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僕らが肉を堪能していると、匂いにつられたのか人がやってきた。面倒だな。
特に隠れもせずに近寄って来るので遠慮なく調べさせてもらおう。
「【マーキング】、21番。」
「【ロックオン】、21番。」
「【ステータス】。」
『橋基彰
HP 151/359
MP 183/245
SP 102/338
状態異常:使役
スキル:聖剣召喚』
HPから戦った形跡が見られる。モンスターとかな。スキルは【聖剣召喚】か。聖剣がどのようなものかが分からないが、HPの減り具合を見る限りモンスターに対してある程度は戦えるが楽勝とまではいかないといったところかな。
それよりも問題は状態異常だ。使役持ちのモンスターにやられたというよりは、使役スキルを取得したクラスメイトにやられたとみたほうがいいだろう。
「やぁ、佐藤さん達も無事だったんだね。急にこんなことになったから心配したよ。」
橋基君は近寄ってくると、明らかに佐藤さんだけを見ながら話しかけて来た。別におかしな事ではない。俺たちの中で最も社交的で話しやすいのが佐藤さんだからだ。
佐藤さんは橋基君と親しげに会話を始めた。飯田さんもサポートしている。会話は任せて俺は俺の出来ることをしよう。
「【マップウィンドウ】。」
使役持ちのクラスメイトが近くに隠れているはずだ。マップで探し出す。
マップを拡大して橋基君がきた方向を探すと伏せているらしき人影を見付けた。結構近いな。不意打ちでダッシュで近付けば伏せているみたいだし捕まえられるな。
さり気なさを心掛けながら立ち上がると、みんなに声をかける。
「ごめん。ちょっとトイレ。」
「あっ、ちょっと待ってね。」
佐藤さんが【ホームへの扉】を準備しかけたが、飯田さんが制した。
佐藤さん、トイレのためだけにホームを出そうとしてくれたんだよね。ありがとう。
飯田さん、ホームの事はまだ知られたくないから止めてくれたんだよね。ありがとう。
「大和さん。お気を付けて。」
「うん。」
飯田さんに掛けられた声に頷きつつ、隠れているだろう方向とは違う方向に数歩進む。そして突然向きを変えてダッシュした。
居た。
慌てて隠れようとしたのか、草むらに頭を突っ込んでいるが、体が隠れていない。
「【マーキング】、22番。」
「【ロックオン】、22番。」
「【ステータス】。」
『甘野由利
HP 289/289
MP 335/335
SP 202/238
状態異常:−
スキル:強制使役』
甘野さんか。スキルは【強制使役】。これが橋基君の使役状態の原因だな。名称からするとモンスターも対象にできそうだな。だが効果が強い分、発動リソースか発動条件がきつそうだ。隠れていたあたりからも、俺たちを問答無用で使役したりはできないだろう。そんなに警戒しなくても良さそうだ。
「甘野さんだよね。隠れていたから何者かと思っちゃったよ。出てきてみんなのところで情報交換しようよ。」
甘野さんは観念したのか立ち上がると、こちらに歩み寄ってきた。
「ごめんなさい。隠れていたのは警戒してのことなの。別に悪意は無かったの。」
「とりあえずあっちで。」
甘野さんを促してみんなのところに戻った。