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美咲さんは【ノミネーション】で一人でも助けてあげて欲しいと言い、他のみんなも頷いている。異存は無いようだ。
「みんなはもう寝てていいから、俺は外に出て試してくるね。」
「え?待ってるよ?」
美咲さん、嬉しいけど訳あって見られたくないのです。
そこへ七菜さんがフォローに入る。
「私たちでは足手まといになるだけですから、ここは大和さんに任せましょう。」
「ごめんね。それじゃあ。」
みんなに背を向けて洞穴を出た。
さて、【ノミネーションファイブ】を試そう。
誰にするかが問題だが、悩んでも無駄だと開き直る。女子を優先。その中では、・・・あいうえお順にしよう。深く考えないことにした。
「【ノミネーション】、青柳恵紅美。」
『ノミネーション失敗。青柳恵紅美:死亡。』
「え!?」
吃驚した。死んでいる可能性は考えていたからそこまでは驚かなかったが、急に頭の中に声が響いて驚きの声を出してしまった。まさか失敗するとアナウンスが流れる仕様だとは思わなかった。
そうか。青柳さんは死んだのか。もう死んだ人もいるだろうとは思っていたし、だからこそみんなの前でこのスキルを試したくは無かったのだ。こうして実際に知ってしまうと気分が落ち込むな。知らなきゃよかったと思う。これが、知らぬが仏?あるいは、シュレーディンガーの猫?まあ、何にしてもみんなには秘密にしよう。
気を取り直して次の人を試そう。青柳、甘野、飯田、井家田、小田。次は小田さんだな。
「【ノミネーション】、小田余梨。」
おっ。アナウンスが無い。成功か。
「【ノミネーションファイブ登録】。」
「【マップウィンドウ】。」
あれ?小田さんは5km圏内にはいないようだな。そんなこともあるか。
「【ロックオン】、5番。」
「【鳥瞰図】。」
5番、小田さんを中心とした【マップウィンドウ】を表示させた。・・・これは、街?
【鳥瞰図】に表示されたのは人工の建物が密集した街だった。小田さんはもう森を抜けたのか!?
「【ロックオン】、5番。」
「【ステータス】。」
『小田余梨
HP 236/236
MP 326/326
SP 268/286
状態異常:−
スキル:街転移』
スキルを見て納得した。【街転移】のスキルで森から脱出したのだな。これなら救助物資は不要かな。俺たちも小田さんのところに転移すれば森から脱出できるのかな。
「【トランスポート】、5番。」
やってみた。
転移できたな。真っ暗な部屋。窓から差し込む月明かり。ベッドで眠る女性、小田さんだ。
ベッドの他に家具は無く、荷物が一か所にまとめて置かれているだけだ。
窓の外を見る。どうやらこの部屋は2階のようだ。近隣の家はレンガを積んで造られている。暗くて色までは見えない。見える範囲で技術力が必要そうなものは、窓ガラスかな。この世界の人もガラスを作る程度の技術はあるようだ。
さて、どうするか。小田さんを起こしてみるか。夜中に女性の部屋に忍び込んだ格好だ。騒がれるかな。元クラスメイトだと分かれば落ち着いてくれるかな。不安だが、起こさないことには話が進まない。よし、起こそう。