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華さんが食事をしている間にアニメを見せて貰おうと思い、その場に横になって上空のモニターを見上げた。シーンは主人公がヒロインの湯浴みを覗いているところだった。ちょっと女子の前で見るのは恥ずかしいシーンだ。照れ隠しに寝っ転がりながら華さんに話しかける。
「このアニメは華さんのスキルで映し出しているんだよね?一日に何時間くらい映し出せるの?」
「もぐもぐ。んぐっ。1回3時間。3回連続はいけたけど、4回は無理だった。もぐもぐ。」
MPが3回分で限界ということかな。だとすると1回100MP位か。1回3時間で3回連続だと9時間か。一度はそれを試しているということだよな。この森の中に放置された状態で何もせずに9時間動画視聴してたってことだよな。振り切ってるなぁ。
「見るのはアニメ専門?」
「もぐもぐ。映画、ドラマ、アニメ、料理番組、歌番組、バラエティ、見放題。著作権無視して申し訳ない。」
華さんのスキルは【動画見放題】だったな。見放題は視聴時間じゃなくて視聴コンテンツの方に掛かるのか。
「うぎゅー。」
華さんが変な声を出しながら蹲った。
「大丈夫?どうしたの?」
「空きっ腹にいきなり詰め込んでお腹が痛くなったみたい。うぎゅー。」
「その「うぎゅー」は痛いって意味なのかな?」
「うう。ちょっと横になる。」
華さんは俺の横に寝転んだ。二人で並んで寝転がってアニメを見ている形になる。夜風が気持ちいい。華さんの調子が戻るまで黙ってアニメを見ることにした。
しばらくすると華さんは復活したようだ。
「お騒がせいたしました。」
「いえいえ。こちらこそ隣で苦しんでいるのにのんびりアニメを見ていただけで申し訳ない。」
「大和君もアニメ好き?」
「あー、うん。ジャンルによるけど好きだよ。これは比較的好きなジャンルだね。」
「私、これしかスキルが無いの。」
「うん。良いスキルじゃないかな。自分の中の優先順位をしっかりと考えた結果でしょう?」
「そうだったんだけど、餓死は想像よりも辛かった。見たい物が見れないなんて生きる価値無いとおもったけど、死にそうになってやっぱり死にたくないって後悔した。」
「衣食住が揃っての娯楽だものね。でも、娯楽無しで生きるのも辛いよね。」
「一昨日、山田君に会ったけど、スキルが使えないからって見捨てられたの。」
「ああ、山田君は衣食住が揃って無いんだろうね。」
「大和君は見捨てないの?」
「俺は衣食住が揃ってるからね。良かったらだけど、華さんも俺たちの拠点に来ない?」
「私、役立たずだよ?」
「出来ることを手伝ってくれて、時々みんなが見たい動画を見せてくれたらいいよ。」
「惚れてもいい?」
「それは駄目かな。拠点に好きな人が待っているから。」
「マジ?誰?誰?」
「急に身を乗り出して、恋バナ好きかよ。」
「女子はみんな恋バナ好きだよ!デブでも関係ない!」
「自分でデブって言った!俺の頭の中では太目とかマイルドな表現を心掛けてたのに!」
「デブはデブだよ!自覚有り!それより誰?」
「佐藤さん。告白して返事待ち。」
「大和君面食いだね!佐藤さん可愛いもんね!」
「性格もいいでしょう?」
「性格は知らん。デブにも優しいのは知ってるけど、あれは生まれつき持てる者の余裕だね。逆に生まれつきは持っていなくて努力で綺麗になろうとしているやつは努力していないデブを蔑む。結論、デブを蔑むやつはすっぴんブス。」
「そんなことないと思うけど。大分脱線したね。それで、俺たちの拠点に来る?事前に教えておくと、拠点にいるのは、佐藤さん、飯田さん、真中さん、ソフィアさん、甘野さん、橋基君、戸田君、井家田さん、ゴブ吉。」
「ゴブ吉って誰!?」
「甘野さんの【強制使役】スキルで使役されたゴブリン。」
「それ、メンバーに入れる必要あった?あったか。知らずに見たらパニックだね。事前に教えてくれてありがとう。自己完結。」
「メンバー聞いて、どう?」
「行きたい。良かったら置いてやってください。」
「それじゃあおんぶしようか?。」
「え?おんぶ?いや、私重いから自分で歩くよ。」
「俺のスキルで、おんぶすれば一緒に転移で帰れるんだ。」
「転移?マジで?」
「マジで。それとも歩く?結構遠いよ。」
「おんぶでお願いしまっす!」
川の傍の岩を【マーキング】しておく。
そして華さんを背中に背負い、拠点の岩をターゲットにして転移した。




