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「それにしても美咲、旦那様におかえりとは、もう良い嫁感が出ている。」
「ちょっと雪ちゃん止めてよ。まだお嫁じゃないよ。」
「「まだ」か。つまりいずれは。大和、脈ありだぞ。」
「そういう意味じゃないってば。」
なるほど。真中さんの応援ってこういうことか。佐藤さんが俺とのことをからかわれているのにそんなに嫌そうに見えないのが嬉しい。もっとやって。
「大和。ニヤニヤしてないで美咲に何か言え。」
「ああ、うん。ただいま?」
「それはさっき言ってた。もっと攻める。出迎えられた感想。」
「えっと、こんな可愛いお嫁さんがいたら幸せだろうなって思いました。」
「もう、大和君まで。」
佐藤さんは怒ったようにそっぽを向いてしまった。褒めたのに。
「うむ。大和。上出来。」
真中さんは満足そうにグッドサインを送ってきた。良かったのか。それじゃああれは怒ってないのかな。照れ隠しだとしたら可愛いな。
おっと、いかん。遊んでいる場合では無かった。
「気を取り直して佐藤さんに状況を説明するね。」
「うん。」
佐藤さんに、転移したら真中さんがモンスターに襲われていたこと。モンスターは直ぐに倒したこと。森を歩くのは厳しいから真中さんも一緒に転移したらできたこと。を説明した。
「モンスターって本当に居るんだね。」
「怖かった。」
「七菜ちゃんは大丈夫かな。大和君。七菜ちゃんも助けてあげて欲しい。いいかな?」
「もちろん。おんぶすれば転移スキルで連れて帰れるって分かったからね。二人はここで待ってて。」
「うん。待ってるね。」
新たに【ノミネーションファイブ】で飯田七菜さんを登録して転移準備は完了。
「【トランスポート】、3番。」
転移した。相変わらず唐突に視界が変わって驚くな。
目の前には繁みがある。中に人が隠れているようだ。もちろん、飯田さんだろう。隠れているということは近くにモンスターがいるのか?
辺りを見回すがそれらしき影は見当たらない。
「飯田さん?」
「大和さんですか?」
「そうだよ。」
「突然現れたように見えましたが、どこから来たのですか?」
「何処からと言われれば、佐藤さんの所からかな。転移するスキルを取って跳んで来たんた。」
「そうですか。大和さんも隠れた方がいいですよ。さっき赤い虎が居たんです。気付かれないうちに逃げて、走って距離を取ったんですけど。まだ近くにいるかもしれません。」
「うーん。見回す限りいないんだよね。」
「そうですか。」
飯田さんは繁みから出てきた。髪の毛や服に付いた葉っぱや土を掃っている。
「手短に状況を説明すると、俺は転移スキルでまず佐藤さんと合流した。佐藤さんはホームっていう居住空間を作るスキルを取ってそこで待ってる。佐藤さんの要望で真中さんを連れて帰って、次は飯田さんということでここに来た。OK?」
「簡潔な説明ありがとうございます。来てくれて嬉しいです。転移で来たということですが、私も一緒に転移できるのですか?」
「うん。真中さんで実験済。おんぶすれば大丈夫だよ。」
「おんぶですか。ちょっと恥ずかしいですが、お願いします。」