1.3年振りに
蒸し暑い中やっとの思いで買ってきたアイスクリームに口を入れると、ピロンと携帯が鳴る。
『お疲れさま。キョーヤ、久しぶり~。元気してる? 久々に地元帰って来たんだけど顔見るがてら会ってみない?』
それは、長らく連絡を取っていなかった幼馴染み――サナからの唐突なラインだった。
最後に連絡したあの日以来、実に3年ぶりだ。
一番最後の過去ログには、サナ側からこう記されてあった。
――今まで本当に楽しかった。お互いちゃんと幸せになろうね。
と。
当時のことは今でも昨日のように思い出せるし、過去ログからの唐突な『久しぶり~』にはテンションの乱高下が激しすぎてしばしば頭を抱えてしまうほどだ。
でも、既読にしてしまった以上無視することはできない。
だがどう返せばいいのかも分からなかった。
なぜならサナは既に結婚しているからだ。
俺と別れた数ヶ月後に、サナは俺の知らない奴と結婚している。
何を今さら会おうというのか。サナはサナの幸せを掴み取ったはずではないのか。
相手はもう人妻。かたや俺はあれから彼女を作ってなどいない。作ろうともしていない。
普通だったら、サナの旦那のいない所でかつての男女が二人で会うなど不倫だの浮気だのと言われても仕方がないことだ。
俺にもサナにもメリットはない。そう心では思っているはずなのに――。
『久しぶり。俺も今は地元にいるからいつでも行けるよ。都合いい日教えてくれれば合わせる』
気付けば俺は、そのことに一切振れずにメッセージを返していた。
既読はすぐについた。
『たぶん明日の午前中くらいなら空いてる』
……あまりに唐突で、あまりにざっくりしていた。
お前から会おうと言ってきたんだろうが。そこくらいはちゃんとしてろと思わなくもない。
流石は俺の幼馴染み。昔と変わらず計画性がザルである。
こういう所は今も変わっていないんだなぁ、と。少しだけ安堵しつつ、俺のメッセージ返信の指は速くなっていった。
『じゃ、明日駅の釣り堀像前に午前10時半で。遅れたらデコピンな』
すると、即座に「オッケー!」の可愛らしいスタンプが送られてきた。
「……明日は10時か」
わざわざ「半」と中途半端な指定をしたのは、サナは人を待たすことが嫌いな性分でいつものデートの時も、言われた30分前に指定の場所にいることが多かった。
指定場所にぴったりの時間で俺が来てもいつも先にそこにいて、「早いなー」って言っても、「今来たトコ。ほぼ同じとかマジ奇跡じゃんね」と軽く受け流すタイプだった。
次第にそれも形骸化していき、俺も指定の30分前に行くようになってしまってからはお互いラインで伝えた時刻の30分前に指定箇所に到着するなんて変な慣習が出来てしまった。
今日分の体力を無駄に全て使い切ってしまった感じがして、俺はベッドにうつむけに倒れ込んだ。
幼稚園・小学校・中学校・高校・大学と。全てで同じ所にいった正真正銘の幼馴染み。いや、腐れ縁と言っても過言ではないかもしれない。
もう使わないのに、スマホの写真欄にはサナとの思い出の写真もたくさん残っていた。
スクロールすればするほど、あの最後の日にまとめて消しておけば良かったと思い知らされてしまう。
「くそ……」
俺は投げ捨てるように携帯をベッドから落として仰向けに寝そべった。
顔全体を掛け布団で覆って、目の前を真っ暗にせずにはいられなかった。
「女々しいにも程がある……」
俺は未だ幼馴染みの幻影から抜け出せずに彷徨う、ただただ女々しいだけの男だった。
面白い、頑張れと思っていただけたらぜひとも★評価感想宜しくお願いします!
短期集中連載で10話くらいになると思います。




