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佐藤さんのスキルを考えるための参考に、俺のスキルを説明することにした。
「先に俺のスキルの概要を説明するね。先ずはさっき説明した転移。小石を転送するスキルと、自分の周りで起きた転移に巻き込まれるスキルを組み合わせることで自在に転移できるようにしたんだ。次に【ギャンブル体質】。受けるダメージがHPの下一桁倍になる。下一桁が1なら1倍。9なら9倍。高確率で大ダメージになるからこれもデメリットスキル扱い。次に【大雑把】。HPの一の位が切り捨てになる。HPが減るからこれもデメリットスキル扱いなんだけど、【ギャンブル体質】と組み合わせることで受けるダメージが常に0倍になる。だから俺はHPにはダメージを受けないはず。ここまではOK?」
「分かったけど、分かんない。何でそんなスキルが思いつくの?思いついても取ろうと思わないし、大和君の頭はどうなってるの?」
「それにも理由があってね。といってもそれもスキルなんだけど。最初に取ったスキルが【ボーナスポイント計算】。そのまんま、ボーナスポイントが計算できるスキルなんだ。ボーナスポイントって、スキル取得しないと何ポイント使うか分からないでしょう?そのせいで最初は俺もデメリットスキルなんて考えられなかったよ。でも、事前にボーナスポイントが分かればそれも可能となる。【ボーナスポイント計算】を取るのに100ポイント中の20ポイントも使っちゃったけど、結果として得したと思っているよ。取る前はこれで100ポイントだったらどうしようとドキドキしたけどね。」
「おぉー。何か凄いね。最初に【ボーナスポイント計算】を取るなんて賢い風。」
「賢い「風」かぁ。まあそうだね。賢いと言うより自論に従っただけだから。悩んでも時間の無駄。悩む時は不足している情報に目を向けようってね。」
「おぉ!それも賢い風。でも、ポイントが計算できてもそれでデメリットスキルを取ろうとは思わないとおもうけど。」
「俺も最初は普通に強いスキルを取ろうと思ったんだけどね。というか、試して分かったんだけど、普通にスキルを取得しようと思うとほぼ予定通りにならないよ。俺たちを転移させたのはやっぱり悪魔なんだろうね。例えば「強力な攻撃魔法」が欲しいと言うと、ボーナスポイント100ポイントが全消費されて「強力な攻撃魔法」が取れるんだけど、MP消費が激しくて一日一回しか使えないとか、盛大な爆発が起こって近くに使うと自分の身が危ないとかになるんだ。」
「それは何だか悪意を感じるね。」
「そうなんだよ。でもね。細かく設定してやればそれなりに使えるスキルになる。さっきのも、消費リソースとか、爆発の大きさとかを指定してスキルを取得すればまともなスキルが取得できるんだ。」
「ちゃんとした条件を指定しなかった自分のせいってことか。」
「条件指定と言えばそうなんだけど、制限とも言えるんだよね。自分が取得するスキルに自ら制限を課す。制限によって取得ポイントがどう変動するのか分かっていないとなかなかできないと思うよ。ボーナスポイント100ポイントっていうのは、まあまあ強いスキルが取れるんだけど、最強のスキルは取れないんだ。スキルで無双したいとか欲張ったら直ぐに罠にはまるだろうね。」
「何だか怖いね。」
「だけど佐藤さんには俺がついて、【ボーナスポイント計算】があるから大丈夫。スキルについて分かったことを教えるね。俺は【ボーナスポイント計算】で20ポイント消費しちゃっているから普通なら更に弱いスキルしかとれないでしょう。だから工夫したんだ。それで色々試した結果、ボーナスポイントの計算は単独スキルの効果から計算されていてスキル間の相互作用は考慮されていないことに気付いたんだ。単独では効果が低いスキル程ボーナスポイントが少なくて済む。ましてやデメリットスキルとなると、1ポイントとかで取れちゃうんだ。それに気付いてからはシステムを如何に騙すかって感じになってね。デメリットスキルの掛け合わせで強い効果を作ったんだ。」
「へぇー。凄いねぇ。」
「長くなっちゃったけど、俺の話よりも佐藤さんのスキルを考えよう。デメリットスキルの組み合わせを考えるのも良いけど、単純に強いスキルも良いと思う。どんなスキルとか希望はある?」
「安全に暮らせるスキルが良いな。」
「それは重要だね。衣食住を揃えたいよね。」
「衣食住か。最初に欲しいのは安全な家と食べ物だよね。森だから食べ物は探せば見つかるかもしれないけど、家は無理だよね。」
「うん。家は難しい。特に衛生面を考慮すると難しい。トイレとかお風呂とかね。」
「トイレもお風呂も欲しいよ。家ってスキルで創れるの?」
「物を作る創造系のスキルも取れるんだけど、デメリットスキルで物を創造する方法は思いつかないから、単純に必要な物を創造するスキルになっちゃうかな。」
言えないけど、体内に勝手に物が出来ちゃうとかならデメリットスキルだよな。どうやって取り出すかとか色々問題があるし、そもそも家は無理だな。
「うーん。家となると普通にやっても100ポイントでは足りないなぁ。条件付きで何とか100ポイントに収まらないか考えてみるよ。【ボーナスポイント計算】、・・・」
色々試して良さそうなスキル案ができた。これは効果の高いスキルから徐々に譲歩していって、巧い順番で引き出したお得なスキルになっていると思う。
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スキル名:ホームへの扉
発動条件:スキル名を発声する。
発動対象:自身。
スキル効果:自身の目の前にホームへの扉を設置する。
スキル保持者が中にいる間は消えない。
外で10分経過すると消える。
「ホームへの扉」:縦横2mの両開きの扉。
スキル所持者以外は開けられない。
扉を開けるとホームに繋がる。非破壊。
「ホーム」:スキル所持者が所有する異空間。
扉の中には廊下があり、廊下から更に10枚の扉に繋がっている。
扉の先にはそれぞれ部屋がある。
廊下から繋がる扉はMPを奉げることで解放され、
以降は永続使用可能となる。
1枚目:100MP、2枚目:316MP、3枚目:1000MP、
以降2枚で10倍。
1枚目の部屋は1畳サイズ。2枚目は2畳。以降1枚で2倍。
各部屋及び廊下には100MPを奉げるたびに一つの施設を
追加できる。一度設置した施設は永続使用可能。
施設: 照明、空調(組成「清浄な空気」、常圧を維持)、
可変温調(-20~90℃、湿度0~100%)、
水供給口(温度設定5~95℃)、
廃棄口(投入した物は分解されて外空間に廃棄される)
消費リソース:MP(30ポイント/1回)。
消費ボーナスポイント:100
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部屋や施設を拡張するために必要となるMPを設定することでボーナスポイントを下げることに成功した。施設はガスコンロとかもっと色々詰め込みたかったが、5個が限界だった。色々試した中ではかなり良い方だと思う。
佐藤さんも納得してくれたので【ホームへの扉】を取得して貰った。