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日下部さんは薬が効いたのか、少し呼吸が楽になったようだ。あの怪しいペーストがちゃんと効果を発揮するなんて。異世界の薬師は案外やる。
大丈夫そうだし街に買い物にでも行こうかと考えていると、ニヤニヤしながら西東が近寄ってきた。
「大和。雨で暇だし模擬戦でもしないか?このチームの誰がエースかはっきりさせようぜ。」
こいつは何を言っているのだろうか。日本語を話しているようだが、全く意味が理解できない。雨で暇なのはお前だけで、俺は忙しくしているぞ。このチームってどのチームだよ。お前と同じチームに入った覚えはない。それにエースって何だよ。丸っきり言っていることが分からない。
「俺は忙しいから他を当たってくれ。」
「何だ。逃げるのか。まあ俺に勝てるわけ無いから気持ちは分かるが。」
そう言いつつもチラチラと西東の視線が動いている。視線の先には女子が集まっているので、誰か好きな人がいて自分の強さをアピールしたいのだろう。美咲さんじゃないだろうな!?
西東は何をしたという事はないのだが、合流してからも態度が大きくて気に食わないところがある。何かしでかせば追い出してやりたいくらいには腹を立てている。外出が多くて接する時間の短い俺ですらそう思うのだから、他の人はもっと不満を溜めているのではないだろうか。単純にぶっ倒してやりたいという衝動に駆られる。
いかんいかん。そんな馬鹿な真似はすべきでない。でも一言くらい返したい。
「俺のスキルで本気でやり合ったら瞬殺だから模擬戦にならないから止めておくよ。」
【自滅】スキルで瞬殺です。
「はっ!!俺に攻撃が当たると思っているのか?俺は速度3倍だぞ!?」
【マーキング】済みで【ロックオン】があるので俺のスキルは必中だよ。でも模擬戦で【自滅】はやり過ぎだよなぁ。
「俺のスキルは特殊で手加減不能なんだ。まあ、どうしてもって言うならそれは使わずに相手してあげてもいいけど。」
「おう!やろうぜ!!」
「まあ西東じゃあ俺のHPを減らすことはできないだろうけど。」
「ふん。じゃあHPが無くなったら負けでいいな。無くなったら直ぐに言えよ。気付かずに殴って怪我をさせちまうからな。それか降参しろ。」
「OK。それでいいよ。」
ここはこちらからは手を出さずに【ギャンブル体質】と【大雑把】のコンボの効果検証でもしようか。西東は手数が多いだろうから攻撃の回転数が高くても問題無いかの検証が出来るだろう。
自分の【ステータス】を見ながら戦おう。
「【ステータス】。」
『鈴木大和
HP 330/338
MP 280/289
SP 298/311
状態異常:HP切捨
スキル:マーキング、ロックオン、他多数・・・』
HPは330。これが変化しないことを確認すればいい。
西東はゴブリンの棍棒を持って構える。俺も同じく棍棒を持つ。
「行くぞ!【アクセル】!」
西東が叫んで駆け寄ってくる。速い。さすが速度3倍。
上段からの攻撃を棍棒で受ける。攻撃が重い。さすが速度3倍=エネルギー9倍。
次の攻撃に移るのも速い。左からの横振りに棍棒は間に合わないので腕で受ける。痛い。
続いて右から。これも腕で受ける。痛い。
攻撃が速い。そして重い。気を抜くと吹き飛ばされそうだ。それに痛い。だがHPのお陰で耐えられる痛みだ。吹き飛ばされそうなほどの衝撃だが、体の表面が硬い殻にでも覆われたかのようで、痛みは感じるが耐えられない程ではない。
さて、HPはどうかな。
『鈴木大和
HP 330/338
MP 280/289
SP 298/311
状態異常:HP切捨
スキル:マーキング、ロックオン、他多数・・・』
よし。減って無いな。【大雑把】でHPの下一桁が切り捨てられるので常にHP下一桁は0。そして【ギャンブル体質】で受けるダメージがHP下一桁倍になるためこちらも常に0。
これほどの連続攻撃を受けても問題無いことが検証できたのは今後のために良かった。
俺たちが戦い出したのを見て女子が悲鳴をあげている。ちゃんと説明せずに始めたからな。見た目、俺が滅多打ちにされているから心配の声が聞こえる。
「大丈夫!これは模擬戦!俺のスキルなら西東の攻撃は効かないから安心して!」
痛いことは痛いが、全然耐えられる。それよりも西東の方が苦痛の表情を浮かべているな。何かあったかな?




