第一異世界人発見
空を見上げれば鳥の群れがパレードのように形を成して飛んでいる。空高く飛ぶ鳥の視点はさぞ絶景なのだろう。しかし、人の身では鳥の眺める景色を見る事が出来ない。翼を持たぬ人では空を飛ぶ事など出来ない。そう、人の身では。
「へぇ〜、◯ローンから見る景色ってこんな感じなんだねぇ」
異世界の空を堂々と飛び回るド◯ーン。違和感が半端ない。そんな違和感半端ないドロ◯ンの景色から近くに街、または人の気配がないかを捜す紫苑。しばらく散策すると、少し遠くに何かが見えた。
「あれは…馬車?」
そう、馬車である。さらに見れば人らしき者が複数いる。ようやくだ、ようやく人を見つけた。この世界の情報を知るチャンスだ。あの人達とコンタクトを取ろうと近づいてみる。しかし、
「!!な、何だこの空を飛ぶ黒い物体は!?」
「新種の魔物…!?」
突如現れた黒い物体X(ドロー◯です)に最大限の警戒態勢を取る異世界人達。そう、紫苑はドロー◯のまま彼等に近づいたのである。これが只のドジであればまだ可愛げがあったであろう。だが、彼は好き放題やり過ぎて異世界に飛ばされた男。ドジでこんな事をするとは思えない。つまり…
「アッハッハッハッハwwwww」
そう、わざとである。これから情報を得る為にコンタクトを取る相手にこの仕打ち。正に外道。罰として異世界に飛ばされるのも無理はないというものだ。
「もうちょっと反応見ようかな…」
さっさと行け。
「……つまりお前は、この世界とは違う異世界から来たと?」
「そうそう、そんな感じ」
散々異世界人をからかった後、しっかりと話を聞く紫苑。ちゃっかりする所はちゃっかりしている。
「俄かには信じられんな…」
「しかし、それならばあの空を飛ぶ黒い物体についても納得がいきますね」
どうやらドロー◯のお陰で紫苑が異世界から来たという事を信じてもらえたらしい。ドロー◯まさかの大活躍である。
「そういえばまだ自己紹介をしていなかったな。俺は《ハリー》。よろしく頼む」
「私は《シャロ》です。よろしくお願いしますね!」
「俺は音無 紫苑。気軽に紫苑様と呼んでくれていいよ」
「どこが気軽なのか…」
「あはは…よろしくお願いします、紫苑さん」
剣を持った無情ヒゲの男性がハリー。金髪の魔法使い風の女性がシャルと言うらしい。初対面でも遠慮なく言いたい放題する紫苑にも嫌な顔をしない辺り、彼等の心の広さが知れる。
「というわけで馬車に乗せて」
「遠慮がないな…。異世界人は皆こうなのか?」
「いや、俺はマシな方」
「これでマシとは…」
堂々と嘘を言うんじゃない。というより地の文にツッコミをさせないでほしい。
「まぁまぁ、どうせこれから街に戻るのです。乗せて行っても問題はないでしょう?」
「まぁ、構わんが」
「わーいやったーありがとー」
「凄く嘘くさい言い方だな!?」
「お礼に世界の半分をくれてやろう」
「どこの魔王ですか!?」
異世界に来てようやく第一異世界からに会った紫苑は馬車で街まで乗せてもらう事に。果たして、彼のこの先の運命や如何に!
「今更そんな次回予告みたいな言い回し流行らないだろ」
「紫苑さん?何を言っているんですか?」