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異世界9日目の朝。


【ホームへの扉】から洞穴に出ると西東と他3人が横たわっていた。寝ているようだ。

西東たちの服は濡れていた。そして、洞穴の外からは雨の音が聞こえてくる。雨に降られてしまい、雨宿りのためにこの洞穴に来たのだろう。降り出したのは夜かな。


取りあえず全員【マーキング】しておく。これだけで大分安心だ。でも今回で、戸田君の20番から始めたその他のクラスメイトが30番に達してしまった。30番はモンスターに使用してきたが、今後は変更が必要だ。100番かな。いや、いっそ1000番がいいか。悩ましいな。


なんて、現実逃避は止めて考えなければならない。現状はかなりヤバい状況だと思う。


西東たちを起こさないように一度ホームに戻った。

みんなも外の様子を見て状況は把握したようだが、危機感に違いが出ているようだ。ホームに戻ったみんなに向けて漠然とした問いを投げかける。



「どうしようか?」



直ぐに七菜さんが反応する。



「困りましたね。」



困り顔の七菜さん。たぶん、俺と同じ問題意識を持ってくれている。単に俺と思考回路が近いのだろうが、意識を共有できる人がいるのは心強い。

だがよく分かっていない人もいる。甘野さんが問いかけてくる。



「どういうこと?何が困ったの?」



それに七菜さんは答えてくれる。



「先ずは雨です。雨で濡れてしまっているので薪はホーム内に蓄えている分しか使えません。雨が何時まで続くか分からないので無駄遣いできません。薪以外も色々と入手が難しくなるでしょう。次に洞穴に居た彼らです。服が濡れていましたね。乾いた服を与えないと風邪を引くでしょう。風邪はうつりますから早めの対処が必要です。迷彩服の上着とズボンに限定すれば4人分は作れますが、私のMPはそれで尽きてしまいます。彼らの体調を考えると体を温める必要があり、ホームに入れてあげるのがよいと思いますが、一度入れてしまえば居座られる可能性が出てきます。見た限り食事や水もあまり持っていなさそうでした。これも提供してあげる必要があります。どこまで施すかが問題です。それから、この問題は彼らだけでなく、この森にいるクラスメイト全員に当てはまります。」



七菜さんの言う通りだ。元の世界なら風邪をひいたくらいでは慌てないが、医者がいないだけでなく、未知の病原菌もたくさんありそうなここでは単なる風邪が致命傷になりうる。俺たちにうつされる可能性があることも厄介だが、それ以前に放っておけば西東たちが死ぬかもしれないのだ。見殺しにするのはこちらの精神衛生上よろしくない。


つい愚痴を呟く。



「自分たちの拠点で雨対策出来ていたら、濡れてまでここには来ないよね。異世界にきて9日目にもなるのに今まで雨対策を何もしてないものかな。」



俺の愚痴に華さんが申し訳なさそうに声を出す。



「私もヤマトッチに会うまで何もしてなかった。」



華さんと会った時のことを思い出す。飢餓で死ぬかもしれないのに、川辺で大の字に寝転がり、アニメを見ていた。あれはそのまま死ぬ気だっただろうから準備が足りないのとは違うと思うが、ではそれが華さんは助けて今外にいる人たちを助けない理由になるのかと言われると困ってしまう。



「そうだね。華さんは食事もろくに取ってなかったよね。その日を生きるのがやっとなら将来に備えての準備なんてできないか。俺たちも冬の準備ができているかと言われれば出来てないし、そんなもんなんか。そうするとやっぱり他にもずぶ濡れになっている人がいそうだよね。」



そうなってくると美咲さんはその人たちも救いたいと思うだろうな。



「私は救えるだけ救いたいと思うけど、私一人では誰も救えないから我儘言えないよ。」



我儘か。美咲さんが救いたいなら俺も救いたいから、俺にとってそれは我儘ではない。俺の思いを知ってか、雪さんと七菜さんが美咲さんを擁護するかのように発言する。



「食べ物には余裕がある。」


「そうですね。大和さんが狩ってきてくれた牛も熟成はまだですが食べられますので、仮にここに36人集まったとしても食べ物だけなら2日は持ちます。問題は服と居住空間ですが、空間は洞穴を明け渡せば足りるでしょう。シャワーで体を温めて貰い、その後は焚火して服を乾かしつつ体を温めて貰うしか無いでしょうか。女子には私たちの制服を貸して男子にはシーツでも被っていて貰いましょう。それから、私たちだけホームに入っていると不満がでるでしょうから私たちも一緒に外で過ごすしか無いですか。」



七菜さんも救う方向で意見を出してくれたが、甘野さんがそれに対して不満を言う。



「なんで私たちがホームから出ないといけないの?そんな我儘聞かなきゃいいじゃん。」


「あなたが言いますか。」



おっと、七菜さんが怒ってらっしゃる。

ここで何と、戸田君が口を挟んだ。



「甘野さん。僕と甘野さん、井家田さん、橋基君の4人は大和君のパーティにお邪魔させて貰っているようなものなんだから、ホームのスペースが足りないなら僕らが出るのは当たり前だよ。」


「どうしてよ!!私たちは仲間でしょう!?」


「いやいや、明らかに僕らは線引きされているでしょう。」


「何よ線引きって!!酷いじゃない!!」


「それは私でも気付いてた。」



おお、井家田さん、気付いてたんだ。思わね援護射撃で戸田君が甘野さんを説得に入る。



「そうだよね。でも大和君たちは僕たちに気を遣ってくれて悩んでくれているんだよ。大和君たちだけなら雨が降ってもホームに居ればいいし、食料も街に買いに行けばいいから何も問題無いのに、僕たちを含めた他のクラスメイトまで助けるとなると、スペースも食料も不足しかねないからね。」


「それなら私たちまででいいじゃない。」


「だから、・・・いやいい。とにかく僕は大和君たちに従う。例えば女子優先でホームが一杯になるなら、僕はホームの外でいいから。」



ああっ!!戸田君が甘野さんの説得を諦めた!!狡いよ戸田君!!そこで俺の名前を出したら俺が決めるしかないじゃないか!!

・・・。俺が何か言わないといけない番だよな。でも俺は、俺だけは雨でも休んでいられないんだ。



「女子優先の場合は俺も外、それは別にいいけど。とりあえず雨が長引いた時のために食料は確保しよう。街に行って飴を売って乾麺に変えてくるよ。その間に取りあえず洞穴の4人と湾藤と東をどうするか決めておいてくれる?」


「何でそこで湾藤たちの名前が出るのよ!?」



井家田さん、理解してたんじゃないのかよ。



「俺にとってはだけど、さっき戸田君が言った通り、湾藤も井家田さんも同じなんだよ。そして俺は湾藤と東の居場所が分かるし、転移で一瞬のうちに連れてくることができる。雨で濡れているなら助けに行くことができる。」


「あいつらは犯罪者よ!!助ける必要なんてないわ!!」


「俺はあの二人が見殺しにするほど悪いことをしたとは思ってない。結局さ、何処まで助けるかが問題なんだよね。俺は街に行くから相談しておいてくれる?決定権は、そうだな。美咲さんでいいよね?」



美咲さんが助けたいなら俺も助けたい。

それに、このチームの良心と言うべき美咲さんに任せるということは、まあそういうことだ。



「主にホームの事ですから美咲さんが妥当でしょう。」



七菜さんが賛同してくれた。



「私に任せるってことだよね。うん。分かった。」



美咲さんが引き受けてくれた。

ちょっと緊張してそうだけど、ようするに美咲さんの思うがままでいいんだよ。それを言うとまた狡いとか言い出す人がいそうなので言わないが。


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