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日が落ちて暗くなったが、狩りに出た西東たちは戻ってきていない。
「水上さんたち大丈夫かなぁ。」
美咲さんが心配そうに呟いた。
「ちょっと遅いよね。俺が様子を見てこようか?」
「そうだね。お願いしてもいい?」
「もちろん。それじゃあ早速行ってくるよ。【トランスポート】、27番。」
西東をターゲットにして転移すると、周囲は真っ暗だった。
当然か。夜の森、雨は止んだとはいえ空は雲に覆われており月明かりも届かない。目を凝らさないと西東の姿を確認することもできない。失敗したな。灯りを持ってくればよかった。
「西東。大丈夫か?」
「わっ!!」「キャア!!」「だ、誰だ!?」
お互いの姿が確認できないくらい暗い中で声を掛けたのでチーム西東が驚いている。
「俺だよ。大和だよ。帰りが遅いから様子を見に来た。」
「大和君!?良かった~。」
水上さんから安堵の声が漏れる。
「もしかして迷ってた?」
「そうなの。真っ暗で何も見えなくなっちゃって。」
「様子を見に来て正解だったみたいだね。」
「本当に助かったよ。地面が濡れてて野宿もし難いし、どこもかしこも濡れているから火も起こせないし、モンスターは倒せないし、滑るし、暗いし、迷うし、もう最悪だった。」
「そっか。モンスターも倒せなかったんだね。今回は良い経験になったと思って諦めるしかないね。明日の朝晴れていたらリベンジしたら良いさ。」
「うん。そうする。」
「それじゃあみんなまとめて転移で帰ろうか。雪さんを連れてくるから待っててくれる?」
「うん。お願い。」
水上さんと話をまとめて一旦拠点に戻ると、雪さんをおぶって再びやってきて、チーム西東を雪さんの腕に掴まらせてから拠点へと転移した。雪さんが居ると複数人まとめて転移できるので助かる。
拠点に戻って灯りに照らされた西東たちは、泥にまみれてとても汚れていた。
随分と派手に汚れていたため何があったのか聞いてみると、暗くなる前に一度、大きなカエル型のモンスターと出会ったそうなのだが、雨で緩くなった足場が邪魔をして思うように戦闘できなかったのだそうだ。特に【時間加速】を使用した西東は何度も派手に滑って転んでいたそうだ。地面を蹴る速度が3倍となり、普通に歩こうとしただけでも緩くなった地面が耐えられずにグリップできなくなったのだろう。結果を聞けば納得の理由だが、西東たちが出掛ける前には気付けなかったことだ。
結局狩りに失敗して全員で逃げ出したのだが全員が転んだりして泥だらけになった上に道に迷うことになったとのことだった。
チーム西東の狩りは失敗に終わり、西東は意気消沈、同行したチーム西東のメンバーも元気がなくなっていた。特に西東は俺との模擬戦の敗戦で失ったと思っている名誉を挽回しようと狩りに出たため、それが失敗したことでとても落ち込んでいた。みんなが心配する中で狩りを強行したので自業自得の感が強く、みんなが取りあえず触れないでおこうという雰囲気だった。
チーム西東にはとりあえず順番にシャワーで汚れを落としてもらい、それから夕飯となった。
今日の夕飯は美咲さんが作ってくれた木皿に、料理長七菜さん監修のハンバーグと白飯とサラダが盛られたハンバーグプレートだ。
ハンバーグの肉は牛肉を部位ごとに切り分けた際に出た端肉を主に使っており、脂身多目のためとてもジューシーだが、ソースはしょうゆベースの和風で柑橘系の果物の酸味が足されておりさっぱりと食べられた。
白飯は今日入手したばかりだが、鍋と焚火でもしっかりと炊かれていて美味しかった。全体が均一には炊けずに失敗している部分もあったそうだが、俺の皿に盛られた白飯は文句なしに美味しかった。
美味しい夕食を作ってくれた料理長の七菜さんに感謝だ。もちろん他の人も手伝ってくれているので感謝の心を忘れない。みんなありがとう。
異世界10日目はそのまま就寝となり、俺たちは大きな節目となる異世界11日目を迎えることとなる。




