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街で飴を売ってきて拠点に戻るとみんなが待っていた。
「ただいま。飴1個100円で売れたよ。この50円玉みたいなのが銀貨で1万円。これが小銀貨で千円。これが大銅貨で100円。この世界の貨幣は全部円形のコインで50円玉みたいに穴が空いているらしい。街の人は穴に紐を通すことで財布代わりに使ってたよ。それから、こっちが買ってきた乾麺。うどんだって。10食分あるから一人1食ね。」
街に関する報告は簡単に済ませる。今日はこの後、みんなであのプレートを見にいくのだ。
俺がおぶった雪さんに掴まって転移するのだが、さすがに10人も纏わりつくのは難しい。雪さんと二人で2往復した。
みんな揃ったところでプレートを再確認する。
『北の守護者。森より解放されたくば守護者を打ち倒しキーストーンを集めよ。キーストーンはプレートが指し示す位置に埋まる。』
みんな思い思いの感想を述べている。
全員共通の見解は、この台地の上に守護者がいて、守護者を倒さないとキーストーンが手に入らないこと。キーストーンが森から出るための鍵となりそうなこと。「北の」と付くので守護者がいる場所はここ以外にもありそうなこと。
分からないのはキーストーンの埋まっている場所。「プレートが指し示す位置」が分からない。これについては守護者を倒さないと分からないことなのかもしれないので今考えても仕方ないだろう。
うん。森を出るための早い者勝ちには参加しないことにした俺には関係ないな。
だが甘野さんは攻略する気のようだ。
「大和君なら守護者も倒せるでしょう?今すぐ行きましょうよ。」
「いや、俺は行く気はないよ。」
「どうして!?守護者を倒さないとキーストーンが手に入らないんだよ!?」
「俺はキーストーンを必要として無いからね。」
「自分は森から出られるからって狡いよ!」
あ~。またその話か。夕べもしたよね、その話。
狡いって言われてもなぁ。スキルを選んだのは自分自身だろうと言いたい。だが言わずに我慢して美咲さんの顔を見る。目が合うとニコリと笑ってくれた。うん。俺は大丈夫。怒りは湧いて来ていない。冷静に対応できる。
「甘野さんだけに協力しちゃうと他の森から出たい人に狡いって言われるから、甘野さんだけに協力はできないよ。」
「どうして!?仲間でしょう!?」
「今ここにはいないけど、この森にいる元クラスメイトは全員が仲間だよ。」
「ここにいない人のことなんて気にする必要無いでしょう!?」
「いや、それは気にする必要あるでしょう。」
「酷いよ!ううぅ。」
あ、しまった。泣き出してしまった。何処かで間違えたらしい。
美咲さんを見た。俺に向けてニッコリ笑ってくれた。それから美咲さんが甘野さんに向かって諭すように話し出す。
「ここにいないクラスメイトのことをどうでもいいように言うのは甘野さんの方が酷いと思うよ。今は目の前に居ない人にまで気を使えないかもしれないけれど、みんなのことも忘れないで欲しいな。落ち着いたら考えてみてくれる?」
「ううぅ。分かった。」
おぉ凄い!!あの甘野さんが分かったらしい!!
美咲さんにお礼を言いたいが、ここで俺が何か言って話がぶり返すと困る。感謝の念だけ送っておこう。




