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振られるよりは先延ばし。と思ったのだが、それに飯田さんが異議を唱える。
「美咲さんは大和さんに甘えすぎですよ。私は大和さん無しでこの世界を生きていくことはできないと思っています。最初は能力面からそう思い始めましたが、今ははっきりと好意を持ってそう思っています。美咲さんも同じではないですか?」
「同じかもしれない。でも、七菜ちゃんや雪ちゃんを見てるとそうなんだろうなって思って一歩引いちゃうよ。」
「大和さんは始めから美咲さんを選んでいます。私は雪さんはそれを知っていましたから、諦めるのは私たちでしょう。」
「みんな遠慮するなら私が。」
「華さんは黙っていてください。」
修羅場だ。恐ろしい雰囲気になってきている。場を和ませようとしたと思われる華さんが一刀両断されてしまった。口を挟み難い雰囲気だが、俺のことでもめてるんだし、発言権はあるよね。
「あの、今はみんなが俺を取り合っているというよりも、どちらかと言うと押し付け合っているように見えるけど、もう3人のことは仲間だと思っているから、付き合うとか関係なく守るからね。華さんも付き合いは浅いけど守る対象に入れてるから安心して。」
俺の言葉に飯田さんが一番に反応すると、泣きそうな顔で訴えてくる。
「押し付け合ったりしてません。大和さんのことは本当に好きです。それだけは分かってください。」
「分かった。気持ちは嬉しいよ。ありがとう。」
美咲さんも俺に向き直ると真剣な表情で一言だけ告げてくれた。
「私も好きだよ。」
「うん。分かった。」
雪さんも口を開く。
「私も好き。ここは言っておく流れ。」
「えっと、ありがとう?それは真剣に捉えていいのかな?」
「真剣に捉えて良い。大和、ハーレムだな。」
華さんが便乗してくる。
「ハーレムなら私も入る隙がある?」
「そこは便乗しないで!ハーレムは真中さんの冗談だよ!」
「冗談なの?」
もちろん冗談でしょう、と思ったのだが。
「あながち冗談とも言えない。」
「一考の余地はありそうですね。」
「え?え?」
真中さんと飯田さんは否定せず、美咲さんは困惑中。
「俺に複数の女性を囲う度量なんて無いよ。」
「極論ですが、子作り以外は女性同士でも可能です。大和さんが常に全員を相手にする必要はありません。女性同士が協力し合えばよいのです。」
「本当に極論だね。」
「大和さんには前に確認させていただきましたが、この状況ですので子作りはしないと言ってくれましたよね。避妊具が無いので性行為自体をしないという意味に捉えましたが?」
「その意味で間違いないよ。」
「そうなると、付き合うと言ってもプラトニックなものになります。もちろん肉体的な触れ合いも想定していますが、先ほど言った通り女性同士でも可能です。ここで大切なのは相手のことを思う心だけです。ここに大和さんを思う4人の女性がいます。大和さんも4人を守ると言ってくれました。あとは大和さんが4人を平等に想っていただければプラトニックにおけるハーレムが完成します。4人を平等に大切にしていただけませんか?」
「それはもちろん大切に思っていて、そうするけどさ。話が拙速過ぎないかな。」
「・・・そうですね。少し急ぎ過ぎました。私からすれば「負け確」から仄かに見えた「勝ち筋」でしたので強引になってしまいました。みんなの同意が必要ですね。」
良かった。飯田さんは落ち着いたようだ。
と思ったのに、華さんが燃料を追加してしまう。
「私は賛成!仲間に入れて貰えてるからね!」
まるでこのために飯田さんが「4人」に拘ったかのように思えた。
続いて真中さんも。
「私も賛成。七菜とは全く同じ立場。」
こうなると一度落ち着いたかに見えた飯田さんが勢いを取り戻してしまう。
「美咲さんはどうですか!?遠慮して身を引くよりはみんなで仲良くした方が楽しそうじゃないですか!?」
飯田さん。その聞き方は狡くない?
「ええ?うん、みんなで仲良くできるなら。」
ほら、美咲さんならそう答えるよね。
「あとは大和さんですが。」
「はぁ。分かった。このメンバーは特に大切な人として今まで以上に仲良くする。取りあえずはそこまででいいかな?」
「はい。今日の落としどころとしてはその辺でしょうね。」
落としどころ。これで終了。そう思ったのだが、美咲さんが満面の笑みを浮かべて提案してくる。
「じゃあさ!呼び方も変えようよ!」
「呼び方?」
「うん!私のことは今日から大和君も美咲って呼んでね!」
「ミ、美咲さん。でいいかな?」
「うん!!」
佐藤さん、もとい美咲さんに言われたなら仕方ない。でもなんでそんなに嬉しそうなの?ハーレムの一員にされそうなんだよ?
「じゃあ私も雪で。」
「え?真中さんも?」
「ハナコは名前で呼んでる。」
「華さんは同じ鈴木だから。」
「ソフィアも名前で呼んでる。」
「あー、ソフィアさんはファーストネームか。意識してなかった。」
「だから私も雪で。」
「いや、みんなで仲良くしようとは言ったけど、それってどうなの?佐藤さんどう思う?」
「美咲だよ。」
「ごめん。美咲さん、どう思うの?」
「良いんじゃないかな。仲良しチームで名前で呼び合うの。七菜ちゃんもいいよね?」
「はい。お願いします。これで6人が決まりましたね。」
え?6人?いつの間にかソフィアさんも入っているのか?
ああ、人数制限の話か。飯田さんはまだ気にしていたんだな。森から出られるのは多くて6人って奴。そのメンバーを確定させたってことか。ソフィアさんはこちらから誘ったから人数制限の6人に入れると。
「ほら。大和。呼んでみて。」
真中さんがウザいぞ。
「真中さんがウザいぞ。」
「むっ。」
心の声が漏れてしまったら足を蹴られた。もちろん加減してくれているが、やることが子供みたいだ。子供をからかいすぎちゃいけないよな。
「ごめん。雪さん。呼び名はこれでいいかい?」
「うん。七菜も。」
「そうだね。七菜さんも改めてこれからよろしく。華さんもよろしく。」
「はい。大和さん、よろしくお願いします。」「うししっ。新参者なのに申し訳ない!」
俺、美咲さん、雪さん、七菜さん、華さん、それにソフィアさんで6人。飯田さん、じゃなかった、七菜さんは暗に人数制限があった場合はこの6人を優先しようと言っているのだと思う。人数制限なんて無いかもしれないが、あった場合に何処かで線引きが必要なので決めておいた方がいいと俺も思う。男1人に女5人のハーレムパーティになってしまったが仕方ないか。今まで会った男たちがやらかしたのが悪い。一番まともな戸田君も最初に会った時には完全に人格が変わっていてヤサグレサバイバーになっていたしな。
佐藤さんが拠点から出て10分経ってしまったので扉が消えてしまった。中から見た扉や中の人たちはどうなっているのだろうか。気になる。
気になることは確かめようということで、俺だけ中に転移して様子をみてきた。
「扉は閉まってたよ。中のみんなは気付かずに寝てた。時間が停止したりはしていないと思う。施設も使えたね。あとは、外に扉が設置されていない状態で中から扉を開けたらどうなるかが気になるね。美咲さんしか開けられないから二人で行ってこよう。」
結果、扉は開かなかった。接続先が無いから開かないのだろう。
「今、中の人は完全に監禁されて脱出不能だね。」
「甘野達をこのまま放置?」
雪さん、何怖いこと言ってるの。まあ俺が言い出したんだけど。
「いや、しないけど。ところで実は、まだ人を見つけられるかもしれないんだよね。もう大分夜も遅いけど、この際だから試そうかと思うんだけど。」
俺の提案に七菜さんが直ぐに気が付く。
「【ノミネーション】ですね。」
「流石。よく覚えていたね。そう。俺の【ノミネーションファイブ】ってスキルで、あと一人だけ登録できるんだよね。試してみていいかな?」
俺がみんなに向けて問いかけると、美咲さんが答えてくれた。
「うん!お願い!助けられるなら助けてあげて!」




