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うーん。転移はいつも唐突。ちゃんと全員一緒に転移できたようだ。

えーと、ソフィアさんは、木にもたれかかって寝ているな。

ソフィアさんは金と茶の間くらいの髪色で、綺麗なストレートのロングヘア。肌は白く、彫りが深い。服装はみんなと同じ制服を着ている。それが森の中で寝ているという極めて特殊な状況だ。



「寝てるね。凄いな。何処でも寝られるんだね。」


「これを見てください。」



飯田さんが近くの地面に松明を向けた。

果物の芯だな。食べたのか。食べかけもあるな。黒くてごつごつした実だ。俺なら食べるのを躊躇するな。もしかして毒で気を失った!?



「鑑定する。降ろして。」



真中さんをおんぶしたままだったので地面に降ろすと、真中さんが果物の鑑定を始めた。



「【食物鑑定】。うん。食べられる。甘い。」



真中さんの鑑定結果では食べられるらしい。なら寝ているだけか。



「起こそうか?」


「そうだね。」



佐藤さんが応えてから、ソフィアさんに近づき肩を揺すった。



「ソフィアちゃん。起きて。」


「ンー、ファニャニャ。」



ソフィアさんが起きて何か言った。聞き取れない。俺は英語のリスニングが苦手だ。



「何て?」



小声で真中さんに聞いてみた。



「寝ぼけて誰だって聞いただけ。」


「おお、真中さん英語が聞き取れるんだ。」


「得意ではない。大丈夫。ソフィアは日本語話せるし、美咲と七菜が英語も得意。難しい話は二人に任せればよい。」


「なるほど。」




佐藤さんと飯田さんの二人がソフィアさんを起こして事情を説明してくれた。基本的には日本語で、込み入った話は英語で話していた。英語の部分は全くさっぱり分からなかった。俺も筆記試験なら点数は取れるので英語という教科自体は苦手ではないのだが、どうも耳が駄目らしくリスニングはできない。きっと、ソフィアさんの日本語も同じような感じなのだろう。


話をある程度聞き終えた佐藤さんが教えてくれた。



「ソフィアちゃんはやっぱりチュートリアルが聞き取れなかったみたい。でも映像から異世界にきたことは理解していたよ。日本語として習った言葉ならある程度聞き取れるけど、やっぱりカタカナ英語が全く聞き取れてないみたい。知っている日本語から似た響きの言葉を探したりして考えていたみたいなんだけど、エイチピーとか、スキルとかが全く理解できてなかった。」


「そっか。その辺は日本語が分かっていても非常識過ぎて理解しにくいもんね。」


「それで、七菜ちゃんがソフィアちゃんのスキルをどうするか一緒に考えてくれてるんだけど、二人の意見では創薬系のスキルが良いんだって。」


「創薬?ポーションを作ったりとか?」


「多分そうだと思う。」


「うーん。もうちょっとよく話を聞きたいところだけど、とりあえずホームに入ろうか?」


「あ、そうだね。ここでいい?」


「できれば目立たないところが良いけど、とりあえず今はここでいいか。」


「そうだね。それじゃあ、【ホームへの扉】。」



幅2m、高さ2mの扉が現れた。突然こんな大きな物が現れるのだからスキルって凄い。

ソフィアさんが興味津々に近付いてきて扉を触りながら何か話している。飯田さんと佐藤さんが説明してくれているのでお任せだ。


説明を終えたのか、佐藤さんが扉を開いて中へと入った。みんなも続いて行く。俺も入ろう。松明の火は消しておいた。




ホームに入るとソフィアさんが話しかけてきた。



「扉ガ一杯ダネ。」


「開かない。まだ。一つだけ。」


「なぜ大和が片言?」



真中さんに突っ込まれた。



「長文より短文の方が分かり易いかと思って。」


「大丈夫。ゆっくり話せばソフィアは分かる。」


「ゆっくりね。分かった。」


「ヤマト。skillヲ調ベテクダサイ。薬ヲ作リタイデス。胃薬、日焼止メ、鎮痛剤、消毒液、虫除ケ、ナドガ作リタイデス。」


「ああ、薬ってそういう感じのね。HP回復ポーションとかかと思ったよ。ちょっと待ってね。考えてみる。」






かなりの時間を掛けてソフィアさんと相談しながら色々試したけど、創薬スキルは難しかった。

先にまだポイントを残している真中さんのスキルの取得を済ませると、本腰を入れて検討を開始した。


「胃痛が治る薬」とかの効果の概念を持たせた薬は創造スキルで作れるが、消費するボーナスポイントが大きく、2~3種類で100ポイントに達してしまう。

「水酸化マグネシウム」などの物質名でも創造スキルは作れるが、その物質の適用範囲や用法、用量が分からないので意味がない。

もういっその事、「万能薬」を創ってはどうかと思ったのだが、日焼け止めだとかも作りたいというソフィアさんの希望とは若干異なってしまう。


発想を変えて、無から有を生む創造スキルではなく、材料を集めて薬に変える錬金でいくことにした。




--------------------

スキル名:錬金術

発動条件:

     ①「魔法陣構築」と発声する。

     ②魔法陣を構築した状態で、「錬成薬解析」と発声する。

     ③「錬成」と発声後、名称を発声する。

発動対象:

     ①自身。

     ②魔法陣上の素材。

     ③魔法陣上の素材。

スキル効果:

     ①自身の右手人差し指を中心に、地平面に平行な魔法陣を

      構築する。魔法陣は直径1m。有効時間1時間。

     ②魔法陣上に置かれた素材から錬成できる錬成物のリストが

      視界に文字情報として浮かび上がる。

      魔法陣上に錬成物がある場合はその効能・用法・副作用が

      文字情報として浮かび上がる。

      錬成物:薬品(各種回復薬、医薬品、毒薬、化粧品類

          、生活用薬品)及びその容器。

     ③指定した名称が錬成物リストにある場合、魔法陣上の素材

      全てを消費して指定の物を錬成する。

消費リソース:

     ①MP(30ポイント/1回)。

     ②MP(1ポイント/1回)。

     ③MP(50ポイント/1回)。

消費ボーナスポイント:100

--------------------




素材集めがどれくらい大変か分からない点が不安だが、作る物が限定されず将来性がある。今すぐ必要な薬があるわけではないということで、これを採用した。




「アリガトウ。ヤマト。」


「こちらこそ、みんなの役に立つスキルを選んでくれてありがとう。これからよろしくね。」


「ヨロシク。」




ソフィアさんと話したのは今日が初めてだが、スキルを一緒に考えたことで何だか打ち解けた気がする。

多少イントネーションが変だけど本当に日本語が上手だな。これだけ話せるのにチュートリアルは聞き取れなかったのは、チュートリアルの内容が非常識過ぎたからだろう。


ちなみに俺とソフィアさんと飯田さんがスキルを考えている間に、真中さんと佐藤さんは寝てしまった。飯田さんの【創造スキル寝具】でマットレスを2枚だけ創造して貰い、二人はそこで寝ている。飯田さんとソフィアさんも狭いがそこに寝る予定だ。俺の分はMPが足らずまだ創造できていないので、廊下に直で寝るつもりだ。




「今日はもう寝ようか。」


「本当は私がもう一つだけでも寝具を創造できれば良かったのですが、すみません。」


「いやいや、MP不足は仕方ないよね。俺は隅の方の場所を貰うね。おやすみ。」


「大和さん。今日は本当にありがとうございました。おやすみなさい。」


「ヤマト、オヤスミナサイ。」



今日は疲れた。寝よう。


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