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森で火を囲みながらふざけ合っていたので何だかキャンプに来ているような気分になった。蛇は骨が多くて取り除くのが大変だったが、味は美味しかった。食事はやっぱり活力になるね。
「この森の何処かで他のクラスメイトも火を囲んだりしているのかな。」
佐藤さんが呟いた。詩的な言葉だ。
「大和さんのマップスキルで焚火が見えたりしませんか?」
飯田さんが問いかけてきた。建設的な言葉だ。
「大和さん?」
「ごめんごめん。ボーッとしてた。さっき教えた【鳥瞰図】のことだよね。試してみようか。【マップウィンドウ】。」
どれどれ。緑の木々がはっきりと映ってますね。何だかんだで日が暮れてきたというのに、まるで昼間のような明るさ。
「マップは現時点の上空からの映像というわけでは無さそうだね。昼間の明るさだから焚火が光って見えたりはしないみたい。」
「私たちのところを拡大したら焚火があることは分かるのでしょうか?」
「やってみる。・・・。おおー。分かるね。あれ、これは俺かな?上に向かって手を振ったら、マップが見れない。ジレンマ。」
「ぷぷっ。大和が間抜け。」
「間抜けで悪かったな。誰か代わりに手を振ってみてよ。うーん。動かないな。これまたリアルタイム映像ではないのかな。そこにある物が情報として描かれている感じ?」
「でも拡大すれば焚火があることは見えるのですね。頑張って探せば他の人が見つかるかもしれませんね。できればもう一人くらい仲間を増やしたいところですが。」
「いや、この倍率で広い森を隅々まで見ていくのは難しいかな。それよりあと二人なら俺の【ノミネーション】で登録できるから、そうすれば跳んでいけるよ。」
「合流する前に相手の情報を知りたいのですが。変なスキルを取っている人は避けたいです。」
「【ノミネーション】は取消せないから賭けになっちゃうけど、合流前に【ステータス】なら見られるね。スキル取得状況は分かるよ。」
「それならまだスキルを取っていない人がいいですね。」
「結構時間が経ったし、この状況でまだスキルを取っていない人っているのかな。生身で戦闘もこなせるサバイバルの達人か、転移後ずっと気を失ってたか、チュートリアルを見ていない、あるいは全く理解していないか、そんな奴くらいじゃない?」
「確かにそうですね。」
「あーーーっ!!」
「どうした?佐藤さん?」
「ソフィアちゃんは?チュートリアルは日本語だったから分かって無いかもしれないよね?」
ソフィアさんは転入してきたばかりの転校生だ。転入学試験で英語と数学で満点を出したという噂を聞いた。
「俺は話したことないけどソフィアさんて日本語分からないの?」
「ほとんどは大丈夫だけど、元が英語のカタカナ言葉が全然聞き取れないんだって。話すときに注意してあげないと通じないことがあるの。ほら、チュートリアルってカタカナ言葉が一杯出て来たでしょう。」
「あ~、ゲーム用語連発で俺は分かり易かったけど、外国人には分かりにくいかもね。ありえるかもしれない。試してみようか。」
「うん。」
「【ノミネーション】、ソフィア・クラーク。」
「【ノミネーションファイブ登録】。」
「【ロックオン】、4番。」
「【ステータス】。」
『ソフィア・クラーク
HP 350/350
MP 350/350
SP 350/350
状態異常:-
スキル:-』
「おお!スキル取ってないよ。ん?何だこのステータス。」
「何か変なの?」
「偶然なのかな。HP、MP、SPが全て350。今まで平均300くらいだと思ってたから、高いね。」
「高いならいいんじゃない?」
「まあそうだね。」
美咲さんの言う通りだ。ステータスが高い分には問題ない。
「じゃあ、転移して連れてくるね。」
「待って。もう暗いから灯りが必要だよ。焚火から松明を作るね。」
細くて長い落ち枝を集めて束ね、焚火の火で先を炙って火を点けてみた。
持ちにくいし、熱い。本物の松明もこんな感じなのだろうか。とりあえず灯りはできた。
「じゃあ転移するね。」
「待って。」
今度は真中さんに止められた。
「スキルのボーナスポイント計算をして欲しい。転移対象を拡大するスキル。このスキル自体には転移の能力はない。何らかの方法で転移する時、自分に触れている人を転移対象に拡大する。」
「真中さんを俺が負んぶして転移して、佐藤さんと飯田さんが真中さんに触れていれば一緒に転移できるってことか。なるほど。面白い。ポイント計算してみる。」
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スキル名:転移対象拡大
発動条件:自身が転移する時に自動発動。
発動対象:自身に触れている人、及びその装備品及び所持品。
スキル効果:何らかの方法でスキル保持者が転移する時に発動する。
対象もスキル保持者と一緒に転移する。
消費リソース:なし。
消費ボーナスポイント:30
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「うむ。それでよい。スキルを取得する。スキル名「転移対象拡大」。同名でボーナスポイント計算済のスキル。・・・。取れた。」
スキル取得できたらしい。もっと、光ったりとか音が鳴ったりとかのエフェクトがあるといいのに、味気ない。
「これでみんなで行ける。」
「そうだね。」
早速転移の準備に掛かる。
俺が真中さんをおんぶして、真中さんの腕に佐藤さんと飯田さんが掴まる。松明もどきは飯田さんが持った。
「行くよ。【トランスポート】、4番。」