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ギルド

「お仕事ですか?」

「はい、恥ずかしながら無一文なので」

 マリアにお金を稼ぐために仕事がないか確認する。

 この世界でのお金に関しては食事をする際に軽く教えてもらった。


 1銅貨=大きなパン(小さなパンなら3つ)

 1銀貨=100銅貨

 1金貨=100銀貨


 その上もあるらしいが、庶民では金貨も見ることはないらしい。

 1銅貨がだいたい100円前後と考えておこう。

「それなら、ギルドに行かれるといいですよ」

 ギルドまであるようだ。

「冒険者ギルドですか?」

「え? えっと、冒険者ではないですね」

 詳しく聞くと、冒険者専門のギルドはモンスターが多い地方にはあるらしく。

 この町にあるのは仕事の手伝い等を雇うギルドらしい。

 一応モンスターの討伐の依頼がないわけではないが、それも畑を荒らしたりする弱いモンスターばかりだ。

 冒険者ではなく、手の空いた大人達が対応するらしい。

 みんな意外とたくましい。

 今朝マリアに楽に話してほしいと言われたがなかなか子供達と話すようにはいかない。

 慣れてくればもう少し砕けて話しができるようになるだろう。


「では、そのギルドに行って来ます。すみませんが子供達をお願いします」

「はい、2人は私が見ておきますね」

 何かを察知したのか子供達が近づいてくる。

「セイゾー、どっかいくの?」

「わたしも……いく」

 仕事に探しに行くと言ってもなかなか納得してくれなかった。

 お金が入ったら何か買ってあげると約束して、なんとか留守番をしてもらえることに成功する。

「ずいぶん好かれていますね」

 マリアが微笑みながら言う。

「昨日会ったばかりなんですけどね」

「きっと母親がいなくて不安な時にセイゾーさんが助けたからなんでしょう。今あの子達が頼れるのはあなただけですもの」

 子供達を見つめている目は優しく、どこか悲しげだった。

「ならマリアもすぐに好かれるでしょうね」

「あら、それは嬉しいわ」

 優しく世話をするマリアのことだ、すぐに俺より好かれるだろう。

 もしかしたら俺が必要なくなるかもしれないな。

 教会を背にしギルドに向かって歩き出す。


 ここがギルドだろうか。

 朝起きるのが早かったせいか、まだ太陽も昇りきらない時間、町の中央広場に隣接するように建てられた建物の前に来た。

 シスターに教えてもらった場所ならたぶんここで間違いない。

 考えても仕方ないので中に入ることにした。

「失礼します」

 中に入ると、20畳はあるだろうかという広い空間にカウンターが設置された部屋だった。

「何か御用でしょうか?」

 カウンターから兎の耳をした女性が、見た目通りな元気な声で返事をしてくれた。

「ここはギルドで間違いないですか?」

 カウンターに近づきながら話す。

「はい、間違いないです。」

「私、セイゾーと申します。お仕事を紹介して頂けないでしょうか」

 この世界の礼儀がわからない。失礼にならない程度の挨拶をする。

 キョトンとした顔をされる。

 かしこまった話し方はしなくていいと言われ、相手もラビーという名前であることを教えてくれた。


「それで、どんな仕事がいいでしょうか?」

 慣れた感じで対応してくれる。

「そちらのボードにも張り出されていますが、何か希望があれば、こちらで合ったものをご案内しますよ」

 ボードを見てみると、色々と紙が張られている。

「日払いで、手当てのいいものは?」

「少々お待ちください」

 ラビーはそう言うと手元の資料に目を通し始めた。

 しばらく待つと2枚の資料を取り出した。

「字は読めますか?」

 取り出された資料を見る。

 見たこともない文字が並んでいる。

 先ほど広場でギルドの場所に自信がなかったの看板が読めなかったせいだ。

「読めないです」

「それではこちらがご希望に合う仕事になります」

 そう言って、仕事の内容を丁寧に説明してくれる。

 話をまとめると、町に多数ある公衆トイレの汲み取りだ。

 どうやらこの町では家にトイレがないのも珍しくないらしく、その為公衆トイレが数多く設置されているらしい。

 仕事内容的にあまりやりたがる人はおらず、報酬も悪くないようだ。

 ただ人力のため体力を必要とする。

 背に腹は変えられない為、この仕事を請ける事にする。


「それではこちらがギルドからの受注書になります」

 この紙を持って依頼主の所に行き、依頼を達成すれば証明のサインをもらえるらしい。 

 報酬に関しては、依頼主が支払う場合と、ギルドから支払う場合がある。

 依頼主が払う場合はギルドに紹介料を払い、ギルドが支払う場合はギルドが預かり金を受け取っている仕組みとなる。

 この仕事は依頼主から支払われる依頼だ。

どちらにせよ、トラブル防止のため受注書は仕事が終わればギルドに提出する必要がある。

「その仕事は今からでも大丈夫みたいですが、どうなさいますか?」

 てっきり明日からと思っていたが、今日からでも問題ないようだ。

「今日から行ってみようと思います」

「わかりました、場所はここになります」

 町の地図を取り出し説明してくれる。

 文字が読めないからと、目的の建物の特徴なども教えてくれた。


 ギルドを出て目的の場所に向かった。

「ここが、依頼場所かな」

 町の北にある他の建物から離れた場所に着いた。

 敷地も大きいが、建物はそれほどでもない。

 馬に引かせる為の荷車もいくつか見える。

 まず間違いではないだろうと建物に入る。

「失礼します。ギルドから依頼を受けて参りました」

「おお、ちょっと待ってくれ」

 部屋の中もあまり広くはなく、何に使うかわからないような物が溢れ返っていた。

 しばらくすると、奥から体格のいい獣人の男が現れた。

「なんだ、えらくひょろい奴だな」

 俺の体をジロジロと見つめると遠慮ない言葉を発した。

 力仕事などは人間より力がある獣人がやることが多いと言われる。

「精一杯やります。よろしくお願いします」

 せっかくの仕事なのだ、多少きつくてもやらせてもらいたい。

「ああ、こっちも忙しくてな。働いてた奴が他の仕事に取られちまった。今は猫の手でも借りたいよ」

 話を聞くと、町の周りの農場が範囲を広げた為、ここで定期的に働いていた人達がそちらに取られたらしい。

 この人の名前はレオスというらしく、ここの代表だ。

「うちは汲み取りなんて仕事だからな、やりたがるやつは多くない。あんまりいい目もされないしな」

 これは元の世界でも同じことがいえた。


 早速仕事内容の説明を受ける。

 町に設置されている公衆トイレから汲み取りを行い、ここに持って帰るのが仕事のようだ。

 他にも家畜の糞も集めてくる。

 ほとんどの場合は農家が持ってきてくれるが、依頼があれば取りにいく。

 この広い敷地で堆肥にするらしい。

 家畜の糞から作った堆肥は畑に利用し、人糞から作った堆肥は林にまくようだ。

 堆肥による地下水の汚染が気になるが、俺が今それを気にしてもどうしようもない。

 堆肥場に案内されると、驚いた事に臭い匂いがあまりしない。

 元の世界の堆肥場に行ったことはあるがどうしても特有の匂いがあった。 

 気になってレオスに話を聞いてみると、教会にもあったあの葉を大量に混ぜると匂いもあまりしなくなり堆肥になるそうだ。

 あの葉っぱすごいな。

 消臭や脱臭の効果と思われて使われているが、微生物による有機物の分解を助ける効果もあるんじゃないだろうか。


 今日は近くのトイレを回るだけでいいとの事なので早速仕事に出ることにした。

 汲み取る為の太く長い柄杓、汲み取ったものを入れる桶を持つ。

 汲み取った後は柄杓に桶をぶら下げて担いで帰る仕組みだ。

 作業用の襤褸(ぼろ)の服も貸してもらえた。


 匂いが少ないせいか特に抵抗なく汲み取りを始める。

 意外に簡単だなと思っていたが甘かった。

 汲み取りした後の桶を持つが非常に重たい。

 匂いが少ないのは良いが、桶一杯が20Kgか30Kgはあると思うので、それを2つを担ぐと肩にめり込むのではないかと思わされる。

 その上、桶の中身がこぼれないように運ぶので神経を使う。

 気をつけながら何とか運ぶ。

 日暮れ前までに5往復しかできなかった。

 それで銅貨20枚だが、他の仕事だと1日働いて銅貨20枚などもあるらしい。

 給料は本当にいいようだ。

 持ち帰った量に応じての出来高というのも気に入った。


「よければ明日も来てくれよな。あ、あと外の水場で体を洗って着替えて帰るといい」

「わかりました、明日もお願いします」

 レオスに挨拶をし職場を出る。

 他の職員だろうか、俺と同じ物を両肩に載せていた。

 残念だが俺にはとても真似できそうにない。

 何か方法を考える必要がありそうだ。

 水浴びを済ませ、ギルドに行き受注書を提出する。


 帰り道、お菓子の売られている露天を物色する。

 元の世界にもあったようなお菓子も多くある。

 飴に似たお菓子を選ぶ。

 小さいながら3つで銅貨1枚もした。

 教会に帰りながらその1つ口に入れる。

 ほのかに甘さがある程度だろうか、あまり甘くなくて嫌いではない。

 しかし、こんな甘さで子供達が喜んでくれるか心配だ。


「セイゾー、おかえりー」

「セイゾー……おかえり」

 2人が駆け寄って来る。

 嬉しそうに駆け寄ってくる姿を見ると、仕事の疲れなんて吹っ飛んでしまいそうだ。

「ただいま」

 さっそく買ってきた飴を渡す。

「食べていいのー」

「いいの……?」

 もちろんと頷く。

 子供達が嬉しそうに飴を口に入れる。

「あまーい」

「おいしい……」

 心配は必要なかったようだ。

 飴を舐めながら頬を緩ましている姿に安堵する。

「セイゾーさん、おかえりなさい」

 そう言って微笑むとマリアが手を差し出す。

「た、ただいま」

 しまった、マリアのおみやげは買っていなかった。

 自分が食べなければマリアの分はあった。

 俺が慌てていると、

「冗談ですよ。でも、私のもあったら嬉しかったです」

 笑っているのだが、目が笑っていない。

 次からは気をつけようと心に誓った。

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