にすべて送られているため、空間属性の持ち主が現れたことは主神殿ではすぐに把握ができる。そのため、様子を見に行こうと思った矢先、すぐさま上書きで死亡登録がされた。あの早さは、病死という名目の毒殺が行われた手際の良さとしか考えられないと主神殿から連絡があったという。


 そのため、アレックスのところに現れた師は、2代分飛んでいて現在60歳過ぎのご高齢且つ魔法研究所の所長で忙しいため、若輩者だが今回はアレックスが現れるしかなかったということらしい。


「セシルが大丈夫か、実は以前から様子を見に来ていたんだ」


 アレックスはセシルの頭を撫でながら告げる。


「まだ幼い君が暴言や暴力を受けているのを見て、どれだけ攫ってしまおうと思ったか」


「でもね、貴族令嬢がいなくなると、かなり大事になるでしょう? 属性との関連を疑われても困るしね。だから、ここから君を出すには、合法的に君の存在を消さないといけないんだ」


 だから、成人して君が自分で貴族籍返還手続きを出せるようになるまで、耐えてほしい。


 自分が痛みに耐えているような苦しげな表情で、酷なことを告げている、というように唇を噛み締めているアレックス。セシルの頭を何度も撫でながら告げるアレックスの言葉が、セシルの心にじんわりと染み渡る。

 私は、師が現れてくれてこんなに幸せなのに、とセシルは思う。成人する18歳まで我慢すれば、それ以降は師と共に生きることが出来る? 私も魔法研究所とやらに所属させてもらえるかしら。それはどれほど素敵な未来だろう。それなら後8年。いくらでも我慢はできる。


 セシルはコクコクと頷く。言葉がうまく出せないまま、それでも師とともに居たいという思いを込めて。


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