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教会へ

 日が傾き始めていた。

 なんとか暗くなる前には町に到着できた。

 町は大人ほどの高さの木の柵で囲まれていた。

 柵の周りには畑や放牧地が広がっており、とても長閑な印象を受ける。

 町も大きいのだろうが、この広大な農場のせいか小さく見える。


「セイゾーみて、どうぶつさんだー」

 レンが嬉しそうに動物を見ている。

 動物はさん付けなのに俺は呼び捨てのようだ。

 牛や羊、馬の姿がある。

 他にも子供くらいの大きさの毛玉みたいな動物もいる。

 見たこともない動物だ。

 そもそも動物なのだろうか?

「あれ……なんていうの」

 ハナが謎の動物を指で指して聞いてくる。

「う~ん、おじさんにも分からないな」

 俺の答えにハナがしょんぼりしている。

 だが、知らないものはしょうがない。

 そんな悲しそうな顔をしないでほしい。


 町の入り口までたどり着く。

 入り口には開閉式と思われる扉が設置されており、門番と思われる人も立っている。

 扉の脇には櫓も設けており、警戒する対象がいることが予想される。

「ちょっと止まってくれるかい」

 門番の人に止められる。

 皮でできた胸当てや兜をしており、手には簡素な槍が握られている。

 歳は自分とそんなに変わらないのではないだろうか。

 こちらも話をする気だったので何も問題はない。

 問題があるとすれば、村に入るのに金がいる場合である。


「あんた達は、西から来たようだが、何かあったのか? 先ほども2人組みが慌てて町に入っていったが」

 どうやら俺達は東に進んでいたらしい。

 町は道の北側にある。

 逃げた男は事情を説明しなかったのだろうか、2人組ということは他にも逃げ延びた人がいるのかもしれない。

 仕方がないので 門番に先ほど村であった出来事を話す。

「村? 化物? 何を言っているんだ?」

 門番はいぶかしげな顔している。

「西に行った先の林の中にあったんです」

 俺が村の位置を説明する。

「あぁ! 使われなくなった集落のことか」

「使われていない?」

 今度は逆に俺がいぶかしむ。

「人がいましたよ。この子供達もそこから連れてきました」

「さらってきたのか!?」

 門番が慌てている。

 確かにそう見えるかもしれないが、この門番は話を聞いていたのか怪しくなる。

「ですから、その無人のはずの集落に人がいて、化物に襲われて燃えており、親がいない子供達を保護したんです」

「化物っていうのは? 姿は見たのか?」

「いえ、はっきりと姿は見えませんでしたが、確かにいました」

 門番は目を閉じうなりだす。

「事情はわかった。おおかモンスターに襲われて、火が建物に燃え移ったんだろう」

 モンスターがいるようだ。

 モンスターがいるのに何故逃げた男は化物と言ったんだろうか。

 見たことのないモンスターだったのかもしれない。


「それで、あんたはこれからどうするんだい?」

「とりあえずこの子供達が休める場所はないでしょうか?」

「それなら教会に行くといい」

 子供達が休める場所がわかり安心した。

 俺も金がないのを思い出した。

「教会では俺も休めますか?」

「なんだ、あんた文無しか?」

 文無しどころかこの世界では住所不定、職業無職である。

「教会なら大丈夫だろ。美人で優しいシスターがいるから相談してみな」

 そう言うと門番は門を開けてくれた。

 どうやら町に入るのにお金はいらないらしい。

「教会は、町の中央から右に行けばいい」

「ありがとうございます、助かります」

「子供達も疲れてるみたいだしな、早く休ませてやりな」

 後ろを見ると2人とも俺の服につかまって船をこいでいる。

 疲れているところに退屈な話で眠たくなったのだろう。

「おはなし……おわった?」

 ハナが気づいたようだ。レンは目を閉じ起きる気配がない。

 レンを抱き上げ教会へ向かう。

「どこ……いくの?」

「教会だよ。今日はそこで泊めてもらおう」

「きょうかい?」

 教会がわからないのだろうか、ハナに説明する。

「よく……わからない」

 残念ながらうまく伝わらなかったようだ。


 町の中は木造の建物が整然と並んでいた。

 石造りもあるが木造のほうが多い。

 中央らしき大きな井戸がある広場まで来ると、そこを中心に十字に大きな道ができている。

 行きかう人々は、人間や獣人が多く、他の種族と思われる人もちらほらといる。

 そのためか俺の姿も別に珍しくないようであまり目立ったりはしていない。

 やはりここは自分の知らない世界なのだと実感する。

「あれが教会かな」

 門番に言われた道を進むと、三叉路になっている道の正面に教会を見つける。

 町の端に建っているらしく奥には町を囲む柵が見える。

 小さな石造りの聖堂と、その横には木造の家が隣接している造りだ。

 敷地の周りは腰ほどの高さの石垣で囲まれている。

 建物は少し古い感じがするが、しっかりと手入れされているのか趣がある。

「なんか……ぼろい」

 ハナがひどい事を言う。

 シスターの目の前じゃなくてよかった。

「ハナ、シスターの前で言ったらだめだよ?」

 ハナに注意しておく。


「あらあら、別にいいんですよ~」

 背後からおっとりとしたような声が聞こえてきた。

 まさかと思い振り返る。

「教会に御用ですか?」

 そのまさかの人物がそこに立っており小首を傾げていた。

 茶色いセミロングのウェーブがかかった髪。

 優しそうに微笑む眼差しは茶色い瞳をしていた。

 まだ若そうに見えるが、未熟さは感じられない。

 背は俺より頭ひとつくらい低い。

 俺の身長が175センチ程度なので155前後だろうか。

 シスターのような服装でなければわからなかったかもしれない。

ハナが背中の後ろに隠れる。

 先ほどの発言が聞かれたせいかもしれない。

「宿を借りるため教会を尋ねました」

 そう言った後、俺が違う世界から来たという話を除いてだが、これまでのいきさつを話した。

「まあ、それは大変でしたね。わかりました、教会へお越しください」

 俺の話を気の毒そうに聞いていたシスターが笑顔で言ってくれた。

 シスターに案内され教会へ向かう。

 ハナは俺に隠れるように着いてきた。

 なんだかその姿が可愛かった。

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