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朝食

 視線のようなものを感じ目が覚める。

 起きてみるが子供達はまだ寝ている。

 部屋に設けられた明り取りの窓も夜明け時の薄明るさを映し出すだけだ。


「おかあさん、いなくなっちゃやだ」

 レンの寝言が聞こえる。

 この歳で母親がいないなんて寂しくないわけがない。

 そっと頭を撫でてやると安らかな寝顔に戻った。


 トイレに行こうと立ち上がる。

 その気配にハナが起きてしまった。

「セイゾー……どこいくの?」

 おかっぱ頭が寝癖だらけだ。

「おはよう、トイレに行くだけだよ」

「おはよう……わたしもいく」

 ハナのそのそと立ち上がり後に着いてくる。

 その寝癖だらけの頭を直そうと髪を撫でてやるがうまく直らない。

 ハナは頭を撫でられて気持ちよさそうだ。


 トイレは予想していたより清潔だった。

 和式のような便器で汲み取り式のようだ。

 あまり匂いがしないのが不思議だ。

 ただお尻を拭くのはトイレの横においてある葉なのだろう。 

 外に出るとハナが換わりにトイレに入る。

「まってて……」

 まだ薄暗いし怖いのだろうか。

 大人しく待つことにする。

 待ってる間周りを見てみると、トイレに置いてあった葉を付けた木を見つけた。

 なくなっても調達するのは簡単そうだ。


 ハナが出てきたので2人で部屋に戻ろうとする。

 部屋の中からレンの泣き声が聞こえてきた。

 ハナが急いで部屋に戻っていく。俺も後に続く。

「なんで、かってにいなくなったの!」

 レンがハナに抱きつき怒っている。

「ごめんね……」

 こうやって見ると、臆病に見えるハナがお姉ちゃんなんだなと思わされる。

「セイゾー、あやまって!」

 矛先がこちらに向いた。どうやら俺も謝らないといけないようだ。

「えっと、すまん」

「ちゃんと、あやまって」

 許してもらえない。

「ごめんなさい」

「いいよ」

 許してももらえたが、俺の扱いがひどくないだろうか?


「おなかすいた」

「わたしも……」

 そういえば、昨日は何も食べていない。

 俺も腹がすいているし、喉も渇いている。

「マリアにご飯の事を聞いてみようか」

「きくー」


 3人で外に出る。

 先ほどよりも明るくなってきている。

 物音がするのを感じ、そちらを見るとマリアがトイレから出てきたところだった。

「おねえちゃん、トイレー」

 レンの言葉に少し恥ずかしそうにしている。

「おはようございます。早いですね」

 マリアが挨拶をすると水場で手を洗っている。

 それを見て先ほど手を洗っていない事を思い出した。

「おはよー」

「おはよう……」

 2人が挨拶を返す。 

「おはようございます、昨日すぐに寝ましたから」

 俺も挨拶を返しながら、2人を連れてマリアの所へ行く。

「水を使わせてもらっていいですか?」

「どうぞ」

 マリアに柄杓のような物を渡される。

 これで水瓶から水をすくって使い、なくなったら井戸から汲み上げるようだ。

「もっと楽に話してください」

 手を洗おうとするとマリアにお願いされる。

 マリアも丁寧な言葉で話していると伝えたのだが、どうやら普段からそういう喋り方らしい。

 手と顔を洗い、子供達に柄杓を渡す。

 ポケットからハンカチを取り出そうとしたら、マリアが手拭を渡してくれた。

「ありがとう」

 遠慮なく使わせてもらう。

 手を拭きながらマリアと少し話をしていると、後ろから楽しそうな声がする。

 子供達を見ると手や顔を洗うだけのはずが、びしょ濡れになっている。

 どうやら柄杓で水をかけ合って遊んだらしい。

「あらあら、すぐ着替えを持って来ますね。」

 マリアが慌てて着替え取りに行ったが、子供達は楽しそうに笑い合っていた。


 着替えを済ませた子供達は、シャツにカボチャパンツみたいな服装になった。

 先ほどまで着ていた襤褸(ぼろ)は子供たちが大切そうにしていたので干してある。

「服まで貸してくれてありがとう」

「いいんですよ。古いものですし、差し上げます」

 新しい服に子供達もご満悦だ。

 子供達を眺めているとマリアが俺に何かを手渡してくる。

 俺の服まで準備してくれていた。


「それでは、食事にしましょうか」

 マリアの家に案内され、スープとパンにサラダを用意してくれた。

 量が多いと思ったが、昨夜は食事をとっていない為、との配慮だった。

「おいしー」

「おいしい……」

 よほどお腹がすいていたのか、頂きますもせずに子供達が食べだした。

 マリアを見ると静かにお祈りしている。

「頂きます」

 そう言って俺も食べ始める。

「いただきます?」

 レンが気になったのか俺の言葉を真似た。

「食事を取る前の故郷の挨拶だよ」

「いただきます」

「いただきます……」

 2人が真似をする。

 次からは食べる前に言ってほしい。

「珍しい祈りですね」

 祈りが終わったのか、今度はマリアが聞いてきた。

「祈りっていうか、感謝の言葉かな。ちなみに食べ終わったらご馳走様って言うんだよ」

「感謝の言葉ですか、それならやはり祈りですね。私も女神に感謝してから頂きますので」

 マリアからしてみれば祈りと変わらないらしい。


 食事はおいしかった。

 お腹が空いたので余計においしく感じられたのかもしれない。

 パンは少し固く、マリアの真似をしてスープに浸して食べた。

 もちろん子供達もすぐに真似をしていた。

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