一話 追放と襲われている馬車と悪役令嬢
なろう設定のラーメンアイスうな重や〜。
「お前は今日でクビだ!」
俺の名はンバーグ。
前世の記憶を持って生まれ変わった、所謂『転生者』だ。
前世の俺は暴走トラックに跳ねられて死んだ。
しかし丁度一千億人目の死者だったため、キリ番報酬として神様に会うことが許された。
ちなみに神様は蛇みたいな外見だった。
神様に転生させてもらった俺は、今世では冒険者として生活している。
冒険者歴三年。
歳は十六。
身体も出来上がり、所属パーティー『獄炎の焔』もB級認定を受け、いよいよ上級冒険者の仲間入りだ!というタイミングで冒頭の追放劇である。
「どうしてこんなことに…」
追放された俺は傷心して町の外に出て行った。
誰とも顔を合わせたくなかった。
夜なので町の外に人気は無かったが、開けた場所では落ち着かず、結局森の方まで歩いて行った。
しばらくして歩き疲れた俺は、スキル『万物創造』で椅子を作って腰掛けた。
「…やっぱり、手抜きしていたのがバレたのかな」
『万物創造』は転生時に貰ったチートスキルだ。
イメージした物が何でも生成出来るぶっ壊れ能力である。
だが、俺はこのスキルを秘匿していた。
『万物創造』を乱用すれば、人の目を引いてしまうことは避けられない。
元来地味な性格の俺は目立つことを嫌い、己の能力を『補助魔法』と詐称して味方のサポートに徹していた。
目立ちたくない奴が何故冒険者なんかやっているのかといえば、農家の三男坊に生まれて家業を継げなかったからである。
『戦わない冒険者なんてうちにはいらない』
それが俺の追放理由だった。
言いたいことは色々あった。
戦わないなりに、バフや回復や盾役等でパーティー貢献はしていたはずだ、とか。
しかし、能力を隠していた負い目から強く言い返すことも出来ず、俺は大人しくパーティーを去った。
「はあ、これからどうしよう。流浪の旅にでも出ようかな…」
この町に留まっていれば必ずまた『獄炎の焔』と鉢合わせてしまう。
考えるだけでも気まずい。
「このまま夜通し歩いて、別の町へ向かおうか…」
そうして宛てもなくフラフラと森に入って行くと、前方から地響きの音が聞こえてきた。
見れば、一台の馬車が大量の魔物を連れて走って来るところであった。
「…何だあれ?」
面食らっているうちに、馬車は魔物に追いつかれ横転した。
御者台からは小太りの男が投げ飛ばされた。
「やば!」
俺は即座にスキル『万物創造』を使った。
狼型の魔物が馬車に飛び掛かる寸前、生成された鉄の檻が馬車を守った。
続けて俺は空中に無数の岩石を出現させ、魔物達に向かって落とした。
「落下星!」
轟音の後に砂煙が晴れると、魔物達は岩石群に潰されて全滅していた。
唯一鉄檻に守られていた馬車だけが無事であった。
「大丈夫ですか!」
馬車には煌びやかな服装の貴族らしき男性が乗っていた。
多少の怪我はあったが、御者と馬も含めて全員が無事であった。
俺はスキルでエリクサーを生成して手渡した。
「冒険者か。助かった、礼を言う。ついでで悪いが、このまま町まで護衛を頼みたい。護衛を全員失ってしまったのでな。謝礼は弾む。見て分かる通り、私は貴族に連なる身分だ」
自称貴族様は前金として宝石の付いた指輪を渡してきた。
そして俺は馬車に随伴し、町へと帰ることになった。
◇◇◇◇◇
「上手いこと追い出せたな」
「あんな簡単に言いくるめられるとは予想外だった」
「言ったろ、アイツは押しに弱いからいけるって」
俺の名はツドン。
『獄炎の焔』のパーティーリーダーだ。
俺達は今、厄介者だったンバーグの奴をパーティーから追放した。
「しかし、ロネーゼに内緒でこんなことして大丈夫かな?」
ロネーゼとは『獄炎の焔』唯一の女性冒険者の名だ。
黒に近い茶髪を肩口で揃えた美人だ。
「ロネーゼにはアイツが自分から出て行ったって言えばいい」
「嘘つくのかよ」
「何だよ」
「いや、別に…」
数少ない女性冒険者であるロネーゼは冒険者達の間で人気があった。
だが、彼女は誰とも付き合っていなかった。
パーティーメンバーとも一線を引いているところがあったが、唯一ンバーグにだけは気を許していた。
多分同じ後衛担当だったからだろうが、俺達はそれが気に入らなかった。
前衛で戦っている俺らを差し置いて、何お前だけ女と仲良くやっているんだ、と。
「なあに、補助魔法使いなんていてもいなくても変わらねえさ。クエストやってればロネーゼも気付くだろう。補助も無しに戦う俺達が、如何に勇敢で格好良いかということをな!」
「おお!」
「なるほど!」
当然俺達もロネーゼを狙っていた。
だからンバーグには出ていってもらった。
アイツには悪いが、女性関係での揉め事なんて冒険者にはよくある話。
騙される方が馬鹿なんだ。
「いいか?ンバーグを追い出した後は、誰がロネーゼを落としても恨みっこ無しだ」
「ああ」
「それでいいぜ」
「よし、じゃあ公平に早い者勝ちといこうじゃねえか!」
「「おお!」」
まあ、ロネーゼのような美人とお前らが釣り合うわけないがな。
ロネーゼと釣り合うのはパーティーリーダーであるこの俺だけさ!
◇◇◇◇◇
「ここが私の邸だ」
馬車は町に入ると貴族街へ向かった。
そこまでは予想のうちだったが、馬車の着いた先には町で一番大きな邸があった。
「妙な気を起こされないよう黙っていたが、私はこの町の長だ。ここら一帯の土地も預かっている」
「領主様!?」
「お父様!」
幼い声に目をやれば、一人の少女が庭園を駆けてきた。
「お父様、お怪我はありませんか!?魔物に襲われたと聞いて…」
「大丈夫だよ、リタ。親切な冒険者に助けて貰ったからね」
リタと呼ばれた少女は金髪を長く伸ばした美少女であった。
年の頃は十二歳くらいに見える。
初対面だが、何故か俺は彼女に見覚えがあった。
「あなたが親切な冒険者さんね。お父様を助けてくれてありがとう!」
「あ、思い出した!」
彼女の名前はポリタン・ゴールデンボンバー。
前世で姉がはまっていた乙女ゲームの悪役令嬢だ。
神ゲーだからお前もやれと熱心に勧められ、結局一通りクリアしていたため、記憶の片隅に引っかかっていたらしい。
「思い出した?どこかで会っていたかしら?」
「あ、いえ、この辺りの領主様といえば、確か公爵家の…」
「察しの通り。私がゴールデンボンバー公爵だ。君は公爵家当主の命の恩人というわけだな」
咄嗟に誤魔化したが、内心は混乱の極みであった。
転生先が乙女ゲーの世界だったのも驚きだが、何より驚いたことは、助けた公爵様がゲーム内では死んでいる設定の人物だったということだ。
ポリタンが悪役令嬢になったのは、最愛の父を亡くし、傾いた公爵家で周囲の悪意に晒されて育ったため…。
というのがゲームでの設定であった。
(もしかして、公爵様の命日は今日だったのでは?)
「さあ、中へ入ろう。君とは腰を据えて話したいこともあるから」
もしや俺は、知らずに歴史を変えてしまっていたのか?
愕然としつつ、俺はゲームより若干幼いリタ嬢を眺めながら、邸の中に入って行った。
「さて謝礼についてだが…その前に。私に仕える気はないだろうか?」
「はあ。…え?」
かくして俺は公爵家の雇われ兵士となった。
◇◇◇◇◇
名前が雑過ぎるだと…!?
それはそう
 




