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第十四話 探索

 探索依頼の目的地。

 それは組合で配られている近辺の地図を頼りに探す。


 地図に縦横の線を入れて、囲まれているそれぞれの場所に数字が割り振られる。

 そして、探すべき場所の数字とその四角の中で大体の位置を伝えられるのでそこに向かう。


 さすがにそこまで行くのは冒険者自身だし、地図が読めない者は依頼を受けることはできない。

 方位磁石を手に自分の大体の位置を脳内で考えながら動くことができない者は、探索の依頼に向いていないので探索依頼は受けない。なので、そこまで街から離れる必要がない場合が多い討伐依頼や採取依頼を受けるようになる。


 その二つが絶望的なまでにできなかった俺は探索依頼をメインにこなす方針に切り替えたことが過去にある。

 今から大体一、二ヶ月前の話だ。


 方位磁石を道具屋で買い、また地図も組合で買い。

 さあ、行こうと街を出たのは良かった。


 それに幸いなことに俺は地図を読めたし、方位磁石だけで森を進むこともできるかなり探索向きの人間だった。

 だったが、それ以外がひどかった。


 森の奥に行けばこの辺りには生息していないはずのモンスターに囲まれたり、もしくは探索する場所を大型モンスターであるグリフィンがすみかにしていたり、あまりにも危険に見舞われすぎた。


 ので、諦めることにした。

 それらに襲われたとき、俺はおとなしく餌になることしかできないのでやめた。


 命大事に。

 死んでは意味がない。


 だから、俺は探索依頼にあまり乗り気ではなかった。

 その反面、レナがいるから大丈夫だろうと自信も持っていた。両極端に存在する不安と自信の両方を持ちながら探索依頼を進めている。


「レナ、なにかモンスターの気配はある?」


「かなり遠くにいます。でも、この距離なら問題ありません! このまま目的地に向かいましょう!!」


 レナに周囲の索敵を頼みながら、俺は地図と方位磁石を手に目的地を目指す。

 この間どうしても地図と方位磁石の方に意識が集中してしまい、周囲の索敵がおろそかになるので一人の時はいつも物陰に隠れながらやっていた。


 懐かしいな。

 一人の時は周囲のわずかな物音にさえビクビクしていた。


 それが今では、レナのおかげで不安が取り除かれた。

 人と一緒に冒険するのも楽しいもんだな。


 一度ぐらい組んでみれば良かったかもしれない。

 もし、組んでくれる相手がいたなら……。


「主人? どうして泣いているのでしょうか?」


「いや、なんでもない。気にせず周囲を探っててくれ」


「? なら、良いのですが」


 ここ半年の悲しい現実を思い出して、涙が出てきてしまった。

 そういえばあんな過去もあったな……。


 アクラムたちから執拗にいじめ抜かれて、一時期村に帰ろうと荷造りもしたことがあった。

 一番進んだところで街出そうになった。


 そのたびに母に怒られている気がして戻っていた。

 一度決めたことぐらいやり通しなさいって。もう、子供じゃないんだから。


 そう。

 言われていた気がした。


 そのおかげで今があると考えると、感動的な物語のようだ。

 このまま成長していき、いつしか最強に~なんてことは望まない。が、最低限今ぐらいの生活がこれからも続けば良いな。もう少し良い宿に住めるぐらいの収入がもらえれば幸せだ。


 村に戻って母に胸を張って冒険者になったと言える。

 その夢が、少しだけ近づいた気がする。


「主人!」


「どうした」


 まもなく目的地。

 そう考えられるタイミングで、レナが俺を呼ぶ。


「前方に何かあります」


「モンスターか!」


「いえ、生物ではないと思います」


 生物ではない?

 なら本当に魔力だまりか?


 地図を見た感じ、この先に川や滝などの特徴的な場所は見受けられない。

 本当に何かレナが気になるようなものがあるとしたら、魔力だまりとかの突然現れるようなものだ。


 しかし、魔力だまりならそれはそれで魔物がもっといるべきだ。

 魔力だまり以外のもの? 何か建造物でもできたとか?


 だとすれば一体誰が?

 どんな目的で?


 分からない。

 が、それを調べるのが今回の俺たちの仕事だ。


 分からないでは許されない。

 多少の危険だと思うが、このまま帰っては万年初心者に逆戻りだ。


「そこに向かってみよう。もしかしたら非生物の敵かもしれないから気をつけて」


「はい!」


 モンスターにも魔力によって動いているタイプのものも存在する。

 ゴーレムとかが良い例だ。


 先があまり見通せない森林を、レナを先頭にして進む。

 俺は地図と方位磁石を見ながら自分たちの大体の位置を把握する。もし俺たちが逃げることになったとして、俺が自分たちの位置を考えながら逃げないとこの森での遭難が確定する。


 かなり奥まで入っている以上、俺がここで地図を手放すことは死を意味している。

 もしもに備えて、俺も気が抜けない。


 ふかふかとしている足下が不安を煽り、小枝を踏んだ音が緊張を刺激する。

 木々の揺れる音が自然の広さを感じさせ、時々日光によって照らされる視界の一部が心臓の鼓動を加速させる。


 レナに草木をかき分けてもらいながら進むと、やっとレナの感じ取った異物に到着する。

 突然木々がなくなり、暗闇になれてきた目には多すぎる光が注がれる。右腕でそれを遮ると、視線の先にあるものがはっきりと見えた。


「これは……」


「なんでしょうか」


 そこには自然物と言うにはあまりにも人工的で、住居と言うには厳かな遺跡があった。

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