表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/179

佐藤さんの要望に応えて真中さんの元へと転移することにした。



「【トランスポート】、2番。」



視界が変わり、目の前に真中さんがいる。しかも、人型のモンスターに襲われている。



「痛い!誰か!助けて!」



俺には気付いていないが真中さんが助けを呼んでいる。



「【マーキング】、20番。」

「【ロックオン】、20番。」

「【スキル自滅発動】。」



【自滅】スキルを発動するとモンスターが転んだ。

近付いてモンスターが持っていた棍棒を奪う。



「真中さん。大丈夫?」


「!?大和!?助けて!」


「うん。助けるよ。とどめを刺すから待っててね。グロ注意だよ。」



モンスターから奪った棍棒を振り上げて、倒れているモンスターの頭目掛けて振り下ろした。鈍い音がしてモンスターが動かなくなった。多分死んだ。冷静にやったつもりだが、若干興奮している。モンスターとはいえ生き物を殺すのに何の感情も無くはできないな。


背中に真中さんが抱き着いてきた。



「怖かった。グスッ。大和。怖かったよぉ。ありがとう。」



真中さんは泣いていた。よっぽど怖い思いをしたんだろう。可哀想に。

真中さんを助けるために必要だった。そう思うとモンスターを殺したことでざわついた心が少し治まった。


狙い通りにスキルが機能したな。【マーキング】で視認したモンスターを記憶し、【ロックオン】で次のスキルの対象を書き変え、【自滅】スキルを発動した。【自滅】スキルは自分のHP、MP、SPがゼロになるスキルだ。それの対象を書き変えてモンスターに使用したのでモンスターは倒れた。

HPは攻撃から体を守る障壁。MPはスキルリソース。SPは体力だ。この中だと倒れたのは体力がいきなりゼロになったせいかな。MPゼロも吐き気と眩暈があったからそのせいかも。

HPゼロで障壁も無く、MP・SPゼロでヘロヘロの相手を殴ればいい簡単なお仕事だった。既に一対一では無敵な気がする。成長チート?何それ美味しいの?こっちは命掛かっているので、最初から強い方が良い。




「真中さん、落ち着いた?」


「うん。ありがとう。」


「いやー、転移してきたらまさか真中さんが丁度モンスターに襲われているとは。ビックリしたよ。」


「転移?」


「そう。スキルで真中さんのいる場所に転移してきたんだ。あっ、先に佐藤さんに同じことして佐藤さんと会った後、佐藤さんが真中さんに会いたいっていうから相手を変えてきたんだけど、意味分かる?」


「コクコク。大和は美咲が好きって意味なら、知ってた。バレバレ。」


「マジ!?バレバレ!?どこらへんが!?」


「休み時間にチラチラ見てた。」


「マジかー。恥ずかしいぞ、それ。みんなにバレバレ?」


「女子の多くは気付いている。大丈夫。美咲は気付いてないし、美咲はモテモテだから他にも似たような男子がいっぱいいる。」


「他にもいっぱいいるの?大丈夫じゃないじゃん!?」


「助けて貰ったし、応援する。任せて。」


「お願いします!!」


「うむ。」


「じゃあ早速佐藤さんの所に戻ろうか。俺の持ち物なら一緒に転移できるんだけど、試してみていい?」


「持ち物?どうすればいい?」


「おんぶかな。それか抱っこ。」


「むむ。何かヤダ。」


「うーん。じゃあ歩きかぁ。」


「この格好を見て。」



そう言われて真中さんを上から下まで見てみた。色素薄めの髪はボブカットで、モンスターに襲われた後なので少し乱れている。上半身は白のワイシャツの上にブレザーの制服。首元にはリボン。慎ましい胸、おっと。じっくり見てはいけない。下半身は制服のチェック柄スカート。スカートから下に伸びた白い足。足元は白のショートソックスと黒のローファー。

うん。どこからどう見ても女子高校生だな。



「森歩きには不向きそうだね。」


「そう。」


「俺も制服だけど靴はスニーカーだから行けると思っちゃったよ。その靴とスカートで森歩きは大変か。」


「妥協する。おんぶにする。」


「それじゃあ、はい。」



真中さんに背中を向けてしゃがみ込むと、後ろから真中さんの腕が俺の首の前へと掛けられた。




「ん。」


「OK?じゃあ持ちあげるね。」



立ち上がりながら真中さんの足に腕を回し両腕で支えた。真中さんは小柄だが、あまりの軽さに驚いた。片腕を離して前に出し、手のひらを広げて転移の準備をする。



「それじゃあ転移できるか試してみるね。もし真中さんだけ転移出来なかったら落ちるから気を付けて。」


「え!?聞いてない!!」


「いけたらラッキーだね!?【トランスポート】。」



手のひらに小石が現れて直ぐに消える。そして視界が変化する。佐藤さんの前、ホームの廊下だ。背中の真中さんの感触は消えていない。成功だ。




「こっ、怖かった。降ろして。」


真中さんの要望に応えてゆっくりとしゃがんで降ろしてあげる。そして佐藤さんに挨拶する。



「ただいま。」


「大和君おかえり!雪ちゃんもいらっしゃい!」


「ここは?」



背中から降りた真中さんが当然の疑問を投げかけてくる。



「私のスキル、【ホームへの扉】の中だよ。凄いでしょう。家を作るスキルを取ったんだよ!」


「なかなか良いスキル。モンスターは怖い。美咲、グッジョブ。」




真中さん、モンスターに襲われたのがよっぽど怖かったんだな。まだ気にしているみたいだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ