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「【ホームへの扉】、おお~。これが私のスキルか~。」
森に突如として現れた扉。違和感が凄い。
「早速入ってみるね。」
俺が違和感にびびっているうちに佐藤さんが扉を開けた。中々度胸があるな。
開かれた扉の中には真っ暗な廊下が見える。入り口の扉の幅に合わせて廊下の幅は約2m。向かって左右側の壁に扉が間隔を空けて5枚ずつ並んでいる。廊下の奥行きは10m以上ありそうだ。扉の中を見ると廊下があるのだが、扉の脇から向こう側を見ると何もない。異空間か。原理は不明だが設置スペースが不要なのは便利だな。
「中は真っ暗だよ。廊下にも照明を付けられるのかな。あれ、何故か分かった。付けられるみたい。照明と空調は必要だよね。」
「そうだね。照明と空調でMP200ポイントか。それで今は限界かな。必要だから付けちゃおうか。今のところ息苦しくなったりしないし、空調よりも温調の方がいいかもしれないけど、扉を閉めて中に籠っている時に酸素濃度が低下したりすると嫌だしね。照明と空調で。」
「うん。じゃあ、廊下にMP200を奉げて照明と空調を付けます。・・・ウワァ。明るくなった。凄いよ。魔法使いになったみたい。あっ、そこが照明のスイッチね。」
「おっ、本当だ。スイッチができた。しかも見慣れた形状。施設の形状は佐藤さんの記憶がベースになってたりするのかな。」
「分かんないけど、分かり易いのはいいね。これで扉を中から締めちゃえば安全だよね。」
「そうだね。それじゃあ中で今後について話そうか。」
二人で廊下に入り扉を閉めた。
「佐藤さんのホームだから、お邪魔しますかな?おぉ、女子の部屋に入るのは初めてだ。」
「これを女子の部屋と言うのは違うと思うよ。大和君はまだ初めてを迎えられていないと思う。」
「くっ、まだか。もうそんな日は来ないんじゃないだろうか。」
「ふふっ。どうだろうね。地べただけど座ろっか。」
「うん。」
佐藤さんと並んで廊下に座り込む。固い石の床で熱が奪われる感覚がある。ここに直で寝るのは辛そうだな。
「今後についてだけど、出来ればもう少し仲間を増やしたいと思うんだ。俺は佐藤さんにやった方法で他の人の所にも飛んでいける。細かい説明は省くけど、あと4人は転移先に追加できるんだ。誰か追加したい人は居るかな?」
「クラス全員は無理ってことだよね?」
「無理だね。」
「そっか。みんなが心配だなぁ。やっぱりクラス全員がこっちの世界に来ているんだよね?」
「分からないけど、多分全員だよね。異世界転移したのは教室に突然現れたあの悪魔のせいだよね。あいつが現れて、気が付いたら異世界に連れてこられてたし、ここに来る前に見せられたチュートリアル映像で転移者が複数いることを仄めかしていたでしょう。この森から出られるのは多くとも6人、とか。」
「実際に私と大和君も居るし、教室に居たみんながこっちに来ているってことだよね。」
「うん。ちなみにあれはモンスターが出て危険だぞって意味にも聞こえたけど、もしかしたら転移者同士で争って生き残った6人しか森を出られないって意味かもしれないんだよね。」
「そうかもしれない。チュートリアル映像に人と人が戦うシーンもあったよね。」
「そう。でも逆に言えば6人までは仲間にしても大丈夫ってことじゃないかな。俺の取ったスキルもクラス全員は無理だけど、ちょうど後4人までなら転移で会いに行けるし、もう少し仲間を増やしても良いと思う。」
「そっかー。うーん。私は雪ちゃんと七菜ちゃんに会いたいな。」
「真中雪さんと飯田七菜さんか。その二人と仲が良いの?女子ってみんなそれなりに仲良さそうに見えるから分からないんだよね。」
「えっ?かなりはっきりとグループで分かれてるよ?もちろん他のグループの人とも普通に話すけど。」
「グループがあると言うのは聞くけど、見ていてもよく分からなかったんだよね。あんまりよく見てなかったともいえるけど。まあいいや、それじゃあ真中さんからやりますか。」
「【ノミネーション】、真中雪。」
「【ノミネーションファイブ登録】。」
「準備完了。それじゃあ行ってくるね。この中は安全だと思うから中で待っててくれる?」
「うん。」
よし。行こう。