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異世界4日目。


今日も俺は真中さんと一緒に北へ探索する。

だが昨日と違うのは、朝だけソフィアさんを連れて行くことだ。昨日置いてきた象型モンスターの死体で【錬金術】を試すためだ。


俺が真中さんをおぶり、ソフィアさんが真中さんの肩につかまったところで転移を開始する。


「【トランスポート】、60番。」



俺の手の平に小石が現れ、直ぐに60番に【マーキング】してある昨日の探索地点の木の近くへと転移する。その転移に俺が【転移巻き込まれ体質】で巻き込まれて転移し、俺におんぶされていることで俺の持ち物と認識された真中さんも一緒に転移する。そして真中さんの【転移対象拡大】により、真中さんに触れているソフィアさんも一緒に転移する。

ややこしい。ようするに、転移した。



「ユキ!凄イネ!!」


「えへん。」



ソフィアさんは転移で大喜びだ。真中さんは腰に手を当て胸を張り誇らしげにしている。コミカルな動きが可愛い。だが転移した小石で、俺と真中さんは巻き込まれただけなのだが。


それよりも、昨日置き去りにした場所にゾウの死体が無い。



「ソフィアさん。ごめん。象の死体が無くなってる。」


「Oh!残念ダヨ。」


「確か昨日はここに置き去りにしたんだけど、跡形もないね。どういうことだろう。」


「モンスターに食べられた?」


「真中さん、モンスターは内臓が無いから食事はしないんじゃないかって話したでしょう。ゴブ吉も何も食べないし。それに、食べたにしては食べかすだとかが一切無くて綺麗過ぎないかな。」


「ミステリー。」


「そうだね。不思議だ。ソフィアさんは折角来てもらったのに無駄になっちゃったね。送り届けようか?」


「私モ、探索シマス。」


「え?そう?じゃあしばらく一緒に行こうか。」


「ハイ!」




予定を変えてソフィアさんを含めた3人で探索を開始した。

基本的には昨日と同じく北を目指す。【鳥瞰図】で見ると、前方に妙な地形があることが分かった。4kmほど先だが、綺麗な円形の台地があるようなのだ。半径は500m位ありそうでかなり大きい。真中さんとソフィアさんにも【鳥瞰図】を見せたが、確かに変な地形だということで、一旦そこを目指すことにした。



本日最初のモンスターは、定番の人型モンスター、ゴブリンだった。5匹のゴブリンに先にこちらに気付いてしまい、ギャアギャア言いながら駆け寄ってきていた。



「二人は下がって!」


「【マーキング】、30番。」

「【ロックオン】、30番。」

「【自滅スキル発動】。」


「【マーキング】、31番。」

「【ロックオン】、31番。」

「【自滅スキル発動】。」


「【マーキング】、32番。」

「【ロックオン】、32番。」

「【自滅スキル発動】。」



近付かれるまでに処理できたのは3匹だけ。2匹に近付かれ、棍棒を振るわれる。1匹の攻撃は避けたが、もう1匹の攻撃は避けきれず、左腕で受けた。痛いが我慢だ。

攻撃を受けた方のゴブリンに前蹴りを当てて距離を取る。



「【マーキング】、33番。」



もう1匹の攻撃を避けてから足を掛けて転ばせる。



「【ロックオン】、33番。」

「【自滅スキル発動】。」



よし、あと1体。



「【マーキング】、34番。」

「【ロックオン】、34番。」

「【自滅スキル発動】。」


「よし、後は止め刺すだけだ!もうちょっと待ってね!」



真中さんとソフィアさんはその場に待機させて、倒れたゴブリンの頭を棍棒で殴り、止めを刺した。



「ソフィアさん。こいつらを素材にして魔晶石ができるか試そう。」


「ハイ!【魔法陣構築】。」



みんなで協力して5匹の死体を引きずって魔法陣の上まで運んだ。



「【錬成薬解析】。ヤッタネ!魔晶石デキルヨ!」


「おお!作ってみて!」


「ウン。【錬成】、魔晶石。」



魔法陣の光が強くなりゴブリンの死体を包み込んだのち、光が収束していく。魔法陣の上に残ったのは黒い小石1つ。



「恐竜の時より小さいね。」


「Monster、モット欲シイヨ!ヤマト、オ願イ!」



ソフィアさんが少し屈んで俺の腕に抱きつき、上目遣いで見てくる。あざとい。



「お願いされなくても俺もMP回復薬は欲しいからモンスターを倒したら声を掛けるよ。」


「ヤッタ!ユキ!ヤマト、強クテ格好イイネ!」


「うむ。大和はなかなかやる。でも美咲のだから取っちゃ駄目。」




褒められているのだろうが、あまり嬉しくない。「頭がいいね」と言われた時の気持ちに似ている。

実際に俺は人類の平均よりは「頭がいい」側だと思うが、もっと上の人が沢山いることを知っている。謙遜でも何でもなく、俺はその言葉を真に受けて喜ぶほど馬鹿じゃないぞ、と思うのだ。だが、そんなことないと言っても意味が無い。何せ相手は純粋に褒めてくれているのだから。俺にとっては「頭がいい」よりも、「好感が持てる」とかの方が言われて嬉しいのだ。

「強くて格好いい」も俺にとって同じなんだろうな。俺の強さは、チートと呼んでよいくらい狡いスキル構成によるものだ。剣を持って正面から相手を捻じ伏せるような強さは無く、自分を強いなんて誇れるはずがない。それに正直な話、格好良くはないと思う。

純粋に褒めてくれているのは分かるけど、素直に受け止められないからむず痒く感じるのだ。



二人の褒め言葉は曖昧な返事でやり過ごし、探索を再開する。引き続きソフィアさんも同行している。


HP回復薬用の草は2種類ともよく見かける。MP回復薬用の葉っぱも木を見つけたので大量に収穫できた。収穫物は飯田さんに【創造スキル寝具】で創ってもらったシーツに包んで持ち運んでいるが、結構な量となってきた。真中さんに「サンタクロース」と言われた。



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