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ソフィアさんのスキル【錬金術】は、魔法陣上に置かれた物を素材として薬品を錬成できる。その際、魔法陣上に置かれていた素材は全て消費される。つまり、魔法陣の上に恐竜を移動して錬成して貰えば恐竜の死体は消えてなくなるのだ。

とは言え恐竜は重かった。みんなで協力して何とか魔法陣の上に載せることができた。外に運び出すよりは何倍も楽ができた。



早速ソフィアさんにスキルを起動してもらう。



「【錬成薬解析】。魔晶石ガデキルヨ。」

「【錬成】、魔晶石。」



魔法陣の光が強くなり恐竜の死体を包み込んだのち、光が収束していく。恐竜の姿は無くなり、魔法陣の上に残ったのは黒い小石だった。



「ソフィアさん、これが魔晶石?魔晶石ってどんな物なの?」


「飲ム薬ダヨ。MP回復。飲ミ過ギルト破壊衝動ダッテ。」


「はい?この石を飲むの?しかも飲み過ぎると破壊衝動って。」


「削ッテ、粉ニシテ、飲ム。」


「あー、なるほど。でも飲んじゃ駄目でしょう。」


「ソウダネ。ハハハハッ。」



何かがソフィアさんのツボに嵌ったらしく笑い出してしまった。

この石は危険だから厳重保管だな。




さて、大物が片付いたところで今後について話し合おう。

外から光の差し込む洞穴の入口付近まで戻り、思い思いの場所に腰を下ろした。

何となく俺が司会進行を務める雰囲気だった。みんなが俺に注目していることを確認してから口を開く。



「今後について話し合いたい。でもその前に、戸田君に話しておきたいことがあるんだ。昨日の扉は覚えているよね。」


「うん。」


「あれ、実は佐藤さんのスキルで作った異空間の扉だったんだ。実は俺は知ってたんだけど、あの時俺には戸田君が佐藤さんの家の前で出待ちするストーカーのように見えたんだ。不審に思って話しかけたらさっきまでのやさぐれサバイバーモードだったから、これは駄目だと思って扉から遠ざけたんだ。」


「やさぐれ・・・。」



しまった。思いの外「やさぐれ」が戸田君の心に刺さってしまったようだ。



「騙すようなことをしてごめん。」


「いや、いいよ。やさぐれていた僕が悪いんだ。大和君の判断は正しいよ。」



完全に「やさぐれ」を気にしてるぞ。触れないでおこう。



「他の人には戸田君に会ったことを秘密にしていたんだけど、飯田さんだけは知っていてね。飯田さんが戸田君のことを気に掛けていたみたいだから、戸田君の様子を見ることにしたんだ。それで跳んできて、ここにやってきたってわけなんだよ。」


「そうだったんだね。飯田さんありがとう。」


「違います。私が悪いんです。」


「飯田さん。私が悪い、俺が悪いって言い出しちゃうと収拾つかないから、謝罪したいならここはごめんなさいをしよう。」


「そうですね。戸田さん、見捨てるような真似をしてごめんなさい。」


「僕がやさぐれてたから悪いんだ。それよりも気にかけてくれてありがとう。」



気にしている。確実に気にしている。でもスルーだ。ごめんよ戸田君!!



「戸田君には悪いけどその件は置いておいて、今後について話し合おう。重要な議題はこの洞穴について。雨風を凌げる環境というのはとても重要だ。早い者勝ちで言えばここは戸田君が見つけた場所だよね。」


「そうだけど、みんなでモンスターを倒したり片付けたりしたんだから、みんなのものだと思っているよ。」


「ありがとう。それじゃあここはみんなで利用する前提で話をしよう。みんなは仲間の人数制限についてどう思っているかな?一人ずつの考えを確認しておきたい。

先ずは俺からだけど、チュートリアルで言っていた「森から出られるのは多くても6人」というのは、実際にそういう人数制限があるんだと思っている。生き残った6人だけが外に出られる生存競争。外に出ることを目標とするなら僕たちはライバルであり、人数を減らすために殺し合うこともありうる。だから不用意に仲間を増やすと後で後悔すると俺は思っていた。」



俺はそこで話を打ち切る。

場を沈黙が支配する。討ち破ったのは飯田さんだった。



「・・・。終わりですか?話に続きがあるように聞こえましたが。」


「あるけど、それはみんなの考えを聞いてからで。」


「そうですか。では次は私が。私は基本的に大和さんと同じ考えです。ここに来た時の状況から考えても、これから私たちには悪魔の所業が待ち受けていると考えて良いと思います。ですが、そうと思わせて争わせておいて実は関係ありませんでしたという方が、生き残った人も苦しむのでより悪魔らしいと思います。ですから不確定な情報に踊らされず、そうだと分かるまでは手を取り合うべきなのかもしれません。」



争わせておいて実は人数制限が無い方が悪魔らしいか。面白い意見だ。

飯田さんは話し終えると次を促すように佐藤さんを見た。

佐藤さんは笑顔で話し出す。



「私は難しいことは考えずにみんなで手を取り合えたらいいと思うよ。みんなで協力すれば悪魔も倒せちゃうかもしれないしね。次は雪ちゃん。」


「人数制限はありそう。必要になった時に優先順位を間違えなければ良い。ソフィア。」


「私ハ分カラナイ。日本語難シイ。」



佐藤さんは「悪魔も倒せちゃう」か。ある意味、一番大局を見た意見かもしれないな。敵は悪魔であり、競わされるクラスメイトでは無いとも言えるよな。

真中さんはその時になったら優先順位をつけて切り捨てるという、一番ドライな意見かもしれない。

ソフィアさんは、まあ、しょうがない。今の議題は人数制限。チュートリアルで言っていた「多くても6人」のニュアンスをどう捉えるかだ。日本語のニュアンスの議論にソフィアさんが参加するのは難しいだろう。


続いて戸田君が発言する。



「人数制限は考えてなかったけど、協力し合わないと生き残れないと思う。自然を舐めちゃいけない。」



戸田君は自然の脅威を語っている。流石はやさぐれサバイバーだ。

駄目だ!笑っては駄目だ!



「私は人数制限なんてないと思う。それと、ケダモノは発言権無し。」



甘野さんは人数制限無し。橋基君は発言権無しか。一応これで意見が出揃ったな。



「橋基君はあれだけど、意見を一通り聞けたのでありがとう。主流の意見としては、人数制限があることが確定するまでは争わないで協力しあうってことでいいかな?俺が最初に言わなかったのもそれだから。」



みんなが頷く。

そうだよな。昨日まで同じ教室で学んでいた者同士で殺し合おうなんて、簡単にはならないよな。そういう設定の漫画とか読んだことあるけど、あれは異常者がクラスに混じっている設定だから成り立つんだよな。

俺がまだ会っていないクラスメイトの中に異常者がいる可能性も捨てきれないが、とりあえず今後はクラスメイトには友好的に接する方針としよう。


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