82
各チームがこれまでどんな生活をしてきたかを語り合って夜も遅くなったので、そのまま就寝となった。4畳の部屋は女子14人には狭過ぎる。昨日まで女子7人が寝ていたが、かなり狭かったことだろう。男子も3人から8人に増えたので4畳の部屋には入りきらない。男女を分けることは出来ず、今日はトラウマを抱える女子である甘野さん、井家田、波多野さんだけ部屋の中で寝ることにして、それ以外はホームの廊下で寝ることになった。そして俺は男女の境界に指名された。女子の境界は雪さん。寝る場所に陣取った所で雪さんが話しかけてきた。
「大和の隣。緊張する。」
「止めてくれ。俺まで意識してしまう。」
「大和も意識するのか。意外。」
「俺も男だからね。女子を全く意識しないではいられないよ。」
「女子なら誰でもか?」
「誰でもではないけど、結構幅広く意識しちゃうと思う。」
「そこは君だからだよと言う所。」
「それを言わせたかったのか。雪さんダカラダヨ。」
「むっ。心がこもってない。大和の馬鹿。」
「ごめんごめん。雪さんも魅力的だから意識しちゃうんだよ。」
他愛もない会話で少し緊張が和らいだ。
でもスペース不足は問題だな。美咲さんの【ホームへの扉】は元々6人のチームを想定して作ってしまっていた。こんなに大所帯になるとは考えていなかったのでスペース不足が著しい。【ホームへの扉】に頼らない居住空間が必要だ。つまりは家づくり。家なんてどうやったら作れるだろうか。難問だ。
部屋を暗くして就寝となった。完全な暗闇ではなく常夜灯が点いている。始めのうちは話し声が聞こえてきたが、徐々に少なくなっていった。俺も寝ようと思った時に手を握られた。もちろん雪さんの方だ。
雪さんを見る。いつの間にかかなり近付いてきていた。肩と肩が触れそうな距離。とても小さな声で雪さんが呟く。
「嫌?」
手を繋いだことだろう。嫌ではない。雪さんの小さな手は俺の手より少し冷たくて気持ちいい。
「嫌ではないけど、拙くはある。」
「私は安心する。少しの間だけ。今は友達としてで良いから。」
友達か。友達が不安なら手を繋いで安心させてあげるくらいはしてもいいのかな。
答える代わりにこちらから手を繋ぎ直す。
「ありがとう。」
そう言うと雪さんは天井に向き直って目を閉じた。俺も天井を向き目を閉じる。
なるほど。人と手を繋ぐと安心感があるな。だが気恥ずかしくて眠れないぞ。これは何時までこうしていれば良いのだろうか。
気にせず眠ろうとしても気になってなかなか眠れない。雪さんの邪魔にならないようにと手を動かすのは極力控えているのだが、雪さんはこのまま眠れるのだろうか。
しばらく悶々としていると、手を繋ぐ雪さんの手に力が無くなったように感じた。雪さんを見ると眠ったようだ。繋いだ手をゆっくりと離しても雪さんは動かない。
もういいのかな?勝手に離れたら嫌がるかな?手を繋がないまでも、手と手が触れる位置には置いておこうか。
雪さんの手と俺の手がちょっとだけ触れている状態。ああ、これなら眠れそうだ。お休み。




