17
異世界転移2日目の朝。目覚めた。
体が痛いし寒い。床に直寝はきついな。
他のみんなはというと、飯田さんがもう起きていたようだ。佐藤さんも真中さんもまだ寝ている。ソフィアさんはマットレスから落ちて床で大の字だ。豪快だな。スカートがはだけてパンツ丸出しじゃないか。見てはいけない。
俺が起きたことに気が付いた飯田さんが歩み寄ってきて隣に座った。
「おはようございます。ちょっとくらい見ても良いんじゃないですか?」
「ええ?まじまじと見てたら軽蔑するでしょう?」
「あそこまで丸出しにされると女性でも目が行ってしまいますよ。男性が見てしまうのは仕方ないのではないでしょうか。」
「でもそこを拙いと思って見ないようにしてあげる男性の方がいいんだよね?」
「まあそうですね。」
「じゃあやっぱり見ません。」
「美咲さんが起きるまでは見ていたらいいのではないですか?」
「いや、俺は飯田さんからも好かれたいよ。佐藤さん以外はどうでもいいなんて思ってないからね。」
「そうですか。でも、あんなのをいちいち気にしていたらこれから女性4人との共同生活なんてできませんよ。」
「飯田さんがみんなにズボンを創ってくれればとりあえずパンツ問題は解決するでしょう。」
「ふふっ。パンツ問題ですか。由々しき問題ですね。ああ、美咲さんが起きましたね。パンツ問題について共有しておきます。」
「ちょっ、止めて。」
飯田さんは何も答えずに立ち上がると美咲さんの元へと行ってしまった。俺は女子の方を見ないように壁を見続けるしかない。
「おはよう。」
佐藤さんの声だ。歩み寄ってきた佐藤さんを見上げる。寝起きも可愛い。
「おはよう。」
挨拶は大切だ。しっかりと返しておいた。
「時計が無いと不便だね。今何時何だろう。」
「時計かぁ。実は時計ってスキルも考えたんだよね。ボーナスポイント5ポイント。優先順位を考えると取れなかったよ。」
「それは仕方ないよね。時間は分からないけどもう朝だと思うから、そろそろみんな起こすね。」
「うん。起こすのは任せるよ。俺は少し体操して体をほぐしておくよ。」
床で寝て固まった体をほぐしておきたい。
体操していると女子たちの楽しそうな声が聞こえてきた。真中さんは大分寝起きが悪いようで、起こそうとする佐藤さんと飯田さんに抵抗していたようだった。
みんなが起きて集合したので本日の方針について話し合った。
「先ず、佐藤さんは扉を召喚するだけのMPを残して、ホームの拡張をする。最優先はもう一部屋の整備。飯田さんもMPギリギリまで創造スキルで必要な物を創ってホームに仕舞っておく。それらが終わったらみんなで拠点を出て周囲を探索する。最優先は食べ物で、次点で薬品用の素材探し。何が素材になるから分からないから手当たり次第になるね。モンスターに遭遇したら俺が戦うから他の人は狙われないように後ろに下がること。数が多くて囲まれるような時は佐藤さんが扉を召喚してみんなで中に逃げる。その時、俺がしんがりを務める。俺は転移で逃げられるから俺は置いて扉を閉めちゃっていい。クラスメイトに遭遇したら、友好的なら話を合わせておく。敵対的ならモンスターと同じ対応をする。まとめるとそういうことでいいかな?」
「うん。」「了解。」「はい。」「アイ・・・。」
それぞれが返事をしてくれた。ソフィアさんだけ「I~」と言っていたのは分かるが、後半は聞き取れていない。顔を見るに、了解してくれていると思う。
佐藤さんと飯田さんがMPのほとんどを使い切った。部屋の拡張はまだ。MPは分割払いが可能なので自然回復で貯まったら再び挑戦する。飯田さんは迷彩服を優先して女子全員が迷彩服に着替えた。俺だけまだ制服のままだが、元々ズボンなので活動に大きな支障はない。
扉の外に出た。
辺りを見回す。モンスターもクラスメイトも見当たらない。
「それじゃあ探索開始!」
「おぉー!」
佐藤さんだけが拳を突き上げて答えてくれた。優しい。