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「大和君、お疲れ様。」
拠点に戻ると早速、佐藤さんが俺の労をねぎらってくれた。
佐藤さんは手にナイフを握っており、木を削っていた。あれは、便座を作ろうとしているのだな。
「佐藤さんも頑張っているみたいだね。木材からの削り出しは根気がいるでしょう?」
「釘とかが無いから組み立てる方が難しそうで、削り出しに挑戦してるんだけど、もう手が痛いよ。」
「飯田さんのMPに余裕ができたら手袋を作って貰うといいよ。確か【創造スキル迷彩服】で作れるから。」
水や調味料、調理器具、寝具に衣服といった様々な物が飯田さんのスキルだよりになっている。優先順位が高い物から順に創って貰っているが、MP不足で間に合っていない。
「七菜ちゃんもMPがもっとあればって言ってたよ。そうだ!ソフィアちゃんが回復薬が作れたって言ってたよ!大和君にステータスを見て効果確認して欲しいんだって!」
「おぉ!それは是非試したいね!」
「でも先に夕飯だね!七菜ちゃんがさっきもうできるって言ってたよ。大和君が狩ってきてくれたお肉がメインだって。いつもありがとう。」
佐藤さんの言う通り、直ぐに飯田さんたちができた料理を運び入れてくれて夕食となった。メインディッシュは象型モンスターの足肉のステーキ。真中さんが採ってきた野草も添えられている。
「「「「「「「いただきます。」」」」」」」
全員そろっての夕食。
象型モンスターの足肉は不味くはなかった。脂は多いのだが旨味は弱く、まあまあの味。食材はいまいちだが、照り焼きソースで濃い目の味付けにしてくれるので美味しく食べられる。しかし、
「この味はご飯が欲しくなるね。」
みんなも同じ思いのようで、深く頷いている。白米が恋しい想いはみんな一緒だった。若干しんみりしてしまった。
そこで真中さんから新たな指令が下された。
「大和隊員は米も探すこと。」
「ラジャー!って、俺は何の隊員?」
「大和異世界探検隊?隊長大和。隊員無し。」
「わぁ、点呼が簡単でいいね!って言うと思った!?」
「うむ。大和なら一人で大丈夫。」
「俺が隊長なら隊員は真中さんだからね。明日も探索に同行して貰うから。」
「くっ、無念。」
「まぁ、本当に嫌なら考えるけどさ。体力的に厳しいなら休憩の頻度とかも考えるし。実際のところ、何が嫌かな?」
「・・・。日焼け?」
「ソフィアさん、日焼け止めの開発お願いします。」
「OKデス!」
うん。ご飯のことでしんみりした雰囲気が真中さんのお陰で和んだ気がする。良かった。
食後はソフィアさんによる【錬金術】の研究成果が発表された。
ソフィアさんが最初に取り出したのは透明なビーカーだった。
「ビーカー。洞窟ノ石デ、作レル。七菜ノ調味料ヲ入レタヨ。」
「石でできるのか。石に含まれる酸化ケイ素から作れるのかな。成分を分離するだけでも大変なのに、こんなに綺麗に成形までできるなんて、スキルって便利だね。」
「転移ノ方ガ物理法則ヲ無視シテル。」
「はははっ、確かに。この世界で物理法則を考えても意味が無いね。石を材料にするとビーカーが出来るってことだけ覚えれば十分だね。」
「試験管、フラスコ、モデキルヨ。」
「ガラス器具なら何でもできるのかな?」
「容器限定ダヨ。」
「そうか。そういうスキルだったね。」
「木デ、Stopper、作レタヨ。」
ソフィアさんが取り出したのは木でできた捻じ込んで嵌める試験管の栓だった。栓も容器扱いで作れるということか。
続いてソフィアさんが取り出したのは2本の試験管だ。それぞれ赤と青の液体が入っている。
「赤ガHP回復薬、青ガMP回復薬ダヨ。」
「飲み薬かな?」
「赤ハ、皮膚カラモ吸収スル。」
「つまり振りかけても良いってことかな?」
「YES。実験シタイ。大和、ステータス、シテ下サイ。」
「了解。被験者は今日戦闘で怪我した戸田君でいいのかな?」
戸田君は強張った顔で頷いた。顔色からは緊張が伝わってくる。得体の知れない薬だもんな。怖いよな。でもこれまでの体験でスキルの凄さは十分に実感できたから、問題無いと思う。
「戸田君。スキルで作ったものだから大丈夫だよ。スキルの凄さは分かるだろう?」
「そうだね。大丈夫、やってくれ。」




