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日が暮れ始める前には長かった雨が止んでいた。これで明日から活動を再開できそうだ。
そう。明日からでいいと思うのだ。俺は。
「雨が止んだんだ!狩りに行くぞ!」
西東は直ぐにも出掛けようとしている。
「まだ地面もぬかるんでるし、もうすぐ日暮れだろう。危ないよ。」
西東に連れ出されようとしている板野君が抵抗している。チーム西東の残り二人も嫌そうにしているが、西東は行く気満々だ。
「大丈夫だ!モンスターなら俺が倒す!」
「分かったよ。」
もう諦めるのか。チーム西東は上下関係がはっきりしているのかな。
西東は俺との模擬戦で敗れたことを気にしていて、狩りで良い所を見せて挽回しようとしているのだろう。雨上がりでぬかるんだ地面の中で更に夕暮れ間近だというのに狩りに出ようとしている時点で判断力の欠如と言わざるを得ないのだが、結果を残せば英断と評価されることもあり得るので口出しする気は無い。
チーム西東の板野君、田辺君、水上さんが西東に連れられて洞穴から出ていく。西東以外の後ろ姿に哀愁を感じる。
チーム西東を見送っているのは俺だけではない。むしろ、俺は一番遠巻きにしている方だ。
ホームの中から見守っていた美咲さんが独り言のように呟いた。
「水上さんたち大丈夫かな。」
実際に戦ってみた感想として西東は調子に乗るだけのことはあり、かなり強いとは思う。だが条件が悪いのも確かだ。何とも言えないな。
「運次第、つまりは不安があるってことだけど、俺が止めても西東に「実力不足だから止めてとけ」と取られて逆上されそうだからなぁ。無事を祈るしかないかな。」
「無事でありますように。」
美咲さんが本当に祈りだした。目を閉じて両手を組んで祈りのポーズ。かわいい。
俺も真似して祈ろう。水上さんが無事でありますように。ついでに男どもも無事でありますように。
「二人揃って何してるの?」
玉田さんに見られた。
「えっと、無事を祈ってる。ポーズ付きで。一緒にどう?」
「遠慮しておく。私は心の中で祈らせて貰うわ。」
遠慮された。呆れているな。そんなことじゃあ駄目だよ玉田さん。美咲さんの様にもっと可愛げを出していかないと男にモテないよ。なんて言えるわけがないのでそれこそ心の中だけで言わせてもらおう。
その後、手が空いたので夕食作りに参加しようと思ったのだが、手は足りていると追い出されてしまった。仕方なく【ホームへの扉】が消えないようにホームの中で待機している美咲さんのところに戻り、一緒に時間を潰すことにした。
美咲さんは工作中だった。
「何を作ってるの?」
「木皿だよ。このトレントの木材って凄いね。雪ちゃんの【解体用ナイフ】で凄く簡単に加工できるけど、出来上がった物は凄く丈夫なんだもん。」
「雪さんの【解体用ナイフ】が凄いってのもあるけど、出来上がった物の丈夫さは素材の力だろうね。」
「これなら家とかも作れるんじゃないかな。そうしたら雨に濡れずに済むよね。日下部さんの熱はやっぱり雨のせいだよね。大丈夫かな。」
「薬で少しは楽になったみたいだけど、回復を祈るしかないね。最悪の場合はまだ試せることがあるから、俺に出来ることはやってみるよ。」
「その時はお願いします。」
今ならまだやれることがある。それは、新スキルの取得。
俺のスキル取得時にデメリットスキルを組合わせて効果を発揮するようにしたが、組合わせても期待通りの効果を発揮しなった場合はデメリットだけが残ってしまうので、それに備えて【スキルリセット】というスキルを用意してあった。このスキルは対象のスキルを消して、ボーナスポイント1ポイントに還元する効果がある。元のボーナスポイントが何ポイントでも1ポイント還元なので、元々1ポイントのデメリットスキルでないともったいないが、ボーナスポイントに還元すれば新スキルの取得が可能だ。
だが前にみんなで街に転移した時よりもチートっぽいんだよな。これをすると悪魔が来るかもしれない。
やるなら悪魔に対抗する手段が欲しいところだ。考えておこう。




