と或るオーパーツへの挑戦
子ども達が楽しく遊ぶ緑豊かな広場の傍らで
小さ過ぎるメイドとデカ過ぎるメイドの
二人が話していた。
小さ過ぎるメイドが切り出す。
「オーパーツって知っているか? 列王!」
姿は幼いのだが
年齢にそぐわぬ自信に満ちていた。
「聞いた事は有るかな?」
デカ過ぎるメイド列王はぽややんであった。
現代日本では漸く結婚が許されるかという頃に見えるが
赤子を抱えて慈母の微笑みを浮かべていた。
小さ過ぎるメイドは気にも留めず続ける。
「時代に合わない遺物!
大昔なのに
宇宙船みたいな模型が有ったり電池が有ったりな!
で! 水晶髑髏なんてのも有る!」
「ふうん?」
列王がぽややんと返す。
「どうやって加工したのか?
表面は滑らかで
顎関節は分かれていてぴったりと組み合うという!
もう一つ!
打岩って知っているか?」
小さ過ぎるメイドはニヤリと笑む。
「あー、素手の打撃だけで
岩を球体にする修業?」
列王はぽややんだが其れはもうすらすらと諳んじる。
「其れ漫画のネタじゃなかった?」
「……
え ?」
小さ過ぎるメイドは呆けてしまった。
が、列王は構わずぽややんと続ける。
「『バキ』っていうの! ちい知っているよね?」
「……『バキ』なんぞより前から言われていなかったか?」
小さ過ぎるメイドちいは明らかに狼狽えていた。
「うーん? 俺も調べた訳じゃないけど」
列王は断言はせずやんわりだが。
「ふっ……はははははw!
若し創作だったとしても!
武神の名に懸けて実現してやろうっ!」
ちいの自信は見るからにガタガタだった。
「岩を打撃で何かにするの?
無理しなくても……!」
列王は苦笑いしつつ止めようとするが。
「武術とは!
無理難題を実現する技術である!」
ちいは意地だけで言っている様だった。
――数日後。
何かをしようとはしたが
形が変わったとは言い難い大きな石が
広場に有った。
「どう成ったのw?」
列王は厭味ではなく純粋に訊く。
「……
無理はするもんじゃないんだよ?」
ちいは澄まし顔で答える。
「あはははは♪
ちいも可愛いなあ♡」
列王は慈しむ笑顔だった。
「可愛い言うな!」
ちいは反発するが。
「今迄作ったものだって
オーパーツに成るんじゃないw? ココでは!」
今更の様だが
ココは異世界で
ちいは紙、付けペン、文字、絹、風呂、石鹸、
発酵パン、楽器、武器、武術、魔法
等々を広めていた。
「今更だけど。
本当に。 有難うね」
列王は皆の分とばかりに礼を言う。
「……煩えわ!」
ちいは拗ねて
素直には聞き入れなかったが。