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「小田さん。起きて。小田さん。」



小声で呼び掛けた。



「うーん。誰ぇ?」


「俺だよ。クラスメイトの鈴木大和だよ。分かる?」


「大和君?えっ!?大和君!?」


「そう。大和です。」


「どうしてここに!」


「どうやら起きたみたいだね。小田さん、久しぶり。」


「うん。久しぶり。じゃなくて、どうしてここにいるの?」


「スキルだよ。細かい説明は省くけど、人の近くへ跳べるスキル。小田さんもスキルで街まで跳んで来たんでしょう?」


「うん。そうだけど。」


「街の生活はどう?」


「たいへん。この世界は女性蔑視が強いのよ。女性だってだけでまともに取り合ってもらえないことが多くて、仕事が見つからないわ。このままじゃお金が無くなっちゃう。」


「ここは宿屋?お金なんて良く手に入ったね。」


「スキルで街に行ってお金も頂戴ってお願いしたの。でも銀貨10枚しか貰えなかった。」


「銀貨の価値が分からないんだけど。」


「この宿が一泊銀貨1枚。着てた制服を売ったんだけど、それが銀貨20枚になった。」


「食事は一食幾らくらいなのかな?」


「小銀貨1枚くらいだね。小銀貨10枚で銀貨1枚。」



銀貨1枚は1万円くらいかな。宿や一泊が銀貨1枚で1万円。食事1食はその10分の1で千円。だいたいそんな感じだろう。

小田さんはスキルで10万円、制服を売って20万円で、計30万円は手に入れているのだろう。だが見る限りこっちの世界の服は買っているし、宿屋暮らしに食費も掛かる。30万円じゃあ一月も経たずに無くなってしまうだろう。



「物を売ることは出来そうなのかな?俺は森とここを行ったり来たりできるから、森で手に入れた物を持ってきてあげられるけど。」


「分かんない。でも、女だけだと駄目そう。」


「そんなに女性蔑視が強いのか。森を出る意味があるのか迷うな。」


「どうして?大和君は男じゃん。」


「今は一緒に来ていないけど仲間がいるんだ。仲間は女子が多くてね。」


「誰がいるの?」


「佐藤さん、真中さん、飯田さん、ソフィアさん、鈴木華さん、甘野さん、戸田君、橋基君。」


「ふーん。」



興味薄っ。仲のいい子が居なかった時の反応だな。



「朝になったらみんなでこっちに来れるか試していいかな?」


「いいよ。私はここで待ってればいいの?」


「そう。よろしく頼むよ。それから、ちょっと外を見てきてもいいかな?」


「別にいいけど。」


「宿の人に見つかると面倒だから窓から飛び降りようかな。」


「危なくない?」


「多分大丈夫。そのまま森に帰るから、俺が飛び降りたら窓を閉めて寝ちゃってね。」


「明日絶対来てよね。」


「約束する。それじゃあまた。」



窓を開けて足から体を外に出し、窓のふちにぶら下がってから手を離した。ストンと地面に足が着いた。やっぱり2階位の高さなら問題無いな。


街を探索したいところだが、夜なので店などは閉まっている。今、最低限やりたいことは、転移ポイントを見つけておくことだ。小田さんをターゲットにしても良いのだが、小田さんの状況によっては拙いことになるかもしれない。だから小田さんとは別の場所も確保したい。


それにしてもこの街は臭いな。下水が整うまでは東京も臭かったそうだが、この街も下水の整備が遅れているのだろうか。そういえばそこら中にゴミも落ちているな。あまり治安は良くなさそうだ。街に来れたとしても佐藤さんの【ホームへの扉】の中で生活した方が快適そうだ。


転移ポイントとして家と家の間の狭い路地の壁を【マーキング】しておいた。さて、森に帰ろう。


洞穴の岩をターゲットにして転移で戻ると、まだ先ほどの全員がホームに入らずに外で待っていた。



「ただいま。」


「「「「おかえりなさい。」」」」


「寝なかったの?」



俺は先に寝ていいよと言ってから外に出たはずだか、と思ったら七菜さんが答えてくれた。



「大和さんに任せましょうとは言いましたが、寝るとは言ってません。大和さんに任せてばかりだからせめて帰りを待とうと満場一致で決まりました。それに思ったより早かったですね。」


「森の中でクラスメイトを見つけて餌付けする予定が、何故か街に行ってきたからね。餌付けの時間が掛からなかったから早くなったのかも。」


「街ですか?」


「そう。小田さんを【ノミネーションファイブ】で登録したんだけど、小田さんは【街転移】ってスキルで街に転移していたんだ。宿屋で寝ていたところに俺が転移で侵入してきて、起こして少しだけ話をしてきた。街での生活は厳しそうだった。具体的には、女性蔑視が強い社会らしくて仕事が見つからないらしい。今は制服を売ったお金とかでやりくりしているみたいだけど、あと数日しかもたないみたい。でも森よりはましかもしれないから、明日の朝みんなで転移してみるってことでいいかな?」


「大和君凄い!もう森を出られるんだね!」



佐藤さんが喜んでくれている。他のみんなも喜んでいる。でも別に俺の手柄ではない。


小田さんを【ノミネーションファイブ】に登録したのは単なるあいうえお順で最初の生き残りだったというだけなので、完全なる運だ。別に俺が凄いわけではない。

強いて言うなら【街転移】のスキルを取った小田さんが凄い。俺の場合は佐藤さんとの合流を最優先したので選択することは無かった。だがソフィアさんを仲間にした時点ではありだったかもしれない。まあ、小田さんが既に【街転移】のスキルを取っていただろうから、同じスキルは取得できなかっただろうが。


みんなが盛り上がっているのに水を差すような真似はしたくないので、死亡者を二人確認したことは黙っておこう。賢い七菜さん辺りは気付いているかもしれないが、気付いても黙っていてくれるだろう。


色々あり過ぎてかなり疲れた。みんなが落ち着いてきたところで今日は休もうと提案して、ホームに入って眠りについた。



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